6月に読んだ本のまとめ

2015年6月の読書メーター
読んだ本の数:16冊
読んだページ数:5683ページ
ナイス数:493ナイス

郵便配達は二度ベルを鳴らす (新潮文庫)郵便配達は二度ベルを鳴らす (新潮文庫)感想
非常にテンポ良くストーリーが進むし、面白い。数多くの映画化、邦訳があることも納得。語り手の風来坊フランクとコーラが、彼女の夫を殺害する。その裁判では弁護士のキャッツは自身のライバルである判事に勝つために二人をいいように操って、工作の時間を稼ぐために二人を仲違いさせて、無罪にする。そうした当事者は蚊帳の外でいつの間にか無罪になっているという中盤の展開は喜劇的だ。しかしその裁判で抱いた互いへの不信感が、そして夫を排除したことで互いの性質の大きな違いが意識されてきたことが、二人の心理的な距離は離れていく。
読了日:6月30日 著者:ジェームズ・M.ケイン
レナードの朝 〔新版〕 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)レナードの朝 〔新版〕 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)感想
かつて流行した嗜眠性脳炎の後遺症でろくに体を動かせなくなったり、声を発せなくなっていた人々。彼らがL-DOPAの投与で「目覚め」た(長い間体を動かせなかったのに直ちに喋れたり、歩けるようになったりした)。そのような劇的な望ましい効果と、もうひとつの効果である「副作用」(現れる症状はさまざま)について書かれている。「症例」では実際の20人の患者さんの話が小伝記的に書かれているのがいいね。また「付録7 『レナードの朝』の演劇と映画」は、この本を題材にした演劇や映画などへの著者の反応、感嘆が書かれていて面白い。
読了日:6月30日 著者:オリヴァー・サックス
ピスタチオ (ちくま文庫)ピスタチオ (ちくま文庫)感想
アフリカで呪医の修行をしていた片山は、患者がいよいよ助からないことがわかると、その人の『一生を謳い上げるストーリー』を作って聞かせていたという挿話がいいね。その挿話の中の『死者には、それを抱いて眠るための物語が本当に必要なんだ』(P274)という片山の言葉が印象に残る。そして、死んでしまった双子の妹を探すナカトに、その片山が主人公の棚がそれを教えてくれると死ぬ前に予言していたが、実際そのとおりになって棚が本当に彼女を妹のもとに連れて行く導き手としての役割を果たすことになるというラストも好き。
読了日:6月30日 著者:梨木香歩
本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第一部「兵士の娘?」本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第一部「兵士の娘?」感想
マインが魔力を暴走させるシーンで神官長がその魔力の圧で口から血を流しているが、神官長の凄さを知ってから改めてこのシーンを見るとマインの規格外さが際立つ。エピローグ後に置かれた『それから神殿に入るまで』は、第一部と第二部の間のいくつかの話が書かれる。トゥーリ視点の話も本編でギルド長の料理人に菓子のレシピを教えたその続きの話も面白い。書き下ろしの「商人見習いの生活」見習いとしてベンノの店で働くようになったルッツの生活を書いた短編。こうした主人公以外のキャラクターの日常を描いた話は好きだから、嬉しい。
読了日:6月30日 著者:香月美夜
イギリス近代史講義 (講談社現代新書)イギリス近代史講義 (講談社現代新書)感想
中世都市は大体が顔見知りの世界であり、中世には現代のような匿名性の高い「都会」はなかった。イギリスでは16世紀に匿名性の高い都会(ロンドン)が誕生する。ロンドンの人口は16世紀初頭で数万であまり匿名性は高くなかったが、その世紀の終わりには『一〇万をはるかに超え、よほど匿名性が高い社会』(P23)となる。『ぜいたく禁止法は、中世から近代にうつっていく近世という時代に、中世の身分秩序が崩れていくのを止めるために、世界中の国で出された』(P52)イギリスは1604年に世界で最初に全廃した。
読了日:6月29日 著者:川北稔
クアトロ・ラガッツィ 下―天正少年使節と世界帝国 (2) (集英社文庫 わ 13-2)クアトロ・ラガッツィ 下―天正少年使節と世界帝国 (2) (集英社文庫 わ 13-2)感想
コエリョが秀吉の愛顧を得ようとしてした軽率な言動・行動が、猜疑心が強い秀吉に強い警戒心を抱かせて、バテレン追放令が出される。それまで日本布教はイエズス会の専任だったが、彼らが失敗したと思って、フランシスコ会などが日本に来て布教をはじめる。ルソンからの使節として来たフランシスコ会士が禁令があるのに堂々と布教をはじめて、そのことで警告を受けていたのに公然と活動を続けた。そうしたこともあって秀吉とルソン・スペインとの関係が微妙になっていた時期に起きたサン・フェリペ号事件を契機に本格的な迫害が始まる。
読了日:6月28日 著者:若桑みどり
文庫 伝説の総料理長 サリー・ワイル物語 (草思社文庫)文庫 伝説の総料理長 サリー・ワイル物語 (草思社文庫)感想
日本のフランス料理の発展に大きな貢献をしたサリー・ワイルについて書いたノンフィクション。ワイルは関東大震災後、横浜のホテル復興の象徴として建てられたホテルニューグランド総料理長として招聘された。ワイルは当時の日本のホテル料理人は最初に配属されたのが肉料理ならずっと肉料理、魚料理なら魚料理だけをするのが普通だった中、欧州流のローテーション制を持ち込み、色々なことをさせながら自分の技術を惜しみなく教えた。また、戦後に20年滞在した日本を離れた後も、日本の若い料理人が欧州修行できるように色々と援助をしていた。
読了日:6月26日 著者:神山典士
幻獣辞典 (河出文庫)幻獣辞典 (河出文庫)感想
さまざまな想像上の生物について、それぞれ数ページで語っている。一角獣やサラマンドラといった有名な伝承上の生物の他に、ポオやカフカなど小説家による想像上の動物についてもそれぞれ項目が設けられている。パンサーは中世動物物語では、今日の肉食獣のパンサーではなく、他の動物をひきつける甘い息と流麗な声を持つ、山中の隠れた洞穴に棲む大人しい孤独な獣。そしてパンサーは七十人訳ギリシア語聖書では、イエスのことを予言的に指す言葉として使われている。そのような、かつてと現在ではイメージが全く違うものがあるのは面白い。
読了日:6月25日 著者:ホルヘ・ルイスボルヘス
アブサロム、アブサロム!(下) (岩波文庫)アブサロム、アブサロム!(下) (岩波文庫)感想
クエンティンは学友のシュリーヴにサトペン家の話を語っていく。そうしているうちに二人は次第に興が乗っていき、登場人物の内面や当時の会話まで思い描きながら物語っていく。そのように語られる過去の人物の内面が描かれていることで、父サトペンとジョーンズの死や、ボンに死をもたらした「真実」が明かされたときなどの劇的な場面での人々の悲しい心の内がわかって、そうした場面がいっそう映えていいね。特に物語の一番の山場である父サトペンに真実を知らされたヘンリーとボンのシーンは、本当に悲しくも美しい。
読了日:6月24日 著者:フォークナー
荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)感想
デビュー作やジョジョなど自身の漫画での工夫とその意図について説明して、実際にそのページを見せてくれるのはいいね。一番重要なのはキャラクターなので、早くストーリーに入りたくとも、その前にまずキャラクターに興味を持ってもらう必要がある。王道、エンターテイメントでは基本的にはプラス、プラスに上がっていくのが良く、主人公を負けさせたり、挫折させたりというマイナスを作ることはよろしくない。例えばスタート地点がマイナスでそこからプラスになることはいいが、マイナス・プラスの起伏になったりするのは良くない。
読了日:6月22日 著者:荒木飛呂彦
アクセル・ワールド (18) ―黒の双剣士― (電撃文庫)アクセル・ワールド (18) ―黒の双剣士― (電撃文庫)感想
今回、黒雪姫たちネガ・ネビュラスは加速研究会・白の王との戦いへ向けてグレート・ウォールにその計画への協力を了承してもらうなど、白の王のレギオンとの戦いへの準備が着々と進んでいく。そして四元素のグラファイト・エッジが本編に登場し、これでついに旧ネガ・ネビュラスの幹部の四元素全員が出揃った。しかし黒の王と一対一で互角に渡り合える強さなのに、他の戦局がネガ・ネビュラス優位に傾いたため、他の四元素のメンバーに駆けつけられ、囲まれて白旗をあげたことがさらっと書かれるグラファイト・エッジのしまらなさには少し笑った。
読了日:6月19日 著者:川原礫
革命の終焉 小説フランス革命 18 (集英社文庫)革命の終焉 小説フランス革命 18 (集英社文庫)感想
戦場での危機が遠のき現政府への支持も高まったが、それと同時にもはや危機は脱したのだから恐怖政治はいらないのではという恐怖政治不要論の声が囁かれ始めた。また、ロベスピエールはダントン派を処刑した後悔があるため告発することに及び腰になり、強権的舵取りが取れなくなっていた。告発の代わりにロベスピエールは脅しで釘を刺して自発的な改心を願うが、そうした名指しをせずに行われる脅しは自分が告発され逮捕されるのではないかという恐怖と不安を政界に蔓延させる。
読了日:6月17日 著者:佐藤賢一
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン (3) ―セカンド・スクワッド・ジャム (下)― (電撃文庫)ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン (3) ―セカンド・スクワッド・ジャム (下)― (電撃文庫)感想
今回は戦闘での死亡後には10分間だけ破壊不能オブジェクトとして死体が残るという仕様を利用した戦闘が色々なシーンで書かれているが、それにまぎれて死んだふりはともかく、盾代わりにしたり銃座にしたりとわりとすごいことするのね。ラスト、大会後の展開は予想通りではあるが、きちんと収まるべきところに収まって良かった。しかし巻末にこのシリーズに出てくる銃器の解説が載っているが、そこに『解説は、登場銃器のネタバレがありますのでご注意ください』(P522)という注意書きがあるのにはちょっと笑った。
読了日:6月16日 著者:時雨沢恵一
能・文楽・歌舞伎 (講談社学術文庫)能・文楽・歌舞伎 (講談社学術文庫)感想
日本の伝統的な舞台芸術の能・文楽人形浄瑠璃)・歌舞伎について第一部、第二部、第三部と分けて、歴史的な話だったり、それぞれの劇の特色の解説などがされている。そして脚本を読むだけではわからないそれぞれの演劇に独特の雰囲気だったり魅力があることが書かれる。第一部の「能」と第二部の「文楽」はもともと各個独立した本であったようだが、第三部の歌舞伎は20ページちょっとの書き下ろしでの説明のほかは、日本の伝統的な劇を語った2つの講演が付いているだけなので歌舞伎についての話は少な目。
読了日:6月13日 著者:ドナルド・キーン
テロルの決算 (文春文庫)テロルの決算 (文春文庫)感想
1960年三党首演説会にて社会党委員長の浅沼稲次郎は刺殺された。その事件で政治的暗殺を成し遂げた十七歳の少年山口二矢、そして浅沼稲次郎の二人の運命の交錯を描いたノンフィクション。信念と不転退の決意が二人をその決定的な一瞬の邂逅へと導いた。一人で計画を練り上げ、実行し、幾重の偶然に味方されながらも政治的暗殺を成し遂げた。山口二矢、ただその一事のために全存在を燃焼しつくし、自分の人生によって見事に完成された物語を作った。
読了日:6月12日 著者:沢木耕太郎
RPF レッドドラゴン 5 第五夜 契りの城 (星海社文庫)RPF レッドドラゴン 5 第五夜 契りの城 (星海社文庫)感想
前回ニル・カムイの首都シュカが壊滅して、赤の竜調査隊のメンバーは各勢力にばらけて各地へと散って行った。今回、時代の移り変わりに浮かび上がる<契りの城>が出現するとき、そこに赤の竜もいるという情報を知らされた各勢力がその場に赴いたことで、かつての赤の竜調査隊のメンバーは今度は競争相手として同じ場所に集うことになる。次回から最終決戦が始まる。それから拠点に戻った革命軍が宴会するシーンで実際にそれらしい料理を用意して、雰囲気を味わいながらPLやFMがわいわい食事しているのはいいね。
読了日:6月8日 著者:三田誠,虚淵玄,奈須きのこ,紅玉いづき,しまどりる,成田良悟

読書メーター

ラ////
小////

ノ///
歴//
そ///

ライトノベル 4
小説 4
ノンフィクション 3
歴史 2
その他 3



6月に読んで特に面白かった本
アブサロム、アブサロム!(下)」

アブサロム、アブサロム!(下) (岩波文庫)

アブサロム、アブサロム!(下) (岩波文庫)

 ヘンリーとボンの悲劇の真相がわかる場面の悲しさが美しくていいんだ。
「テロルの決算」
新装版 テロルの決算 (文春文庫)

新装版 テロルの決算 (文春文庫)

 政治的暗殺をした山口二矢は気持ち良いほどの覚悟完了ぶりをしているな。
「クアトロ・ラガッツィ 下」 このくらいボリュームがあって面白い一般向けの歴史の本もっと増えてほしいわ。