2月に読んだ本のまとめ

2015年2月の読書メーター
読んだ本の数:20冊
読んだページ数:6585ページ
ナイス数:523ナイス

歴史・時代小説ファン必携 【絵解き】戦国武士の合戦心得 (講談社文庫)歴史・時代小説ファン必携 【絵解き】戦国武士の合戦心得 (講談社文庫)感想
イラストで刀を抜いてから斬りつける動作など武器を扱う際の動きや体勢が描かれていて、戦闘時にどういう動作をしていたのかなどのイメージをしやすいのは嬉しい。素肌武者は具足をつけない武士のことで裸という意味ではなく、着物や『汗止めの鉢巻や肩籠手程度は身につけていたと想像される。』(P51)長柄槍を持っての移動する際には槍の先の方を持って引きずって歩くため、石突は丈夫に作ってあった。また、そうして持ち運んだため『長柄足軽の行軍中の街道は埃がもうもうと舞い上がった』(P81)。
読了日:2月28日 著者:東郷隆,上田信
本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第一部「兵士の娘II」本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第一部「兵士の娘II」感想
マインが知らないはずのことを知っていることをついにルッツに怪しまれて、本当にマインかと追求される。マインは前世のことを明かし、最終的にはルッツに俺の知っているマインはお前だといわれる。こうして承認を得て、全てを知った上で受け入れてくれる人がでたことで彼女は本当の意味でマインとしてこの世界で生き直すことになり、ようやくこの世界に地に足が着いた感じ。そして今回は商人ベンノの援助によって紙製作ができるようになり、髪飾りも売られるようになるなどマインのできること、やることが一気に広がっていくのはいいね。
読了日:2月28日 著者:香月美夜
絵巻で読む中世 (ちくま新書)絵巻で読む中世 (ちくま新書)感想
絵巻について文中で触れている絵を載せながら、絵師の工夫だったり、絵から見える当時の風習・世相を解説している。そうして絵が見れるのはありがたいけど、小さなモノクロのものになっているから見辛いなあ。そして解説は、解説役と生徒役的なAとBの2人対話しているという形式でされていて、なんとなく学習マンガを思わせる。本書で扱われている絵巻は「鳥獣人物戯画」(1章)、「年中行事絵巻」(2章)、「伴大納言絵巻」(3〜5章)「信貴山絵巻」(6〜8章)。
読了日:2月28日 著者:五味文彦
天平グレート・ジャーニー 遣唐使・平群広成の数奇な冒険 (講談社文庫)天平グレート・ジャーニー 遣唐使・平群広成の数奇な冒険 (講談社文庫)感想
万葉学者の書いた歴史小説天平5年(733年)に出発した遣唐使を扱う。その中で判官(大使・副使に次ぐ地位)を務めた平群広成が主役。彼が帰国の際に乗った第三船は崑崙国に漂流し、その地で多くの者が斃されるも現地商人の助けを得てに再度唐に渡り、唐の官人として出世していた阿倍仲麻呂の助けを得て渤海国を経て天平11年に帰国。日本、唐、崑崙、渤海の4ヶ国で君主に謁見したことや非常に貴重な崑崙の香木・全浅香を使うことで色々と便宜を得た挿話、そして物語が軽快に進んでいくことに良い意味で説話的な感じがあり、読みやすかった。
読了日:2月27日 著者:上野誠
フランス革命の肖像 (集英社新書ヴィジュアル版)フランス革命の肖像 (集英社新書ヴィジュアル版)感想
フランス革命期の重要人物の肖像画をカラーで見る。著者の「小説フランス革命」で、なんとなく人物のイメージをつかんでいたので、それぞれの人物の顔を見てみてイメージ通りと思ったり、意外な印象を与えるなと思ったりして楽しめた。ルイ十六世は太っているイメージがあるが、実際の肖像画を見るとやせてはいないけど太っている感じでは全然ない。どうやら「ヴァレンヌ事件」で国外逃亡が失敗してから、そうした肥満で間抜けというような印象を与える描かれ方をするようになり、そういうイメージが作られたようだ。
読了日:2月26日 著者:佐藤賢一
イスラーム国の衝撃 (文春新書)イスラーム国の衝撃 (文春新書)感想
アラブの春」で各国の中央政府が揺らいで地方統治が緩み、辺境で統治されない空間が拡大したことがイスラーム国の台頭の背景にある。また、現在のイラクの体制ではシーア派議席の過半を取り、彼らがクルド人と組んで現体制の根幹に関わる制度変更を阻止する拒否権を押さえ、スンナ派は実権の乏しい大臣職があてられるのみで、米軍が組織し政府に雇わせていたスンナ派の自警団や指導層の連合組織を米軍撤退後に解散させ、政権内のスンナ派をテロ支援の嫌疑をかけて放逐したことでスンナ派イスラーム国に流れたこともイスラーム国の伸張の原因。
読了日:2月25日 著者:池内恵
ジャコバン派の独裁 小説フランス革命 14 (集英社文庫)ジャコバン派の独裁 小説フランス革命 14 (集英社文庫)感想
ジロンド派が「デュシェーヌ親爺」エベールを逮捕され、求められた彼の釈放要求を拒否した上、ジロンド派議長が蜂起で国民の代表を傷付けることがあればパリを廃墟にするとの暴言を吐いたこともあってパリ市は激怒し、蜂起前のきな臭さが漂い始める。その後、当初はパリの声を無視しようとしていたジロンド派も譲歩し、彼を釈放する。しかし激昂派がパリ蜂起をはじめて、エベールもそれに乗る。そのパリの蜂起は当初迫力に欠けたがエベールの発案で金を使って人を動員し、マラに激励してもらったことで参加人数が一気に増えて8万人規模となる。
読了日:2月23日 著者:佐藤賢一
独創短編シリーズ (2) 野崎まど劇場(笑) (電撃文庫)独創短編シリーズ (2) 野崎まど劇場(笑) (電撃文庫)感想
相変わらずイラストや図を多く活用するなどといった趣向を凝らした変わった作品が多く、そしてコント的な話などお笑い番組みたいな感じで、明るくて単純に笑えるコメディ系の短編集。「大相撲秋場所フィギュア中継」相撲がテレビ放送できなくなり、相撲中継は取り組みをフィギュアで再現してお届けすることになったという話だが、棒立ちの力士フィギュアなどシュールな絵面で笑えた。あと、巻末にある広告ページの枠を使用した「電撃文庫館人間消失事件」は好きだな。
読了日:2月21日 著者:野崎まど
アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極 (集英社文庫)アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極 (集英社文庫)感想
1845年に北西航路を発見するために出発した英国の英雄”靴を食った男”フランクリンを隊長とする隊は、北極圏でその行方を絶った。著者は友人の北極冒険家と彼らがたどったとされるルートをたどって北極圏の島嶼部の上や厚い氷に覆われている場所を旅する。そうした現代パートと、フランクリン隊について書かれたパートが交互に置かれる。後者ではフランクリン隊の事跡が明らかになっていく過程やアグルーカ生存の伝説を見ながら、隊員全員死亡したフランクリン隊の動きや伝説に徐々に迫っていくので、謎が明かされるわくわく感があって面白い。
読了日:2月20日 著者:角幡唯介
アルジャン・カレール -革命の英雄、或いは女王の菓子職人-〈上〉 (ファミ通文庫)アルジャン・カレール -革命の英雄、或いは女王の菓子職人-〈上〉 (ファミ通文庫)感想
上巻では美味しそうなお菓子の描写を楽しみながら、英雄の軍人で現在菓子職人(街で店も出しているが、女王の菓子職人でもある)という不思議な存在であるアルジャンが語り手の劇作家オーギュストの頼みでお菓子でちょっとした問題を解決したり、アルジャンの人物やその過去について知っていく。そして上巻の後半ではアルジャンが女王と出会った時のエピソードが書かれる。そこで語られた子供の頃にアルジャンが近所の人の手伝いをしたときにたまに貰ったお菓子の美味しさが、菓子職人に憧れるきっかけというエピソードは好きだな。
読了日:2月18日 著者:野村美月
ウッツ男爵: ある蒐集家の物語 (白水uブックス―海外小説永遠の本棚)ウッツ男爵: ある蒐集家の物語 (白水uブックス―海外小説永遠の本棚)感想
プラハの春の1年前に著者を連想させる語り手は、知人に紹介されて、プラハ滞在時にマイセンの蒐集家ウッツと話し、彼の人生、コレクションの蒐集についての話を聞いた。その6年後にウッツは死亡し、その後チェコを再訪した際に、ウッツの死後に彼のマイセンのコレクションの行方がわからなくなったことを知る。それで語り手はウッツのコレクションの行方を追い、ウッツのことを調べているうちに彼の知らなかった側面を知る。そこでウッツとマルタの複雑な関係などが明らかになって、ウッツのイメージが変わっていくのは面白かった。
読了日:2月17日 著者:ブルースチャトウィン
正倉院 (岩波新書)正倉院 (岩波新書)感想
当時の日本が交流していた国は唐や新羅くらいで、天平文化の世界性はシルクロードを通じて多くの物品が持ち込まれ、それらを受け入れた隋唐文化の世界性に由来する。また『古代文化の発展は渡来人による技術導入に負うところが大きいという「常識」』があるが、当時唐・新羅との交渉はあったが8世紀に渡来してきた唐人は決して多くなかったので、『奈良時代に盛んになった唐風の文化は、輸入品とその模倣によって支えられており、技術の移転や交流は少なかった』(P78)。そして当時の日本の国産の工芸品や美術品のレベルはまだまだ低かった。
読了日:2月16日 著者:東野治之
絶対ナル孤独者 (2) ―発火者 The Igniter― (電撃文庫)絶対ナル孤独者 (2) ―発火者 The Igniter― (電撃文庫)感想
今回は他の味方(サードアイ)の人たちとの顔合わせ、これで味方陣営の主なメンバーは概ね登場したのかな。そしてどうやらルビーアイ側も組織を作っているみたいで、このシリーズは正義の味方対悪の組織、怪人みたいなシンプルかつ王道な構図で話が展開していきそう。主人公とユミコの関係性が少しずつ深まって、二人の距離が近くなっていたり、繋がりを恐がる主人公がトラウマを超克して変わる、その兆しを既に見せてはじめているなど物語がテンポ良く前に進んでいるのはいいね。
読了日:2月15日 著者:川原礫
遊牧民の肖像―自由な草原に生きる (角川選書)遊牧民の肖像―自由な草原に生きる (角川選書)感想
トルコの遊牧民ユルックについて、著者が調査時に世話になったムスタファの家族を中心とするユルックの人々の挿話を通じて、ユルックの人たちの肖像、ライフヒストリーを書いている。そして定住化政策がとられ次第に締め付け強くなった共和国成立以後のユルック集団をとりまく状況の変化について、ムスタファが属する遊牧民集団で長くリーダーを務めたデデ・モッラについての話だったり、季節ごとに滞在する各営地の放牧地に近接する村からの強い圧力や村との力関係が逆転した状況下での村と遊牧集団との間のいざこざなどを通じて書かれる。
読了日:2月14日 著者:松原正毅
渡来銭の社会史―おもしろ室町記 (中公新書)渡来銭の社会史―おもしろ室町記 (中公新書)感想
寺院が貸した祠堂銭は、嘉吉徳政令(1441)以来徳政の対象外扱いが通例。祠堂銭の利子は月2%(年24%)当時では低利だったため、土倉は寺院からその金を借りて月5〜7%で貸し付けていた。しかし分一徳政令(1割幕府に払えば借金帳消し)である長禄徳政令(1457)では、一揆勢が私徳政した後も残る『貸付原資の提供者とそれを受け入れている土倉等との関係』(P104)も徳政の対象にした。そのため、利子付きで銭を預かりこれをより高利で他に貸付ける「合銭」として土倉等に流れ込んでいる場合は祠堂銭でも間接的に徳政の対象に。
読了日:2月13日 著者:三上隆三
天帝のみぎわなる鳳翔 (幻冬舎文庫)天帝のみぎわなる鳳翔 (幻冬舎文庫)感想
毎回舞台が変わる天帝シリーズだが、今回は艦隊が事件の舞台となる。しかし前々回の列車も大概死人の人数や事件の規模が大きかったが、それより更に大きな事件がくるとはな。今回ようやく、このシリーズの舞台である90年代の大日本帝国というパラレルワールドが形成された経緯が明かされてすっきり。そしてこのシリーズで毎回のようにヒロイン役が変わっていくのは、ミステリーのお約束的なものを踏襲しているためだということに今更気づく。
読了日:2月12日 著者:古野まほろ
大江戸曲者列伝―太平の巻 (新潮新書)大江戸曲者列伝―太平の巻 (新潮新書)感想
雑誌で連載していた毎回一人の江戸時代の人物について書いた文をまとめた本。本書で扱う人物は江戸初期から黒船来航までの期間の人物。有名な人物、出来事を扱った話が多いので、知っている話がかなり多かったのはちょっと残念。『よく大火災が発生する江戸では、大量被災者に対応するノウハウが蓄積され、非常の場合の実地マニュアルがきっちり出来上がっていた』。仮小屋を組むための品々が常時用意・貯蔵してあるので、千坪分の仮小屋(描写的に1軒で1坪みたいだから、約1000軒?)が『苦もなく半日工事で建ってしまう』(P220)。
読了日:2月10日 著者:野口武彦
一古書肆の思い出 (1) (平凡社ライブラリー (244))一古書肆の思い出 (1) (平凡社ライブラリー (244))感想
昭和の全時代を古書業界で過ごした方の自伝的な本。1巻では子供時代から、東大から一誠堂という古書店に入り、その5年後に独立して古写本など古典籍を専門とする店舗を持たない古書店を設立して、昭和8年に出した初めての目録で大きな反響を得たところまで。一誠堂時代に九条公爵家から多くの良質の古写本や他に同じ本が見当たらない「天下一品の大珍本」などの古典籍を買い受けて、臨時市で入札形式で売る。その時の学者や名士などがそれらの本を見に来て、目当ての本を手に入れようと入札する様子が書かれているのは面白くていいね。
読了日:2月8日 著者:反町茂雄
捕食者なき世界 (文春文庫)捕食者なき世界 (文春文庫)感想
想像以上に捕食者の存在、不存在が生態系に及ぼす影響が大きく、広い。『本書は、生物多様性が頂点捕食者の存在によって守られてきたという仮説にいきつくまでの、科学者たちの研究の歩みを紹介している』(解説、P438)。岩場のヒトデ(捕食者)を取除いたペインの実験、局所的にヒトデを絶滅させたことで1年経たずにヒトデが捕食していた大型のイガイに岩場が占領され、他の種の半数がその岩場に存在しなくなり、残った種もごく少数残という状態となった。キーストーン種と呼ばれる頂点捕食者が多様な生態系を維持・安定させている。
読了日:2月7日 著者:ウィリアムソウルゼンバーグ
本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第一部「兵士の娘I」本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第一部「兵士の娘I」感想
去年の下半期に存在を知り、かなりはまったweb小説の書籍化。イラストは表紙だけ見るといまいち好みじゃないかもと思ったけど、実際に挿絵などを見ると非常にきれいなイラストで、多彩な表情も魅力的に描けていて、いいイラストレーターさんだ。それとマインの家や彼女が暮らすエーレンフェストの街の図があるのは想像力が広がっていいね。異世界転生もので元の世界の知識による活躍(この巻ではまだまだだが)が書かれているのが面白いし、好きだけど、それだけじゃなくて異世界での日常生活などがかなりしっかりと書かれているのはいいね。
読了日:2月4日 著者:香月美夜

読書メーター


ラ/////5
小////
ノ///
歴/////5/
そ//


ライトノベル 5
小説 4 
ノンフィクション 3
歴史 6
その他 2



2月に読んで特に面白かったもの。
イスラーム国の衝撃」

イスラーム国の衝撃 (文春新書)

イスラーム国の衝撃 (文春新書)

 イスラーム国についてニュースで知った断片的な知識しかなかったので、詳しく知れて興味深かった。
「捕食者なき世界」
捕食者なき世界 (文春文庫)

捕食者なき世界 (文春文庫)

 想像以上に頂点捕食者の不在の悪影響の及ぶ範囲が広く、大きいことに驚く。
「一古書肆の思い出」
一古書肆の思い出 (1) (平凡社ライブラリー (244))

一古書肆の思い出 (1) (平凡社ライブラリー (244))

 昭和一桁年代に貴重な書物を扱ったエピソードや、それらを介した学者などとの交流が面白い。