1月に読んだ本のまとめ

2015年1月の読書メーター
読んだ本の数:19冊
読んだページ数:6633ページ
ナイス数:522ナイス

RPF レッドドラゴン 2 第二夜 竜の爪痕 (星海社文庫)RPF レッドドラゴン 2 第二夜 竜の爪痕 (星海社文庫)感想
TRPGリプレイは、シリアスなシーンでもPLたちの反応が示されることで、物語を楽しみつつもあまり肩肘張らずに読めていいな。初のチーム揃っての戦闘となった対岩巨人戦は、PCたちは一騎当千の能力を持つキャラクターであり、相手も巨大なモンスター的なもので非常に強いこともあって戦闘がド派手で楽しかったし、とどめの一撃を描いた見開きのイラストも良かった。そして最後の阿ギトの演説シーンは非常に格好良くていいね。
読了日:1月31日 著者:三田誠,虚淵玄,奈須きのこ,紅玉いづき,しまどりる,成田良悟
古代アレクサンドリア図書館―よみがえる知の宝庫 (中公新書)古代アレクサンドリア図書館―よみがえる知の宝庫 (中公新書)感想
大図書館とその姉妹機関のムーゼイオン(研究機関)を中心にして、学問の都だった古代アレクサンドリアについて書かれる。大図書館は紀元前48年のアレクサンドリア戦役で起こった火災によって焼尽した。ムーゼイオンはその大火での焼失は免れ、ローマ併合後(前30年)も皇帝の庇護を受けていたが、391年の街中の全ての異教神殿を破壊せよというテオドシウス帝の勅令後ほどなく終焉を迎えたようだ。また、その勅令で大図書館消滅後にアレクサンドリアの中心的図書館だったセラペウムの神域にある図書館がセラペウムもろとも破壊しつくされた。
読了日:1月31日 著者:モスタファエル・アバディ
パリでメシを食う。 (幻冬舎文庫)パリでメシを食う。 (幻冬舎文庫)感想
著者が知り合ったパリで生活する面白い日本人について書いたエッセイ。料理人やアーティスト、カメラマン、スタイリストなどバラエティ豊かな職業の人を扱っている。そうした人たちの人生、どうしてパリに来て、この仕事をしているのかというライフヒストリーを描く。美術の基礎的な勉強をしていたわけでもないのに、パリでいつのまにやら絵だけで生活できるアーティストとなったエツツこと悦子さんの話、なんだか村上春樹の小説にでも出てきそうなキャラクターとストーリーで面白い。
読了日:1月31日 著者:川内有緒
その女アレックス (文春文庫)その女アレックス (文春文庫)感想
多くのランキングで、年間ベストミステリーとして選ばれているらしいことに深く納得できる見事な作品。三部構成だけど、各部それぞれで予想外の展開・驚きどころがあるので最初から最後までずっと面白くていいね。アレックスについて徐々に明らかになっていくことで、彼女の人物像が何度も大きく塗り替えられ、全てが明らかになった後に改めてアレックスのパートを読むとそこで書かれていたことの意味合いも変わってくる。そうして何度か大きく見方を変えられるのは面白く、興奮させられる。
読了日:1月31日 著者:ピエールルメートル
中世ヨーロッパの城の生活 (講談社学術文庫)中世ヨーロッパの城の生活 (講談社学術文庫)感想
城での生活、城内部の話だけではなく、城に住んでいた領主(城主)の生活という感じで、中世の貴族女性や騎士や狩猟についてだったり、荘園などの領地での農民との関わりなどの城以外の話についても結構な分量が書かれている。13世紀ごろの武芸試合は、敵・味方にわかれた実戦形式で行われた。そこで相手を捕虜に取ると試合終了後に、これも実践同様に身代金交渉(その金額は概ね馬と武具の値段となった)をして、捕虜となった相手からそのお金を得た。一対一の騎馬試合が一般的になるのは14世紀後半。
読了日:1月30日 著者:ジョゼフ・ギース,フランシス・ギース
雷の季節の終わりに (角川ホラー文庫)雷の季節の終わりに (角川ホラー文庫)感想
まだこの著者の本は2作読んだだけだが、短編集の「夜市」も長編の本作も面白かったし、相変わらず物語の雰囲気も好きだと思えたので、個人的にはもうその著者の作品というだけで読もうと思える作家になった。異界にある隠れ里「穏(おん)」で育った少年賢也が主人公。「夜市」収録の「風の古道」もそうだったけど、少年をちゃんと描写できているのはいいなあ。夜市とか穏などの異界が、綺麗な理想郷でなくてその場所特有の怖さもあるけど、その場所をかいま見たいとは思わせる物語の舞台として魅力的なものとなっているから好き。
読了日:1月29日 著者:恒川光太郎
青いバラ (岩波現代文庫)青いバラ (岩波現代文庫)感想
西洋そして日本でのバラの人工交配、育種の歴史だったり、青いバラを作ろうと奮闘した育種家たちの物語、青いバラへの歴史的なイメージ、そして青いバラを可能にした遺伝子操作、バイオテクノロジーについてなど、そうした青いバラにまつわるさまざまな事柄について詳しく調べて書かれている。そうして書かれているどの話も興味深い。昭和のバラの育種についての話は、戦前からバラの育種をしていたミスター・ローズ鈴木省三の物語を中心に書かれる。そして著者と鈴木省三の全5回の対面、交流の様子も描かれているが、それもなんか好きだな。
読了日:1月28日 著者:最相葉月
どうして僕はこんなところに (角川文庫)どうして僕はこんなところに (角川文庫)感想
執筆年代的にも内容的にもさまざまなノンフィクション、エッセイ的な短い文章を多く収録している。内容的には芸術に関係した話や著者が有名な人物へインタビューしてその人物の肖像を書いたようなもの、歴史的なことに触れたもの、旅先でのエピソードなどが多めかな。著者は人間を描くことが巧みで、描かれている人それぞれの個性が見える鮮やかな人物描写はとてもいいね。飾り気ない硬質な文章で書かれる人物描写や一つ一つのシーンには静謐な美しさがあって素敵。
読了日:1月26日 著者:ブルース・チャトウィン
RPF レッドドラゴン 1 第一夜 還り人の島 (星海社文庫)RPF レッドドラゴン 1 第一夜 還り人の島 (星海社文庫)感想
文庫で再読。作家たちによるTRPGのセッションのリプレイ。TRPGリプレイとはいっても既存のシステムによるリプレイではなく、この1度きりの企画のために作られたオリジナルのシステムや世界観で物語がつむがれる。婁震戒(PL虚淵玄)はキャラにはまったロールをしているが、はまりすぎていたり、怪しかったりでPLや読者視点ではその行動や言動の一々が笑えるのが素敵。そしてラストに単独行動で大活躍して、本来一人で進めるイベントじゃないだろうというのを一人で危なげなく進めているのも面白かった。
読了日:1月25日 著者:三田誠,虚淵玄,奈須きのこ,紅玉いづき,しまどりる,成田良悟
大航海時代 (新紀元文庫)大航海時代 (新紀元文庫)感想
大航海時代の探検・探索史を書いた、さくさくと読める歴史読み物。このシリーズは多くのトピックで形成され、さまざまなエピソードだったり、歴史的な事柄が書かれている。ヨーロッパがいかに地理的知識の範囲、交易の範囲、そして領土を広げていったのかみたいなことをメインに書かれているので、南北アメリカ大陸の探索や新たな海域への進出など未知の場所への冒険についての話が多い。一方で、海賊だったり貿易についての話はあまりない。
読了日:1月24日 著者:森村宗冬
オアシス国家とキャラヴァン交易 (世界史リブレット (62))オアシス国家とキャラヴァン交易 (世界史リブレット (62))感想
ソグド人商人について書かれている。現在の中国ウイグル自治区からウズベキスタンにかけて存在したオアシス諸国、その中の西側に位置するソグディアナのオアシス諸国は、広域にわたりキャラヴァン交易をした国際商人を多く輩出した。ソグド人商人はソグディアナがイスラームに支配される8世紀まで、唐代までのシルクロード貿易をほぼ独占していた。遠距離交易のキャラヴァンは一種の投資事業であったので、さまざまな人から資本を集め商品を購入し、貿易して帰還した後に元金と利益を配分することが一般的。
読了日:1月19日 著者:荒川正晴
人物日本剣豪伝〈1〉上泉伊勢守・塚原卜伝ほか (人物文庫)人物日本剣豪伝〈1〉上泉伊勢守・塚原卜伝ほか (人物文庫)感想
今まで剣豪についてほとんど知らなかったが、武の求道者である剣豪たちの在り方や物語を知らないのはもったいないと思い、とりあえず手に取りやすい文庫のこのシリーズを読み始める。この巻で扱われている人物は「上泉伊勢守秀綱」「柳生石舟斎宗厳」「富田勢源」「塚原卜伝」「斎藤伝鬼房」「伊藤一刀斎」「吉岡憲法」。小伝記みたいな感じで、それぞれの剣豪の生涯がまとめられている。「吉岡憲法」は資料がろくにないからか、一人の剣豪についての話というより、吉岡流の虚像と実像についての話が多くてちょっと色合い違うけど。
読了日:1月18日 著者:澤田ふじ子,津本陽,沢田ふじ子,安西篤子,早乙女貢,桑田忠親,南条範夫
ドン・キホーテ〈前篇3〉 (岩波文庫)ドン・キホーテ〈前篇3〉 (岩波文庫)感想
前篇の最終巻。騎士道物語と現実のギャップやドン・キホーテが引き起こすドタバタが話の軸ではあるけど、前篇の後ろ半分は、恋する者の身の上話など、恋愛に関する挿話が多かった印象。そしてイスラム世界で捕虜になっていた大尉の身の上話。注や解説を見ると、著者自身も捕虜として捕えられていた時代があったようなので、そうした土地の描写とかも単なる想像じゃなくて著者自身の体験から書かれていると思うと非常に興味深いものがある。
読了日:1月16日 著者:セルバンテス
デュラララ!!SH×3 (電撃文庫)デュラララ!!SH×3 (電撃文庫)感想
アブピという作品のキャラを装いをした連続通り魔が出現。好きな作品に悪評を付ける通り魔に怒り心頭の遊馬崎と狩沢は、久音がはじめた何でも屋的な「スネイクハンズ」に犯人と是非とも「お話」がしたいものから、捕らえて連れてきて欲しいとの依頼をする。そしてセルティは遊馬崎・静雄、青葉のそれぞれに犯人確保と引き渡しを頼まれ、悩む。しかし通り魔が複数いると知った新羅が『一人は静雄君に渡して、残りは遊馬崎君に引き渡そう。青葉君に渡すのは余り物でいいよ』と『土産物を配るみたいに』(P259)言ったのは笑った。
読了日:1月15日 著者:成田良悟
魔法科高校の劣等生 (15) 古都内乱編 (下) (電撃文庫)魔法科高校の劣等生 (15) 古都内乱編 (下) (電撃文庫)感想
真夜と葉山の会話を見るに、達也を排斥するのは四葉のためにならないと実利的な理由をあげているけど、実際は肉親の情から他の奴らが彼を排斥できないようにしようとしているっぽいので、おや真夜は案外達也に好意的なのだなとちょっと意外に思う。次巻予告『真夜の口から/「深雪はあなたの妹ではない」という衝撃的な「嘘」が達也に告げられる』「嘘」が嘘でなかったら深雪エンドも見えてくるな。まあ、その真夜の言葉の真偽がどちらにせよ、次回は以前から気になっていたそこらへんの詳しい話が語られそうなので楽しみ。
読了日:1月14日 著者:佐島勤
八月の砲声 上 (ちくま学芸文庫)八月の砲声 上 (ちくま学芸文庫)感想
第一次大戦の開戦前や戦争序盤の動きについて詳細に描いている歴史の本。『天候の状態、思念、感情、公的、私的立場での精神状態の描写については、全部資料の裏付けがある。』(P23)そうして細かな事実まで丹念に拾い集められ、積み重ねられていくことで、当時の社会の雰囲気や政治模様、各人物の個性・性格が伝わってくる。特に各人物の人物評はちょっと辛辣だが良い点・悪い点を口を濁さず率直に言いあらわしているので、その人物のキャラクターがよく伝わってくる。そうした人物評は、それだけでももっと読みたいと思うほど面白く、魅力的。
読了日:1月13日 著者:バーバラ・W・タックマン
学問の春―“知と遊び”の10講義 (平凡社新書)学問の春―“知と遊び”の10講義 (平凡社新書)感想
実際の講義録をもとにした本。そのため話し言葉で書かれている。ホイジンガホモ・ルーデンス」を講義の材料にしながら、「遊び」について語られる。『遊びを難しく学問的に定義しなくても、自分たちが普段慣れ親しんでいる世界をずらすことでもう一つ別の世界を出現さえる方法と考えればいい。』(P52)結婚の話が、昔話に多く出てくるのは結婚が交換の前提になるからで、結婚は『新しいコミュニケーションのネットワーク、つまり新しい世界が作られるきっかけになるから、世界中の昔話、神話に多い』(P78)。
読了日:1月11日 著者:山口昌男
【Amazon.co.jp限定】ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア3 書き下ろし4PリーフレットSS付き (GA文庫)【Amazon.co.jp限定】ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア3 書き下ろし4PリーフレットSS付き (GA文庫)感想
新種の凶暴なモンスター食人花の都市内やダンジョン内の安全地帯での暴走などの一連のきな臭い出来事の裏にいる黒幕、ラスボス(?)の存在が判明。そうはいってもその黒幕の『彼女』はまだ未登場だし、『彼女』は神々によってダンジョンに封じられた(?)存在っぽいが、『彼女』と神々との因縁など、敵の事情にはまだまだ未知の部分も多い。しかし本編よりも外伝のこちらの本筋のほうが、都市の根幹やダンジョンの謎といった世界のあり方とも関わるようなスケールが大きなものになって、どちらが本編かわからないものになってきたな(笑)。
読了日:1月10日 著者:大森藤ノ
死刑執行人サンソン ―国王ルイ十六世の首を刎ねた男 (集英社新書)死刑執行人サンソン ―国王ルイ十六世の首を刎ねた男 (集英社新書)感想
王を処刑した男シャルル-アンリ・サンソンはルイ16世を深く敬愛していたが、王を処刑する運命になる。処刑後、彼は、革命の敵とされ、隠れ住んでいるカトリック(非宣誓派)の僧侶の下に密かに赴き、亡き国王のためミサをあげてもらった。王のためにミサをしたことがばれたらサンソン自身が死刑となる危険が高かったが、その後も毎年王の命日に同じ様にミサをすることがカトリック信仰の復活まで10年続き、また一日も欠かさず毎日国王の魂の安息のために祈りを捧げていたほど、サンソンの王への敬愛、王を処刑したことへの悔恨の念は強かった。
読了日:1月5日 著者:安達正勝

読書メーター


ラ/////5
小///
エ//
ノ/
歴/////5
そ///

レッドドラゴンライトノベル換算で。「どうして僕はこんなところに」エッセイ換算。
人物日本剣豪伝は、その他換算。



ライトノベル 5
小説 3
エッセイ 2
ノンフィクション 1
歴史 5
その他 3


1月に読んで特に面白かったもの。
「その女アレックス」

その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス (文春文庫)

 最初から最後まで楽しめ、何度も驚かされる見事な作品。
青いバラ
青いバラ (岩波現代文庫)

青いバラ (岩波現代文庫)

 青いバラについてのさまざまな話、西洋・日本の育種の歴史、青いバラのイメージ、バイオテクノロジー・遺伝操作の歴史など、どれも興味深いし、著者が取材したミスターローズ故・鈴木省三氏と著者との交流もいいな。
「どうして僕はこんなところに」
どうして僕はこんなところに (角川文庫)

どうして僕はこんなところに (角川文庫)

 透明で美しい文章の雰囲気と見事な人物描写がとても良くて、著者の他の本も読みたくなる。基本ノンフィクション、ないしノンフィクションと創作の狭間的な作品を書く人みたいだが、とりあえず一番手に取りやすい「ウッツ男爵」という小説を読んで、それも面白ければ池澤夏樹世界文学全集にある「パタゴニア/老いぼれグリンゴ」を読もうかな。