8月に読んだ本のまとめ

2015年8月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:5191ページ
ナイス数:340ナイス

漂流するトルコ―続「トルコのもう一つの顔」漂流するトルコ―続「トルコのもう一つの顔」感想
前作「トルコのもう一つの顔」でトルコに入国することができなくなってから、94年に再びトルコに入れるようになり、03年に再入国禁止処分とされるまでが書かれてる。期待に違わぬ面白さ。著者は正確な事情を知る人がろくにいないトルコ国内の諸言語について詳しく知っているため、トルコ政府から警戒されて、フランスの情報機関から接触を受けり。そうしたノンフィクションなのに複数の国の機関が接触してくるというスケールの大きさはそれだけで楽しい。また、第3章では前作を書いて、出版するまでの話が書かれていてそれも興味深い。
読了日:8月31日 著者:小島剛一
四字熟語・成句辞典 (講談社学術文庫)四字熟語・成句辞典 (講談社学術文庫)感想
普段目にしない表現も色々とあって結構面白かった。火中の栗を拾う、ラ・フォンテーヌの『寓話』から来た表現。『人を玩べば徳を喪い、物を玩べば志を喪う』(P121)この言葉は格好良くてちょっといいね。「小春日和」は春の天気ではなく『陰暦十月ごろの春を思わせるようなうららかな天気』(P199)を表現する言葉。『所向敵無[むかうところ てきなし](中略)出典 三国時代・蜀・諸葛亮「心書」』(P480)この言葉の出典って孔明だったのか。
読了日:8月31日 著者:竹田晃
真夜中の子供たち〈下〉 (Hayakawa Novels)真夜中の子供たち〈下〉 (Hayakawa Novels)感想
インドの現代史と運命的に結び付けられたサリームが語る自身の人生や彼の家族の歴史、幻想的な物語。マジックリアリズムだけど、ラテンアメリカのものとはちょっと違った感じでそれも面白かった。そして単純に物語や挿話が面白かったので楽しめた。あと、作中ではインド・パキスタンバングラデシュで実際に起きた大きな事件が色々と物語にでてくるので、そうした国々の現代史についてちょっと興味がわいた。
読了日:8月31日 著者:サルマン・ラシュディ
古代ローマの生活 (角川ソフィア文庫)古代ローマの生活 (角川ソフィア文庫)感想
古代ローマ人の平均寿命は男22.8歳、女25.0歳。しかし1歳になるまでに3分の1ほどが死亡しているので、1歳を迎えられた子供の平均寿命は男35.1歳、女35.9歳にまで上がる。また35歳まで生きる人が男女ともおおよそ約3分の1(1歳まで生きていた子供のうちの約半分)で、60歳を迎えられる人が男で8分の1(1歳を迎えたうちの約5分の1)、女で6分の1(同約4分の1)。そうした当時ある歳まで10万人中何人くらいが生きていたのかなどが書かれている表(75ページ)を見るのはちょっと面白い。
読了日:8月31日 著者:樋脇博敏
ジヴェルニーの食卓 (集英社文庫)ジヴェルニーの食卓 (集英社文庫)感想
短編集。各短編では、19世紀から20世紀のフランスの画家たち(「うつくしい墓」ではマティス、「エトワール」ではドガ、「タンギー爺さん」ではセザンヌ、「ジヴェルニーの食卓」ではモネ)のことが書かれる。どの短編も画家ではなく、その画家の近くにいた人が語り手となっている。語り手たちがその画家のことを敬愛していて、その画家の想い出をしみじみと思い返している感じなのはいいね。
読了日:8月31日 著者:原田マハ
完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの生涯 (文春文庫)完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの生涯 (文春文庫)感想
アメリカの伝説的なチェスプレイヤーであるボビー・フィッシャーの伝記。彼は1972年に第二次世界大戦以来初の非ソ連人のチェス世界チャンピオンとなって英雄的存在となったが、防衛戦に出ずにタイトルを失い、その後長年以上表舞台から姿を消した。そうして一線を退いた後の後半生は、知らないことだらけだったので関心を持って読めた。優れたチェスの才とチェスに対する情熱を持つフィッシャーを見て、幾人ものチェスプレイヤーが喜んであれこれと彼の面倒をみていたことなどが書かれている少年時代のエピソードが楽しい。
読了日:8月30日 著者:フランクブレイディー
聖女の遺骨求む ―修道士カドフェルシリーズ(1) (光文社文庫)聖女の遺骨求む ―修道士カドフェルシリーズ(1) (光文社文庫)感想
12世紀の英国を舞台にした推理小説カドフェルは殺したものが遺体に触れると告発の血で死装束が赤く染まるという俗信から、怪しい者に遺体を触らせて動揺を見る。そうした調査(かまかけ)で、その時代ならではのものを使うというのはちょっといいね。しかし、ラストでカドフェルが聖女の遺骨を渡したくない村人たちに味方して、骨を入れ替えてその偽物を本物として持ちかえるというのは、何の関係もない他の修道士や何も知らない信徒を騙して愚弄しているようで、ちょっと後味悪くて苦手。
読了日:8月29日 著者:エリスピーターズ
平安朝の生活と文学 (ちくま学芸文庫)平安朝の生活と文学 (ちくま学芸文庫)感想
平安時代の貴族女性に関係のある場所や制度、その生活についてが書かれている。平安時代の「餅」は、もち米と麦粉などを合わせて作ったもので現在の餅とは違う。お歯黒は、上代あるいは室町時代以降は結婚した婦人の証としてするものだったが、『平安時代中期には結婚すると否とにかかわらず、成年に達した、もしくは成年に近い女子の一種の容飾となっていた』。そのため『『源氏物語』の書かれた時代には、少なくとも十歳くらいになれば、眉をぬき、お歯黒をした』(P214)。
読了日:8月27日 著者:池田亀鑑
RPF レッドドラゴン 6 第六夜(上) 夢幻回廊 (星海社文庫)RPF レッドドラゴン 6 第六夜(上) 夢幻回廊 (星海社文庫)感想
予言通りに出現した<契りの城>から出現したモンスター相手に、城を目指す各勢力は戦うことになる。そこで大規模戦闘ルールでの戦いが用いられたが面白そうなルールなので、その詳しいルールをちょっと知りたくなる。その戦闘で各勢力は少数の精鋭を送り込み、その者たちと赤の竜とで戦うことになるというところで下巻に続く。しかし最終決戦でラスボス(赤の竜)を前にして、赤の竜を倒した者には得られるもの(各人によって違う)があるということもあり、ラスボスを倒すことを目指す他の勢力たちとも争うという状況はちょっと珍しいし、面白い。
読了日:8月26日 著者:三田誠,虚淵玄,奈須きのこ,紅玉いづき,しまどりる,成田良悟
レトリック認識 (講談社学術文庫)レトリック認識 (講談社学術文庫)感想
「レトリック感覚」と同じく章毎に一つのレトリック(≪ことばのあや≫)の説明がされている。各レトリックの定義や、そのレトリックがどのように使われるかという話は面白い。『型としてのさまざまの≪あや≫が、尋常の言葉づかいではなかなかとらえにくい微妙な認識をかろうじて造形するたよりになる、その反面、途方もない冗談の形式ともなる。』。その二つは全く違うように見えて『名状しがたい認識に形を与えようとする欲求も、また、突拍子もない冗談も、いずれも常識的な言葉づかいではものたりないという共通性をもつ』(P150-1)。
読了日:8月23日 著者:佐藤信夫
ソードアート・オンライン (16) アリシゼーション・エクスプローディング (電撃文庫)ソードアート・オンライン (16) アリシゼーション・エクスプローディング (電撃文庫)感想
アンダーワールドでは整合騎士ら人界陣営と暗黒神ベクタ(ガブリエル)率いるダークテリトリー陣営との決戦がはじまる。今回は色々な整合騎士やそれまで書かれていなかったダークテリトリー側の将の描写があっていいね。特にダークテリトリー側の各種族の長の考えていることの違いがわかるのが面白い。しかしそのようなダークテリトリー側について書かれたものを読み、一方的にダークテリトリー側が損害を受けている様子を見ると、敵であるガブリエルに勝ってほしいわけではないが、もうちょっと彼らにも見せ場が欲しかったなという気持ちになる。
読了日:8月20日 著者:川原礫
耳鼻削ぎの日本史 (歴史新書y)耳鼻削ぎの日本史 (歴史新書y)感想
刑罰としての耳鼻削ぎ。耳鼻削ぎは女性や僧侶や乞食が処刑されるところを死一等を減ずる際に行われた宥免措置、人命救済措置だった。しかし豊臣秀吉の時代から女性に対する刑でも人命救済措置でもなくなる。例えば耳鼻削ぎの後に処刑するなど肉体的・精神的苦痛を与えるための耳鼻削ぎ、あるいは「見せしめ」として耳鼻削ぎが多用された。江戸時代前期もその傾向は受け継がれ、そして耳鼻削ぎは中世よりも多くなった。しかしどの藩も概ね元禄時代(17世紀末)までに耳鼻削ぎは廃止する。耳鼻削ぎを廃止した幕府はその代わりに入れ墨刑を導入した。
読了日:8月19日 著者:清水克行
魔法科高校の劣等生 (17) 師族会議編 (上) (電撃文庫)魔法科高校の劣等生 (17) 師族会議編 (上) (電撃文庫)感想
今回は、達也と深雪の二人の婚約が起こした周囲への波紋(二人が四葉だったということ、「従兄妹」だったということや婚約したことを知った周囲の反応)、そしてそれが大きな議題となった師族会議の様子が書かれる。そのため今回は特に達也と深雪の活躍はなく、アクションシーンも少なめ。友人たちは四葉であることや二人の婚約を知ったばかりは少しぎこちなかったけど、数日で意識していつも通りの対応に戻してくれて、無事にいつも通りの関係におさまって良かった。そして師族会議では四葉真夜が活躍。
読了日:8月18日 著者:佐島勤
家郷の訓 (岩波文庫 青 164-2)家郷の訓 (岩波文庫 青 164-2)感想
著者の故郷である山口県大島という島にある白木村での人々の生活や習俗、子供への教育や躾などといったその村の暮らしについて全般的に語られる。自分の体験や家族の話などの多くの挿話があり、人々の生活のにおいが感じられるのはいいね。こういったある一つの場所での生活の全体がわかり、細部もしっかりと書かれているものはそれだけでとても面白いし好き。
読了日:8月14日 著者:宮本常一
異世界食堂 2 (ヒーロー文庫)異世界食堂 2 (ヒーロー文庫)感想
「ハムカツ」木こりの一家が月に一度の家族4人の楽しみとして異世界食堂に来ているというのはほほえましくて好きだ。「クレープ」フェアリーたちの国に突如出現した異世界食堂に通じる扉に警戒して、国の守りとして貴重なアイテムを使って最強の守護者である草花のゴーレムを作ったが、最終的にそのゴーレムはフェアリーたちが異世界食堂に行く際の扉を開く係りとなったというのは笑う。「オードブル」さまざまな出自の冒険者一行がその盛り合わせの中から好物を見出して、その好物に故郷を思い出したりして料理を堪能している姿がいいね。
読了日:8月13日 著者:犬塚惇平

読書メーター

ラ////
小///
ノ//
歴///
そ///

レッドドラゴン 6 上」はライトノベル換算。



ライトノベル 4
小説 3
ノンフィクション 2
歴史 3
その他 3


 8月に読んだ本の感想が中々書き終わらなかった(最近読んだ本も多くないのに、それが常態化してしまっている)ので既に月の半分だけど今更ながら先月読んだもののまとめ。


8月に読んで特に面白かった本
「漂流するトルコ―続「トルコのもう一つの顔」」

漂流するトルコ―続「トルコのもう一つの顔」

漂流するトルコ―続「トルコのもう一つの顔」

 前作は出版社からの要請で抑え目に書きなおしたようだが、今回はそういうのがない(?)のか、著者や他の人の個性がより鮮明に描かれている。そうしたところは前作よりもいいね。
「レトリック認識」
レトリック認識 (講談社学術文庫)

レトリック認識 (講談社学術文庫)

 同著者の「レトリック感覚」もそうだが、一つ一つのレトリックについての説明見るのは色々と面白い。
「家郷の訓」
家郷の訓 (岩波文庫 青 164-2)

家郷の訓 (岩波文庫 青 164-2)

 こうしたある小さな世界の生活が綿密に書かれた本って面白い。