5月に読んだ本のまとめ

2015年5月の読書メーター
読んだ本の数:18冊
読んだページ数:6828ページ
ナイス数:450ナイス

クアトロ・ラガッツィ (上) 天正少年使節と世界帝国  (集英社文庫)クアトロ・ラガッツィ (上) 天正少年使節と世界帝国 (集英社文庫)感想
戦国時代のイエズス会の宣教師たちを書いた歴史の本。日本のイエズス会の内部が、上から教えを与える意識で西洋文化・習慣に同化させようとした十年間日本布教長を務めたカブラルやコエリョらのグループと、中国や日本を異教だが文明国だとして現地の文化にあわせた布教方針に転換させた巡察師ヴァリニャーノやオルガンティーノのイタリア人中心の人文主義的なグループにわかれていたとは知らなかった。今でこそ教会は現地にあわせる方針を世界各地でとっているが、それを『具体的なかたちで実施したのは、このヴァリニャーノが最初』(P188)
読了日:5月31日 著者:若桑みどり
アブサロム、アブサロム!(上) (岩波文庫)アブサロム、アブサロム!(上) (岩波文庫)感想
初フォークナー。冒頭の「主な登場人物」で主要登場人物について数行ずつ説明されていたり、同じく冒頭の「各章の語りについて」で各章の時系列と語り手がどういった話をしたかについての概略がまとめられているのはありがたい。しかしその「主な登場人物」とか解説で、上巻ではまだ明かされていないサトペン兄妹とチャールズ・ボンの本当の関係性だったり、ヘンリー・サトペンがボンを殺した理由などがわかってしまうことには思わずちょっと笑ってしまった。
読了日:5月31日 著者:フォークナー
仏教思想のゼロポイント: 「悟り」とは何か仏教思想のゼロポイント: 「悟り」とは何か感想
前半では仏教思想の基本概念の平明な解説がされて、後半ではゴータマ・ブッダの仏教のコアである解脱・涅槃に関するさまざまなことが語られる。内容的にも充実しているし、今まで読んだ本の中で一番といっていいほど仏教思想の基本的な構造をわかりやすく噛み砕いて説明してくれているし、目から鱗な点もあって非常に面白かった! 仏教思想のゼロポイントは、解脱・涅槃のこと。ゴータマ・ブッダが「解脱・涅槃」に至って輪廻から解放されたことで仏教が生まれて、そしてゴータマ・ブッダはいま・ここで涅槃に至るための方法として教えを説いた。
読了日:5月31日 著者:魚川祐司
失脚/巫女の死 デュレンマット傑作選 (光文社古典新訳文庫)失脚/巫女の死 デュレンマット傑作選 (光文社古典新訳文庫)感想
2013年「このミステリーがすごい」海外編5位。この文庫からミステリーのランキングに入るのは珍しいと思って購入したもののだいぶ積んでしまっていた。短編集。収録作は「トンネル」「失脚」「故障」「巫女の死」。各短編はブラックユーモアを含んでいる変わった展開や結末の物語ということもあり、ショートショート的に感じた。ミステリーらしく探偵役がピタリと真相を言い当てるというものはなく、むしろ「巫女の死」のように真相を知ることの困難さを書いている。「故障」探偵役と犯人役が、過去の犯罪の物語を作り上げるというのは面白い。
読了日:5月31日 著者:フリードリヒ・デュレンマット
僕と彼女のゲーム戦争 (8) (電撃文庫)僕と彼女のゲーム戦争 (8) (電撃文庫)感想
今回メインで扱われるゲームは「League of Legends」。プレイヤーが介入しなければ互角で膠着する両軍のモブ兵たちの戦闘を、両チーム各5人のプレイヤーがチャンピオンといわれるキャラクターたちを使って介入することで勝利を目指すというもの。このゲームを今回はじめて知ったが、月に1回以上プレイする月間アクティブユーザーが6700万人(!)、世界大会のネット配信を1100万人が同時視聴したという世界的には超有名なゲームみたいだ。今回、いつもあまり目立たない瀬名先生が活躍しているのはいいね。
読了日:5月30日 著者:師走トオル
ねじれた絆―赤ちゃん取り違え事件の十七年 (文春文庫)ねじれた絆―赤ちゃん取り違え事件の十七年 (文春文庫)感想
子供の取り違えの事実が判明してからの25年(文庫新章を含めて)という長い間取材をして、その間の双方の家族のさまざまな葛藤や、家族の物語を書いたノンフィクション。子供が6歳のときに取り違えの事実が判明したことで、6年間の情愛か血のつながりという選択を迫られた親たちの物語であり、子供が6歳になってから新たな家族関係、親子関係を築き始めようとした家族の物語であり、育ての親への情を選んだ美津子の物語。しかし文庫新章などで、取り違えで翻弄された子供たちが、大人になった現在幸せそうな様子が見れるのはほっとする。
読了日:5月27日 著者:奥野修司
スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943 (朝日文庫)スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943 (朝日文庫)感想
独ソ戦を、激戦となったスターリングラードをめぐる攻防を中心に描く。また、兵士達の手紙や日記、報告書などを引用して、過酷な徴発や捕虜への扱い、補給不足による飢餓状態など当時の戦場の状況が書かれる。廃墟と化して、戦争の前線となったスターリングラードでは一つの拠点を双方が奪おうとして『ドイツ兵が最上階にいて、その下にロシア兵、さらにその下にはドイツ兵と、まるで「段重ねのケーキ」の観を呈する』という混沌とした状況も起こる。また、独ソ戦では5万人以上のソ連市民や元赤軍兵がドイツ軍の制服を着てソ連と戦っていたようだ。
読了日:5月24日 著者:アントニー・ビーヴァー
Fate/strange Fake (2) (電撃文庫)Fate/strange Fake (2) (電撃文庫)感想
聖杯戦争の監督者としてやってきたサイボーグ神父セルバンテス。彼が死徒ジェスター相手に挑発としてコーヒーをかけて、俺のおごりだと言ったことに対する、ジェスターの『受付で無料支給してるコーヒーだろうがぁッ!』(P175)というちょっとズレているつっこみには思わず笑った。それから、設定に詳しいわけではないから聖堂教会にはサイボーグ化とかそうした技術があるのかと思って読んでいたけど、あとがきを見るとどうもノった結果生み出されたものみたいで、元々そうした技術の設定があったということではなかったのね(笑)。
読了日:5月22日 著者:成田良悟
後水尾天皇 (中公文庫)後水尾天皇 (中公文庫)感想
江戸時代最初期の天皇であり、文化人である後水尾天皇の評伝。公家社会と京都の上層町衆がその担い手であり、後水尾院もその主要な担い手であった寛永文化や、当時の朝幕関係などが書かれる。寛永文化は、当時まだ「近世的身分秩序に閉じられていなかった」ことで生まれた。当時は芸能に優れているのであれば、地下の者でも宮中の芸能の寄り合いに招かれて殿上人と同座していた。しかし17世紀も半ばになると『かつて地下の者も同座して互いの技術を磨くサロンの土壌がようやく失われ、町のものと堂上との間に超えがたい溝が』(P177)できた。
読了日:5月21日 著者:熊倉功夫
ドン・キホーテ〈後篇3〉 (岩波文庫)ドン・キホーテ〈後篇3〉 (岩波文庫)感想
贋作である「ドン・キホーテ 続編」を読んだ人々にドン・キホーテとサンチョは『続編』の彼らと本物の私たちは別者だと否定していたが、今回その贋作(『続編』)中のキャラを登場させて、その人にこのドン・キホーテとサンチョと、『続編』の2人とは全くの別人だといわせているのには笑った。それと解説を読むまで意識していなかったが、後篇で「ドン・キホーテ 前篇」を読んだ人と出会うことが多かったのは、前篇が「騎士物語」に依拠していたように、後篇は「ドン・キホーテ」(前篇)という本に依拠しているからであるようだ。
読了日:5月19日 著者:セルバンテス
アメリカン・スナイパー (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)アメリカン・スナイパー (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)感想
海軍特殊部隊SEALという精鋭部隊に所属し、イラクで戦い米軍史上最多の射殺数を記録し、仲間に<ザ・レジェンド>というあだ名をつけられ、敵からは首に懸賞金をかけられた凄腕のスナイパーの回想録。戦場での体験や率直な心情が書かれている。著者は戦場にあることを好み、シンプルに仲間を愛し守り、敵を嫌悪し打ち倒す純粋な戦士という感じ。そのため戦場の憂いや、懊悩などは書かれないが、著者が戦場に身を置き続けたことで発生した家庭内での不和については、妻のタヤ自身が当時の心境を綴った文章が適宜挿入されることで描かれている。
読了日:5月16日 著者:クリス・カイル,スコット・マキューエン,ジム・デフェリス
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 7 (GA文庫)ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 7 (GA文庫)感想
前回から新しくヘスティア・ファミリアの仲間になった命の故郷の友人春姫は、歓楽街を支配するイシュタル・ファミリアで囚われの身となっていた。ベルたちは彼女を助けるために強大なイシュタル・ファミリアと闘うことになる。あとがきに「劇場版みたい」とあるが、確かにベルが囮になって相手の本拠を縦横無尽に走り回りながら戦う大立ち回りや、春姫を助けるために格上の敵アイシャを相手にした1対1での決闘、そして最後の歓楽街の壊滅など絵になる派手さがあり、言われてみれば確かに劇場版的だと納得。そして次回は日常編ということで楽しみ。
読了日:5月15日 著者:大森藤ノ
〈歴史・時代小説ファン必携〉【絵解き】雑兵足軽たちの戦い (講談社文庫)〈歴史・時代小説ファン必携〉【絵解き】雑兵足軽たちの戦い (講談社文庫)感想
和弓の『最大射程は、角度四十五度で四町(一町は六十間。四町で約四百三十六メートル。これ以上飛ばす場合は、矢に細工をして放つ)。通常は六十メートルほどの数矢(雑兵の集団使用)で相手を制圧する。』(P41)思っていたよりも射程長かったようだ。しかし『現代の弓道家で四町飛ばす者は、まず居ない。』(P78)ということで、当時の人たちは現代のものよりもずっと張りの強い弓を使っていたようだ。また雑兵は自前で保存食を備えたが、塩も粉末の塩は湿気を含みやすく野外では扱いにくいため、自前で焼き塩を用意することもあった。
読了日:5月12日 著者:東郷隆
魔法科高校の劣等生 (16) 四葉継承編 (電撃文庫)魔法科高校の劣等生 (16) 四葉継承編 (電撃文庫)感想
今回は黒羽以外の四葉家の分家の有力者が登場し、四葉家で達也が邪険にされている理由が書かれる。しかし達也と深雪が最終的に結ばれることは予想できていたが、深雪が調整体だったことには驚き。個人的に達也はいずれ四葉を敵に回すか、そうでなくとも四葉から離脱するものと思っていたので、四葉の当主真夜が実は達也に好意的であったことが明らかになり、彼女が達也の後ろ盾となって分家連中を黙らせて、次期当主の深雪の婚約者としたことで、面倒で時間がかかると思っていた四葉まわりの話が今回であらかた終わることになるとは予想外。
読了日:5月11日 著者:佐島勤
飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)感想
ギナジウム(全寮制の寄宿学校)での5人組の少年達のクリスマスまでの数日間が書かれる。普段は大人っぽく5人のリーダー的なマルティンが貧乏のためクリスマス休暇に家に帰れないことをひどく悲しく思っているなどの少年らしい感情の動きが書かれているのはいいね。そんなマルティンに正義さん(ベーク先生)が旅費を渡したが、彼はそれに感謝しつつも後で返すといったのに対して『クリスマスイブに旅費をプレゼントするんだよ。返してもらおうなんて思っちゃいない。そのほうが、うんとすてきじゃないか』(P191)といっているのもいいな。
読了日:5月10日 著者:ケストナー
犯罪 (創元推理文庫)犯罪 (創元推理文庫)感想
短編集。弁護士である「私」が関わった、道徳的には犯人に同情できるケースなどの形式的な判断だけでは裁ききれないような数奇な事件を起こした人物についてや、その事件が起こるまでの経緯が、その事件発生前の段階から時系列でわりと淡々とした文章で、しかし魅力的に、描かれる。各短編は大体20〜30ページほどの短さだが、どの短編も味わい深くてとても面白い。そして、どの短編でも犯人の個性的な人物像がしっかりと描かれているのが魅力。また、各短編の終わりにエピローグ的な挿話が付いているのも余韻があっていいね。
読了日:5月8日 著者:フェルディナント・フォン・シーラッハ
ダントン派の処刑 小説フランス革命 17 (集英社文庫)ダントン派の処刑 小説フランス革命 17 (集英社文庫)感想
エベール派の処刑後10日と経たずにダントン派の主要メンバーが逮捕される。しかし議会での告発もなしに行われたダントンらの逮捕に、ダントン派だけでなく平原派も抗議の声をあげる。予想外の議会の雰囲気にひるむ山岳派だが、ロベスピエールが演説によって議場の空気は一変させ、黙らせる。ダントンたちの裁判は、デムーランの妻リュシルが裁判所に人を動員して傍聴席からも圧力をかけたこともあり、裁判所はかつてのマラ裁判の時のような空気となる。そのように裁判が荒れたことで、山岳派の裁判官・陪審員たちは弱気になる。
読了日:5月7日 著者:佐藤賢一
ドン・キホーテ〈後篇2〉 (岩波文庫)ドン・キホーテ〈後篇2〉 (岩波文庫)感想
前巻ではドン・キホーテのはた迷惑度が下がっている気がしていたが、今回彼は人形劇を現実と思い込み人形を破壊したり、川辺にある小船を無断で使って敵の砦と思った水車小屋を突撃して船を壊すなど前篇のはた迷惑さは健在。そしてドン・キホーテは、「ドン・キホーテ」を読んだ公爵夫妻に客として招かれ歓待される。公爵夫妻は、節度のある悪ふざけで色々大芝居をしてドン・キホーテ主従の反応を楽しむ。その公爵の芝居でサンチョは島の領主となる。領主サンチョのパートはサンチョメインが新鮮だし、そこで繰り広げられる悪ふざけも面白い。
読了日:5月6日 著者:セルバンテス

読書メーター

ラ////
小/////5//
ノ//
歴////
思/



ライトノベル 4
小説 7 
ノンフィクション 2
歴史 4
思想・宗教 1


相変わらずの20冊弱の読書量。


5月に読んで特に面白かったもの。
「仏教思想のゼロポイント 「悟り」とは何か」

仏教思想のゼロポイント: 「悟り」とは何か

仏教思想のゼロポイント: 「悟り」とは何か

 仏教思想を非常にわかりやすいように噛み砕かれ、整理されている。今後も読み返す本になりそうだ。

「犯罪」

犯罪 (創元推理文庫)

犯罪 (創元推理文庫)

 短編集。短編で簡潔な文章だが、色々と想像させて豊かなスポットの当たった事件を起こした人々の個性や、背景が見事に描かれていて面白い。この1作だけで、文庫化したら絶対読む作家になった。

「ねじれた絆―赤ちゃん取り違え事件の十七年」

 ノンフィクション。長年の家族の葛藤、人間ドラマが描かれる。