シスマの危機 小説フランス革命6

内容(「BOOK」データベースより)
聖職者民事基本法をめぐり、賛成派と反対派が激しく対立。フランスはシスマ(教会大分裂)の危機に直面し、推進者のタレイランは窮地に追い込まれていた。そんな中、ジャコバン・クラブ代表、国民議会議長と次々に就任し、政界を登りつめつつあったミラボーが、志半ばにして病に倒れる。一度は決別したロベスピエールに、ミラボーが遺した最期の言葉とは―。巨星、墜つ。喪失の第6巻。

 あいかわらず、間を空けながらになってしまうが読んでいる。今年中で一部読み終えるか微妙なペース(無理でしたw)だ、まあ、二部は文庫化するまで(たぶん)読まないだろうから、ああまり間を置くのもあれだし、のろのろとしたペースでもいいといえばいいのだけど。
 冒頭のロベスピエールの演説、やけに多くに賛同されているなと思ったら、『なるほど、そこは議会ならざる、ジャコバン・クラブの集会場だった。』(P16)とあって議会じゃないのかい、と思わずガクッときたよw。
 ルイ十六世、高位聖職者たちが大勢でやってきて署名を求めて吊るし上げを食っているのに、それを何とか回避しようと論を語って、粘り腰を見せているのには感心するよ。
 タレイラン、今まで下手に出ていて、相手が保護者のような態度を見せてきた鬱憤からとはいえ、『既に用なしなんですよ、あなた方は』(P65)というのは、あまりにも子どもっぽい、そんな態度に出たせいでせっかくフランス王の署名を貰ったのに紛糾するはめになるし。まあ、その場のシーンだけを切り取ると爽快だけど、一時の激憤で、その成立のために下手にでてたことを台無しにあいて、自分の苦境をもたらす(シスマが結局起こってしまった)のはね、まあ、すごくわかりやすく自業自得ではあるけどw。
 神父に市民が、『おおさ、それが俺たちが主人だってえ意味だ。俺達のいうことを素直に聞けってえ理由だ』(P85)こういう「お客様は神様です」的な理屈を、「客側から」横暴に言って相手に無理を強要するのを見るのは本当に嫌い。特にこうした、吊るし上げでなら尚更。
 聖別、司教が5人もいるのに誰もやり方知らないとかw位だけ貰って実務をろくにやっていなかった連中の集まりなのかね、新任で聖別される側の2人はともかく。そして、実際やるにしても、やっつけ仕事でやってるしねw。そのやっつけを挑発と解されてはつまりませんと忠告されているのに、タレイランは「好んで挑発しているのです」と返すし、といっちゃうし、流石の外面を取り繕う能力がなさだ(苦笑)。
 亡命禁止法、に反対するミラボーの論(今だけは特別だの、治安だのというのは独裁者の言だと指摘)で、ロベスピエールは痛いところを突かれる(というか、気づかされる)が、それでもなお後には恐怖政治をやるんだから、その頃にはそれを自覚しても貫徹する意思を得たのか、それとも自分を誤魔化す術を身につけたのかどっちだろ。まあ、前者っぽい気がするが(世界史知っていたら普通どちらか解るのかもしれないが、世界史ちゃんと勉強したことないからなあ)。
 ミラボーが死の床でロベスピエールと対談する場面での、『独裁という冷酷な真似ができるのは、反対に自分に欲がないからだ。世のため、人のためだからこそ、躊躇なく人を殺せる。ひたすら正しくいるぶんには、なんら気を咎めないわけだからね』(P218)という説明は腑に落ちる。そして、もう終わったこととはいえ、クー・デタの計画があったことまで種明かしをするとは驚いた。そんなことまで話すなんて、本当にもう腹のうちを明かしても関係のなく、また相手に対しいらだたず、客観的にしかし愛情を持った見方ができるなんて、本当に死を受け入れて穏やかな境地なんだなミラボー、と感じ入った。