9月に読んだ本のまとめ

2015年9月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:4700ページ
ナイス数:231ナイス

移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活 (講談社文庫)移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活 (講談社文庫)感想
文庫化再読。「おわりに」にも書いてあるように、『日本に移り住んだ外国人を食とコミュニティから見る』(P370)という本で、日本に根を下ろして暮らしている外国の人たちの普通の生活を垣間見ることができる。「文庫版へのあとがき」では、本書で取材した人々の後日談(現在)が書かれている。こうした少し経った後のことが書かれるのは、小説でもノンフィクションでもなんか好き。
読了日:9月30日 著者:高野秀行
あの戦争と日本人 (文春文庫)あの戦争と日本人 (文春文庫)感想
日中戦争のとき総帥部は早期講和を望んで説得しようとするも、近衛内閣に総帥部が反対するならば総辞職すると脅される。統帥部が内閣を倒したことになるのは避けたいので、最後の手段として、統帥部は統帥権の独立の妙を使って帷幄上奏で昭和天皇に停戦したほうがいいことを述べようとするも直前に近衛の上奏で内閣の方針が認可されて間に合わなかった。統帥権は魔法の杖として使われたイメージがあるが『この一例でもわかるとおり、軍部は面倒なことが起こったら一刀両断的に、統帥権を「魔法の杖」と必ずしも振り回さなかった』(P125)。
読了日:9月30日 著者:半藤一利
百代の過客 〈続〉 日記にみる日本人 (講談社学術文庫)百代の過客 〈続〉 日記にみる日本人 (講談社学術文庫)感想
主に明治期の色々な日記が扱われている。そして今回は『日本人が、長期の鎖国の後で、日本人以外の民族と、初めて接触した時の体験』(P754)という統一的テーマがある。個人的には『桟雲峡雨日記』のような明治人の中国旅行記や、幕末に北方を旅した松浦武四郎旅行記の話が特に面白かった。あと幕末から明治にかけての女性の日記である『小梅日記』は、身の回りの日常とかあるいは当時起きた大事件についての風聞などについて書かれているのは面白い。それに、こうしたその当時の普通の人の暮らしを感じさせてくれるものは結構好き。
読了日:9月30日 著者:ドナルド・キーン
正統と異端―ヨーロッパ精神の底流 (中公新書 (57))正統と異端―ヨーロッパ精神の底流 (中公新書 (57))感想
11世紀末に始まる道徳的厳格主義と使徒的清貧生活の実践を目指す民衆による宗教運動でワルド派のような異端やフランシスコ会などが生まれた。そこで異端とされた人たちは『本来の異端であるカタリ派さえ、主観的には真実のキリスト者たろうとしていた人々』(P180)。カトリック教会と異端とは秘蹟論に明確に違いがあることが多い。カトリックの理論では腐敗聖職者によって行われた秘蹟を不法だが有効としているが、異端は無効と考える。教会が11世紀のグレゴリウス改革で異端的な立場を取ったことがそうした宗教運動が隆盛する契機となる。
読了日:9月30日 著者:堀米庸三
火星の人 (ハヤカワ文庫SF)火星の人 (ハヤカワ文庫SF)感想
不運が重なって火星に取り残された宇宙飛行士ワトニーが、火星に次の宇宙船が来るまで生き延びるため奮闘する物語。彼は食料が足りないから自分の排泄物と火星の土を混ぜてバクテリアを繁殖させてジャガイモを育てたり、それを育てる水を確保するために猛毒のヒドラジンを燃やして分解して水を作っている。そのように主人公が火星に残された機材や備品を利用し、さまざまな知識を生かして、創意工夫やチャレンジしているのを見るのは面白いし、わくわくする。また、彼の生存を知った地球側の対応や米国内の反応なども書かれていて、それらも面白い。
読了日:9月30日 著者:アンディ・ウィアー
薔薇の名前〈上〉薔薇の名前〈上〉感想
舞台は1327年イタリア。対立する教皇と皇帝の両陣営が中立地の修道院で交渉を行うために、その修道院にウィリアム師とその弟子のアドソ(彼が後年に手記としてこの本を書く)は赴いた。しかし、最初にウィリアム師が見事な推理力を披露して、その推理力と前歴から修道院長は数日前に発生した事件の調査を依頼するというような、思っていたよりも王道ミステリーな展開でちょっと驚いた。ウィリアム師のキャラも好きだし、事件の中心にある迷路のようなつくりで、幻覚を見せる物質が夜通し燃えている部屋がある文書館には好奇心がそそられる。
読了日:9月30日 著者:ウンベルトエーコ
万国奇人博覧館 (ちくま文庫)万国奇人博覧館 (ちくま文庫)感想
さまざまな風変わりな人物の話や奇妙な事件の話を集めた本。印象的な挿話や描写が多くあって面白い。物忘れの酷いある男は毎年自分に送るクリスマスプレゼントを買って、それらをクリスマスに開けて楽しんでいたという話はちょっと面白い。「スールック」19世紀半ばのハイチの皇帝。彼は徹夜で作られたボール紙製の王冠で戴冠し、高官にも爵位を与えたが、それは次のような名前だった『穴ぼこ菓子公爵、レモネード公爵殿下、金ぴかのラザロ大公、イタイイタイ殿下、マーマレード殿下、浣腸侯爵、小穴男爵、汚穴男爵等々』(P353)。
読了日:9月30日 著者:J.‐C.カリエール,G.ベシュテル
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか8 (GA文庫)ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか8 (GA文庫)感想
短編集。ベルもどの短編にも登場しているが、今回は各章がそれぞれヘスティア・ファミリアの面々やベルを担当するギルドの受付エイナなど、彼以外の主要キャラを主役にした話となっている。「六章 とある女神の愛歌」では迷宮都市オラリオの外の隠れ里のような村が出てきて、その村では非常に恐ろしいモンスターである黒竜の鱗があることで他のモンスターが寄ってこないのでそれを祀っていることが書かれる。そのように迷宮都市の外で独自の風習があることが書かれているのはいいね。
読了日:9月30日 著者:大森藤ノ
バウルの歌を探しに バングラデシュの喧騒に紛れ込んだ彷徨の記録 (幻冬舎文庫)バウルの歌を探しに バングラデシュの喧騒に紛れ込んだ彷徨の記録 (幻冬舎文庫)感想
バングラディシュとインドにいるバウル。独自の思想を持ち、移動生活を送る彼らの歌はユネスコ無形文化遺産に登録されている。神秘的で吟遊詩人のような存在で、著者が事前調査をしていても謎めいた印象が強くなるバウル。それがバングラディシュで上手くバウルたちとの出会いが続き、彼らから色々と話を聞くことができたことで、事前の取材ではわからなかった知られざる部分が段々とわかっていくのが楽しい。
読了日:9月27日 著者:川内有緒
RPF レッドドラゴン 6 第六夜(下) 果ての果て (星海社文庫)RPF レッドドラゴン 6 第六夜(下) 果ての果て (星海社文庫)感想
最終巻。今回は丸々一冊最終決戦、赤の竜との戦いと各勢力間での戦いが描かれる。その戦いは忌ブキは自分の身を削る技を使って、彼にそんな威力の攻撃ができると思わなかったダメージで赤の竜に最後の一撃を食らわせて終わる。物語が終わってみるとこの場面だけでなく、物語全体を見ても忌ブキがとても主人公そてたな。未熟だったが赤の竜との縁があった少年忌ブキが物語の中で成長して、赤の竜の力を継ぐ。そして少年は王となるという王道だったし、物語としてもきれいにまとまって終わって良かった。
読了日:9月15日 著者:三田誠,虚淵玄,奈須きのこ,紅玉いづき,しまどりる,成田良悟

読書メーター


ラ//
小//
ノ//
歴/
思/
そ//

ライトノベル 2
小説 2
ノンフィクション 2
歴史 1
思想・宗教 1
その他 2

 9月はあまり本は読めなかった(今月は更にだが)し、感想を書くのが遅れに遅れてほぼ一月遅れでようやく感想を書いたので、今更ながら9月に読んだものをまとめられる(苦笑)。

9月に読んで特に面白かった本
「火星の人」

火星の人 (ハヤカワ文庫SF)

火星の人 (ハヤカワ文庫SF)

 火星を舞台にしたリアルなSFサバイバル。主人公の創意工夫が楽しい。
「バウルの歌を探しに」 バングラディシュとその国の神秘的な現代の吟遊詩人バウルについて書いた紀行文。
「万国奇人博覧館」
万国奇人博覧館 (ちくま文庫)

万国奇人博覧館 (ちくま文庫)

 興味深いエピソードが多々あって面白かった。