7月に読んだ本のまとめ

2015年7月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:5697ページ
ナイス数:395ナイス

ソロモンの歌 (ハヤカワepi文庫)ソロモンの歌 (ハヤカワepi文庫)感想
黒人文学。後半ミルクマンは父が叔母のパイロットがどこかに隠したと思っている金塊を見つけるために、父と叔母の故郷へと赴く。その土地に行くと彼が知らなかった家族についての話を色々と聞くことになる。そのため彼の関心はそちらのほうへと移っていき、期せずしてルーツをたどる旅となっていく。その旅でミルクマンは成長し、心境の変化があった。それによって親戚であり、恋人だったヘイガーと和解してハッピーエンドで終わるのかと思ったが、そのような大団円にいたるためには時すでに遅く、悲劇的なラストとなる。
読了日:7月31日 著者:トニモリスン
新書アフリカ史 (講談社現代新書)新書アフリカ史 (講談社現代新書)感想
アフリカの歴史や地理に疎いので、多くの地図を掲載してくれているのは非常にありがたい。ナイジェリア北部のハサウランド地域には、城壁に囲まれた王都を有し繁栄していた都市国家群(ハウサ七国と庶出七国)があったというのは、ちょっと興味をそそられる。それから、オマーンは東アフリカ沿岸にかなり支配域を広げていて、サイイド・サイード王(在位1805〜56年)は東アフリカの島ザンジバル1833年以降のほとんどの期間を過ごして、『ザンジバルは事実上オマーンの首都となった』(P233)というのは面白い。
読了日:7月31日 著者:
21世紀の自由論―「優しいリアリズム」の時代へ (NHK出版新書 459)21世紀の自由論―「優しいリアリズム」の時代へ (NHK出版新書 459)感想
情報革命は、世界をフラット化して富を分散させていく。そして『伝統的な国家権力構造も解体されていく。大国が世界を支配するような時代は終わり、さまざまな国やグローバル企業、非政府組織(NGO)のような団体まで含めて、ばらばらに権力が分散される時代がやってくる』(P162)。現在はその移行期。『移行期における目標は、私たちの生存そのもの』(P190)。そんな中で求められるのは国民の生存のために現実的な対処をできる現実主義。それも不安などの人の感情という要素を含めて全体のリスクマネジメントを行う優しいリアリズム。
読了日:7月31日 著者:佐々木俊尚
真夜中の子供たち〈上〉 (Hayakawa Novels)真夜中の子供たち〈上〉 (Hayakawa Novels)感想
インド独立の日の午前0時、独立と共に生まれたサリーム・シナイは、語ることのできる持ち時間が残り少ないことを自覚して、最後に自分自身についての話を語ろうとする。彼は祖父の代からの家族の歴史と、独立の日の午前零時から午前1時までに生まれて特別な能力を授かった「真夜中の子供たち」の話を回想し、語る。『常軌を逸したもの、珍妙なものをごく平凡に既述すること、またその逆、すなわち日常的なものを誇張し様式化して解釈する』(P268)文章はすごく好み。また、祖母との意地の張り合いで餓死しかけた祖父の話など挿話も面白い。
読了日:7月31日 著者:サルマン・ラシュディ
隣のアボリジニ 小さな町に暮らす先住民 (ちくま文庫)隣のアボリジニ 小さな町に暮らす先住民 (ちくま文庫)感想
オーストラリアの中部や北部の牧場では、白人たちは自分たちの聖地がある土地から離れたがらなかったアボリジニたちを無給の労働力として長年利用してきた。しかし1967年に「アボリジニを国民として数えない」という憲法の条項を廃止して、翌年には牧畜業でのアボリジニ労働者への法的最低賃金を白人と同額にする法律が施行された。けれど、そのことでアボリジニたちは長年してきた牧場・農場の仕事を失うことになり、『現在の「失業手当で暮らし、朝から酒を飲んでいるアル中のアボリジニ」を生み出す大きな原因となった』(P142)。
読了日:7月30日 著者:上橋菜穂子
代官の日常生活 江戸の中間管理職 (角川ソフィア文庫)代官の日常生活 江戸の中間管理職 (角川ソフィア文庫)感想
代官は恣意的な徴税はできなかったし、裁判権についてもほとんどの場合、奉行所に伺いを立てた後でなければ判決を下せなかった。そのように代官の仕事は『業務のほとんどが奉行(勘定所)へ申し上げよ、届けよと規定されている』(P25)ため、その権限は大きなものではなかった。また、代官は多くの場合『物価上昇などの要因もあり、緊縮予算を組んでもなおかつ赤字財政を余儀なくされて』(P232)いて、代官の役職は借金を多く抱えることもある経済的リスクの多い役職だった。
読了日:7月29日 著者:西沢淳男
折原臨也と、夕焼けを (電撃文庫)折原臨也と、夕焼けを (電撃文庫)感想
「デュラララ」のスピンオフ作品。阿多村家と喜代島家という2つの大きな陣営が支配している街。そこで起きた阿多村家の長男の殺人事件を知って、面白そうになってきたと臨也はその街に赴き、ただでさえ不穏な空気が漂っていたところにさまざまな情報を流して、更に波風をたたせていく。ほどよく外連味の強いキャラが登場したり、最後は閉鎖的な町の空気・二つの名家のために作られた秩序は崩れるなどある意味ハッピーエンドで良かった。あとがきによるとどうやら単発でなく、シリーズになるようだ。
読了日:7月26日 著者:成田良悟
ぼくらの近代建築デラックス! (文春文庫)ぼくらの近代建築デラックス! (文春文庫)感想
2人の作家さんが対談形式で実際に建物を見ながら、その建物を設計した建築家の話などその建物にまつわる話を語る。○○散歩と題して大坂、京都、神戸、横浜、東京(番外編で台湾)の各都市の近代建築を1回の散歩で概ね10個見ている。そのように扱われる建物が多いので、1つの建物に割かれるのは各数ページ。そして小さくても本書で触れている各建物の写真が小さくても載っている(時にはカラーで)のはありがたい。触れられた建物では、伊東忠太設計で1934年に建てられた築地本願寺がインド風の風変わりな建物で面白いな。
読了日:7月25日 著者:万城目学,門井慶喜
小堀遠州茶友録 (中公文庫)小堀遠州茶友録 (中公文庫)感想
大名で有名な茶人である小堀遠州茶の湯の世界で交流のあった人たちを中心とした50人の人物について書かれる。1人1編、数ページずつで各人の人物紹介と茶道との関わりや遠州との交流について書かれている。藤原定家『古来、その筆跡がみごとだとして愛好者が絶えず、定家の日記である『名月記』などは、そのおかげで、やたらにズタズタに切られ、断片が各地に愛蔵されているから復原が至難のわざである。日本には貴族の日記は何百とあるが、その筆跡ゆえに切り取られて散逸したのは定家の『名月期』だけ』(P219)知らなかったが面白い話。
読了日:7月21日 著者:熊倉功夫
新約 とある魔術の禁書目録 (13) (電撃文庫)新約 とある魔術の禁書目録 (13) (電撃文庫)感想
今回上条当麻は魔神の僧正から追い回されて、美琴と共に学園都市中を逃げ回ることになる。そうやって上条たちが魔神である僧正から逃げ回っているときに、右方のフィアンマに自分のところまでおびき寄せれば対処するなどといわれて、上条たちはその地点まで行く。そのように主人公の代わりに敵と対峙したかつての強敵が、一瞬で戦闘シーンも描かれずに敗北して、宙を舞っていたのは笑った。
読了日:7月19日 著者:鎌池和馬
日本残酷物語〈1〉貧しき人々のむれ (平凡社ライブラリー)日本残酷物語〈1〉貧しき人々のむれ (平凡社ライブラリー)感想
民俗学が集めてきた事実から、かつての社会の暗い側面、生活の厳しさなどが見られるさまざまな話を収録した本。海に近い村では船が難破するとその積荷を拾えるので、村民にとって思いがけぬ恵みとなった。そのため海辺の村には、寄物が多いことを祈願することが正月行事などになっていたところがいくつもあった。ある家が犬神とか狐とか憑き物をけしかけたとされてしまったら、その家の人は憑き物につかれた患者の家の前までいって、「うちへ帰ろう」などといって憑き物を連れ戻す演技をしなければならなかったという話、いくつかの地域にある。
読了日:7月17日 著者:宮本常一,山本周五郎,揖西高速,山代巴
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア4 (GA文庫)ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア4 (GA文庫)感想
前半は本編3巻(アイズがベルに修行をつけ、ベルがミノタウロスを倒した)と同期間のアイズらの話が書かれ、後半はロキ・ファミリアのダンジョン深層へのアタックの様子が書かれる。中ボスとして登場した砲竜は、ダンジョンの階層を貫通して攻撃を仕掛けてくるという攻撃だけで強さと脅威が伝わってきていいね。そしてその砲竜戦で、ロキ・ファミリアの初期メンバー3人の中でフィンやリヴェリアと比べると印象が薄かったガレスが凄まじい膂力を発揮して活躍してるのもいいな。ラストでは、ダンジョンで起きていた異変の元凶がついに明らかになる。
読了日:7月15日 著者:大森藤ノ
インディアスの破壊についての簡潔な報告 (岩波文庫)インディアスの破壊についての簡潔な報告 (岩波文庫)感想
スペインがアメリカ大陸を発見して半世紀、征服者たちの残忍非道な行為の実情を王に知ってもらい、征服戦争禁止や実質的な奴隷制度の撤廃を訴えた報告。16世紀後半以降スペインと政治的、宗教的に対立する欧州諸国で数多く訳され、反スペイン感情を高めるのに利用された。そして18世紀後半にはスペインからの独立を目指す中南米諸国でも同様に利用されたが『彼ら自身の先祖に当たる征服者の犯した残虐非道な所業を赤裸々に書き綴り、厳しく断罪したラス・カサスの報告を利用して宗主国からの離反と独立の正当性を訴えた』(P293)とは皮肉。
読了日:7月12日 著者:ラス・カサス
やさしく語る「古事記」 (ベスト新書)やさしく語る「古事記」 (ベスト新書)感想
『かつては、亡くなった人を桜のもとに葬るという慣習もあったようです。』(P88)桜の樹の下には屍体が、という梶井基次郎の小説の言葉は(千数百年前には)本当だったのか。『じつは歌を詠むのは、人間らしさの証明でもあります。神は歌を詠んでいません。歌を詠むと人間くさくなるので、詠まないのです。神は毅然として神らしくあるべきなのです。それでスサノヲノミコトから歌を詠むようになっています。』(P133)人間的なスサノヲ。それからツクヨミは姉がアマテラスで弟がスサノヲだけど、古事記では主役務めるエピソード皆無なのか。
読了日:7月11日 著者:柴田利雄
オーバーロード9 破軍の魔法詠唱者オーバーロード9 破軍の魔法詠唱者感想
今回ナザリックが建国してアインズは魔道王を名乗り、本格的に表舞台に登場することになる。web版にはない、カルネ村が救村の英雄アインズの不利益になるかもしれないことはできないと思い、村人たちが死を覚悟して自分たちよりも圧倒的に強い王国の軍と戦うという展開はいいね。また、ガゼフとアインズの決闘のくだりも面白かった。しかし今回は常になく主人公アインズの行動やセリフに魔王っぽさ、ラスボス感があったな。次回からは完全にweb版とは完全に別物の展開になるようなので、どうなるのか楽しみ。
読了日:7月10日 著者:丸山くがね

読書メーター

ラ////
小//
歴/////5
そ////

日本残酷物語〈1〉貧しき人々のむれ」と「インディアスの破壊についての簡潔な報告」は歴史換算。「やさしく語る古事記」はその他換算。



ライトノベル 4
小説 2
歴史 5
その他 4


7月に読んで特に面白かった本
オーバーロード 9」

 ついに書籍版でも大きな盛り上がりどころであるカッツェの大虐殺が描かれる。そしてアインズとガゼフの話など新たな見せ場もあって良かった。
「真夜中の子供たち〈上〉」
真夜中の子供たち〈上〉 (Hayakawa Novels)

真夜中の子供たち〈上〉 (Hayakawa Novels)

 期待に違わず面白かったし、個人的に好きな語り口。
日本残酷物語〈1〉貧しき人々のむれ」
日本残酷物語1 (平凡社ライブラリー)

日本残酷物語1 (平凡社ライブラリー)

 タイトルどおり暗い話が多いが、それでもいろんなかつての習俗だったり生活の断面を見ることができて面白い。
「21世紀の自由論―「優しいリアリズム」の時代へ」 見事な現状分析。そして処方箋が理想を唱えることではなく、現実主義という結論も納得できる。