4月に読んだ本のまとめ

2015年4月の読書メーター
読んだ本の数:19冊
読んだページ数:6889ページ
ナイス数:465ナイス

レトリック感覚 (講談社学術文庫)レトリック感覚 (講談社学術文庫)感想
直喩、隠喩、換喩、提喩などのレトリックに各1章を費やし、それらがどういう表現のことかやそれらの効果などについてとてもわかりやすく説明されていて面白い。また、レトリックは有限の言語で無限の事態を表現するために使われてきたものであり、文章に味わいを出すためのもの(美辞麗句)だという説明だけでは不十分。『平常的な表現のなかで隠喩性のないものをさがすほうがむずかしいくらい』(P136)で、辞書の中の単語が多くの意味の広がりがあるのはステレオタイプ化して平常表現となった『比喩の集積』(P205)があるためだ。
読了日:4月30日 著者:佐藤信夫
ログ・ホライズンTRPG リプレイ 山羊スラ戦車と終わらない旅 下ログ・ホライズンTRPG リプレイ 山羊スラ戦車と終わらない旅 下感想
このリプレイシリーズも今回で最終巻。前回の次回予告でも明らかにされていた山羊スラ戦車が登場した時に、クトゥルフで神話的存在が登場してきたときみたいな描写をしていたのは笑った。それから最終決戦で後衛であるAKが前線に突っ込んでいき、今まで未使用だったからGMもその技を持っていることを失念していた特技《ヴォイドスペル》を使ってボスの攻撃を一度無効化して一気に流れをPC側有利に傾けたのは格好いい。しかし最終回になって、このキャンペーンのマスコット(?)的存在である山羊スライムが役に立つ機会が来るとはな(笑)。
読了日:4月30日 著者:橙乃ままれ,七面体工房
秋の牢獄 (角川ホラー文庫)秋の牢獄 (角川ホラー文庫)感想
短編集。解説にもあるように「秋の牢獄」では人々は繰り返し訪れる11月7日に閉じ込められてしまい、「神家没落」では主人公は誰かがその家にいなければ外に出られない数日毎に日本を周るように動く家を無理に受け渡されて、「幻は夜に成長する」は幻術の異能を持つ女性がカルト的な教団に幽閉されるというように、どれもある状況に閉じ込められてしまった人々を描いている。そして、どの短編でもその短編で少ししか書かれていなかった描写をもっと詳しく見たいとか、その設定下での他の様々な場面や物語を見たいと思わせるほど設定が魅力的。
読了日:4月30日 著者:恒川光太郎
([み]5-1)少年十字軍 (ポプラ文庫)([み]5-1)少年十字軍 (ポプラ文庫)感想
13世紀初頭フランスの羊飼いで12歳の少年エティエンヌは神のお告げを聞いて聖地エルサレムへと向かう。エティエンヌのもとに彼と年頃の変わらない少年少女たちを中心に多くの人が集って大きな運動となるが、その旅の途中に起こった様々なトラブル・陰謀もあって、少年十字軍は失敗に終わる。しかし居場所を失った子供たちに戻るべき、行くべき場所が与えられて、大きな希望を持って子供たちは新天地へと赴くという大きな救いのあるハッピーエンドで終わったことは、その直前まで悲惨な終わりになりそうだったこともあって、とても嬉しい。
読了日:4月30日 著者:皆川博子
神様の値段: 戦力外捜査官2 (河出文庫)神様の値段: 戦力外捜査官2 (河出文庫)感想
シリーズ2作目。今回から推理小説的要素はなくなって、スリラー小説となっていることもありアクションシーンが多め。今回設楽・海月のコンビは、カルト宗教団体宇宙神瞠会が起こす事件に対処することになる。そうして彼らが宇宙神瞠会を追うことや主人公の設楽刑事の妹がその宇宙神瞠会の信者となってしまっていたことなどから、カルト宗教の怖さが描かれる。最後の自らアルマゲドンを起こそうとした宇宙神瞠会のテロを、普通の人々がそれぞれの場で良い働きをすることで防ぐという展開は、3・11以後に書かれた小説だということを感じさせる。
読了日:4月27日 著者:似鳥鶏
ドン・キホーテ〈後篇1〉 (岩波文庫)ドン・キホーテ〈後篇1〉 (岩波文庫)感想
前篇のように風車を巨人と見て、羊の群れを軍勢と見るような全く別のものを騎士道物語的なものだと思い込んで冒険をしようとしたり、普通の人を貴族や姫に、建物を城と思い込むなどして騒ぎを起こして迷惑をかけることが今のところほとんどないなど、ドン・キホーテの狂気は大分マイルドになっている印象。この巻では旅の道中で出会った土地の名士の家に数日世話になったが、狂気はあるが同時に思慮深さや礼節も持っているため、ドン・キホーテが普通に客として歓待され、その滞在中に騒動を起こしていないとか前篇の様子からは考えられない。
読了日:4月26日 著者:セルバンテス
増補「徒然草」の歴史学 (角川ソフィア文庫)増補「徒然草」の歴史学 (角川ソフィア文庫)感想
徒然草」の挿話に登場する人物や物事についての説明がなされたり、どういう意図でその挿話を書いたのかやその挿話に書かれていることはどういう経路から知ったのかについての推察、あるいは兼好自身についてや彼がどういう人物との親交があったのかなどを見ていく。兼好は蔵人ではなく、滝口として内裏務めをしていた。滝口は武士が有名だが、芸能でも滝口に選ばれるので兼好は恐らく学問で選ばれた。そして『兼好が職能に生きている人々の姿や言動を生き生きと描いたのは、彼らに近いところに生き、住んでいたからと考えられる。』(P322)
読了日:4月24日 著者:五味文彦
Fate/strange Fake (1) (電撃文庫)Fate/strange Fake (1) (電撃文庫)感想
冬木の聖杯戦争のシステムを模して、アメリカの架空都市スノーフィールドで行われた聖杯戦争を書く。1巻はそのほとんどがプロローグなので、各陣営のマスターとサーヴァントのキャラを掴むための紹介が主で聖杯戦争が本格的に始まるのはこれから。解説を見ると、このシリーズは5巻以上となるようだけど、群像劇を書くのが上手い作者さんだから今後も楽しみ。そしてギルガメッシュやロード・エルメロイII世(zeroのウェイバー)など、他のFateシリーズで登場したキャラが登場しているのは嬉しかった。
読了日:4月23日 著者:成田良悟
犬の力 下 (角川文庫)犬の力 下 (角川文庫)感想
バレーラ一統の興亡が書かれる。いくつも印象に残るシーンがあってよかった。例えば、”黄色毛”に買収された”叔父貴”の愛人の少女は、彼の食事に毒物を混ぜたが、それを”叔父貴”は見破って、彼女にその食事を「食べるんだ」と穏やかに圧迫を加えて食べさせて殺して、その遺体を犬に食わせたというシーンはすごく印象的。そして”黄色毛”がメキシコ保安局員を動かして暗黙の了解で安全地帯となっていたバーに襲撃を加えたが、そのときカランが快刀乱麻の活躍をしてアダンとラウルの兄弟を逃がしたシーンなどのアクションシーンも面白い。
読了日:4月22日 著者:ドン・ウィンズロウ
夢見る人の物語 (河出文庫)夢見る人の物語 (河出文庫)感想
短編集。「追い剝ぎ」悪漢たちが絞首刑になった友人を身の危険を顧みず夜にひそかに下ろして墓に入れてやるという短い話だけどなんか好き。「ハシッシュの男」その前に置かれている架空の都市ベスムーラの終焉を描いた短編「ベスムーラ」を雑誌で読んだという男が著者に話しかけ、その男は自分はハシッシュ(麻薬)を使ってベスムーラを行ったと言いその終焉の様子を語る。あと、クトゥルフ神話ラヴクラフトが『宇宙的な視点、異国風な命名法、豊かな語彙、想像神話という形式など』(P367)でダンセイニの影響を受けていたとは知らなかった。
読了日:4月18日 著者:ロード・ダンセイニ
モサド・ファイル――イスラエル最強スパイ列伝 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)モサド・ファイル――イスラエル最強スパイ列伝 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)感想
イスラエルの情報機関であるモサドの歴史。一章では当時のモサド長官で大きな成果を挙げた伝説的な存在であるダガンについて書かれ、二章ではイランの核開発を阻止するために繰り返す技術者の暗殺や施設の破壊工作しているという現在の作戦がとりあげられる。そして3章以後はモサドができた当初からの時系列でモサドが経験したいくつもの大きな事件を扱う。章ごとに一つの事件・作戦をとりあげて、それらを詳細に書いている。そして各章で扱われている作戦は、破壊工作や暗殺、諜報活動などさまざま。
読了日:4月17日 著者:マイケル・バー゠ゾウハー&ニシム・ミシャル
菜の花の沖〈1〉 (文春文庫)菜の花の沖〈1〉 (文春文庫)感想
淡路島で生まれた嘉兵衛は家の貧しさのため、義叔父(叔母の夫)が隣の集落でしている雑貨屋和田屋の奉公人になる。嘉兵衛が成人後に若衆宿に入るときに和田屋のある集落(新在家)でなく、実家のある集落の若衆宿に入ったことで新在家の若衆の嫌がらせにあう。その後、新在家の網元の美人の娘であるおふさと契ったために命の危険にさらされて、国抜けして大坂へ向かい和田屋の弟が主人の廻船問屋の堺屋に雇ってもらう。その後おふさも大坂に来て2人は夫婦となるが家を持てないでいたが、しばらくして小さいながらも自分たちの家を手に入れた。
読了日:4月14日 著者:司馬遼太郎
犬の力 上 (角川文庫)犬の力 上 (角川文庫)感想
アメリカとメキシコの裏の世界での麻薬をめぐる闘争を描いた群像劇。殺伐としたドライな世界観で、マフィアたちが麻薬による金儲けと権力争いなどにより立身したり破滅したりするさまや、泥に塗れながらも彼らと対決している米国の麻薬取締局(DEA)の特別捜査官アート・ケラーの孤独な闘争などが書かれていて面白い。1975年から物語は始まり、20世紀末頃までの四半世紀ほどと長い時期を扱っていることもあって年月によって様々な変化があって、その変化によって物語もダイナミックに動いていくから読んでいて楽しい。
読了日:4月13日 著者:ドン・ウィンズロウ
徳の政治 小説フランス革命 16 (集英社文庫)徳の政治 小説フランス革命 16 (集英社文庫)感想
戦争でも内乱でも戦局は好転して、危機は去りつつあった。そして政局は、ダントン派(寛大派)のデムーランがエベール派を攻撃したことで、それまで危機に乗じて勢いを増していったエベール派に口をつぐんでいた人々からもそのエベール批判に追随する者が多く出てきて、エベールの論に引きづられがちだった世論を引き戻す。そうしてダントン派とエベール派が対立。当初ロベスピエールとダントン派は共闘していたが、デムーランが自身の新聞で嫌疑者法の運用を批判したことで、ロベスピエールは彼の新聞を問題視する。
読了日:4月12日 著者:佐藤賢一
元素生活(文庫版)元素生活(文庫版)感想
それぞれの元素にゆるい感じのキャラクターイラストを付けて、イラストや説明文で各元素の性質だったり、その元素がどのように利用をされているかなどその元素についてのエピソードが短く書きながら、各元素を紹介している。マグネシウム(元素番号12、Mg)ノートパソコンや携帯電話のボディに使われているが、豆腐のにがりにも使われている。コバルト(元素番号27、Co)コバルトという名の由来はコボルト(山の精)にある。また、そうした各元素についての紹介の他にも、イラスト付きでミネラルなど身近な元素に関する話がされている。
読了日:4月10日 著者:寄藤文平
拉致と決断 (新潮文庫)拉致と決断 (新潮文庫)感想
拉致され北朝鮮という異界で過ごした体験、北朝鮮の生活、拉致された一人の人間として味わったさまざまな心情を冷静に語っている。『招待所生活の自由度を語るには、奪われた自由よりも、与えられていた自由を説明したほうが早いのかもしれない。』(P22)考える自由も思っていること(例えば望郷の念)が僅かでも出ると監視している指導員に見咎められるため全くの自由とはいえない。また私物を所有・処分する自由はあっても、賃したり売買する時の約束違反を訴える権利はない。あとはせいぜい住んでいる招待所の周辺を散歩する自由くらい。
読了日:4月8日 著者:蓮池薫
サーカスが来た!―アメリカ大衆文化覚書 (平凡社ライブラリー)サーカスが来た!―アメリカ大衆文化覚書 (平凡社ライブラリー)感想
19世紀後半、主に金ぴか時代の頃に花開いたさまざまなアメリカ大衆娯楽文化、サーカスや大衆演劇、講演者、ダイム・ノヴェル(安価でセンセーショナルな大衆小説)などについて書かれる。当時アメリカでは「品よく清潔」が明らかに売れたので、娯楽でも教育性などが強調された。講演運動は真面目な大衆教育運動として始まったが、娯楽化して大衆娯楽となる。講演が人気で良い収入になったこともあり『アメリカ文学最初の黄金期を作った「アメリカ・ルネッサンス」の代表的文学者は、ほとんどが、多かれ少なかれ講演者になろうとした』(P114)
読了日:4月6日 著者:亀井俊介
バカとテストと召喚獣12.5 (ファミ通文庫)バカとテストと召喚獣12.5 (ファミ通文庫)感想
これにてシリーズ完結。本編完結後をFクラスの日常を書いた短編集。最後にふさわしく、このシリーズらしいFクラスのいつもの面子がバタバタと楽しくバカやっているところが書かれて終わる。各短編の前に置かれている「放課後座談会」では、各キャラの初期設定について書かれているが、初期設定では姫路は雄二好きで、島田は須川ポジの男だったということで、初期設定では主人公の明久は本当にもてていないかったということにはちょっと笑った。
読了日:4月5日 著者:井上堅二
文明の十字路=中央アジアの歴史 (講談社学術文庫)文明の十字路=中央アジアの歴史 (講談社学術文庫)感想
現代までの数千年という長いスパンを扱っているので。中央アジアに勃興した国々の栄枯盛衰の模様といった大きな動きが書かれていて、細かいエピソードは少ない。しかし、そうやって歴史を早回しで見ていくからこそ様々な文明、集団の勢力の伸張を受けて度々大きく地域情勢が変わって行く中央アジアの歴史のダイナミックさを感じられる。中央アジアはペルシア、ギリシア、中国、インド、アラブ、モンゴル、ロシアなどユーラシアの著名な文明や大勢力の多くから影響を被ってきた題の通り文明が交わる地域ということで、この地域への興味がわいてきた。
読了日:4月4日 著者:岩村忍

読書メーター

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ログ・ホライズンTRPG リプレイ 山羊スラ戦車と終わらない旅 下」はライトノベル換算。「サーカスが来た!―アメリカ大衆文化覚書」はエッセイ換算。「拉致と決断」その他換算。




ライトノベル 3
小説 9
エッセイ 1
ノンフィクション 1
歴史 2
その他 3



4月に読んで特に面白かったもの。
「犬の力」

 興味があったのに、今まで長さに躊躇して読んでいなかったことを後悔。美しく印象に残るシーンがいくつもあっていいな。

モサド・ファイル」

モサド・ファイル――イスラエル最強スパイ列伝 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

モサド・ファイル――イスラエル最強スパイ列伝 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 イスラエルの情報機関モサドの歴史を、その作戦の内容とともに見る。

「レトリック感覚」

レトリック感覚 (講談社学術文庫)

レトリック感覚 (講談社学術文庫)

 各レトリックの区分がとてもわかりやすくていいね。