10月に読んだ本まとめ

マージナル・オペレーション 5 芝村裕吏

傭兵であるアラタたちの部隊は上手くやりすぎた結果、彼らのみで彼らの十数倍にあたる14万の正規軍相手と戦う状況に追い込まれる。そんな中でアラタが凄いことをしているというのはわかるが、アラタ視点だと昂ぶらずにいつも通りの平熱で冷静に対処しているから、あっさりと終わった印象。ラストでアラタはジブリールの思いをほんの少し受け入れて、二人の関係はわずかに進展したけど、最後なんだしもっとしっかりとした約束を交わすとかしてほしかったな。

修道院―祈り・禁欲・労働の源流  今野國雄

修道院―祈り・禁欲・労働の源流 (1981年) (岩波新書)

修道院―祈り・禁欲・労働の源流 (1981年) (岩波新書)

聖ベネディクト会則は『後にほとんど全西欧の修道院で、基本原則とて遵奉された』が、基本原則とて遵奉されるようになるのは『彼の死後数百年を経た後のことであって、その生前も死後暫くの間も、彼の名を知るものは極めて少なかった。』(P73) 9世紀半ばからの一世紀、修道院は規律が弛緩し、世俗化していた。初期のクリュニー修道院長は聖ベネディクト会則を無条件に実行するという改革をしたことでクリュニー修道院が広まる。しかし時を経るうちにクリュニーも世俗化。そのため再び会則を厳格に実践しようとするシトー派が出てくる。

理想のヒモ生活 7  渡辺恒彦

ジー辺境伯の娘とプジョル将軍の結婚式でガジー辺境伯領へと向かった善治郎とフレア姫。その結婚式には隣国の有名な将軍も出席して、その隣国の客人の一人が小さなトラブルが起こして、それで揉め事になる。女王アウラからの情報でその小さな事件が下手をすると大きな問題へと発展しかねないことに気づいてしまった善治郎は、万一でもそうした大きな問題に発展しないため、不本意ながらその問題に対処することになる。王宮での日常的な話も好きだけど、5巻や今回のような主人公が不測の事態に対処するために動いて活躍する話もいいよね。

マンスフィールド・パーク  ジェイン・オースティン

マンスフィールド・パーク (ちくま文庫)

マンスフィールド・パーク (ちくま文庫)

恋愛小説。訳者あとがきにも『オースティンの小説は、あらすじだけ聞くとあまり面白くなさそうなのに、読み出すと面白くて途中でやめられないとよく言われる』(P735)と書いてあるが、まさにその通りで、そんなに劇的な出来事がある話でもないのだが、さくさくと読み進められるし、面白い。それから物語の雰囲気が明るくて、ハッピーエンドで終わるだろうと安心して読みすすめられるのもいい。

城下の人―石光真清の手記 1  石光真清

城下の人―石光真清の手記 1 (中公文庫)

城下の人―石光真清の手記 1 (中公文庫)

明治元年熊本藩の武士の家に生まれた石光真清の自伝的な本。子供時代に見聞した神風連の乱西南戦争についての話など興味深いエピソードが多い。そして戦地となった熊本に住む人々の体験、戦時の日常なんかを見ることができるのも魅力的。西南戦争の時に友人と薩摩軍が陣取る祇園山へ戦争見物に行ったが、見物に来たといって薩摩兵からおにぎりをもらって、そのまま大砲陣地まで見て、その後も毎日のように祇園山へ出入りして薩摩兵から可愛がられたというエピソードが特に好き。

薔薇の名前〈下〉  ウンベルトエーコ

薔薇の名前〈下〉

薔薇の名前〈下〉

ウィリアムは犯人がいるであろう場所まで行くための秘密の通路の開け方がわからなかったが、アドソがふいに口にした言葉からその通路の開け方を閃く。偶然でも何でも、こうした助手役が名探偵の大きな助けになるシーンというのは好きだな。秘密通路から隠された場所に行くという展開はわくわく感があるし、本格ミステリーのような複雑でトリッキーな真相なのもいいね。そして探偵役のウィリアムと犯人との対話も面白かった。

アクセル・ワールド (19) ―暗黒星雲の引力― (電撃文庫)  川原礫

元四元素のグラファイト・エッジからブレイン・バースト世界ができるまでの話の一部が語られる。そして前回から引き続き白の王・加速研究会に向けてレギオンメンバーが増えていき、そして今回は主要キャラの成長を感じさせるようなシーンも多いので、物語の終わりも近くなってきていることを感じる。あとがきによると、時系列的には<白のレギオン>編よりも未来の話がアニメになるようなのでいったいどんな話になるのかちょっと気になる。

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第二部「神殿の巫女見習いI」 香月美夜

今回でフランやギルが初登場。フランは有能で何でもまかせられる安心感のある人だけど、彼も神殿育ちだから、マインがフランとギルに外出用の服を渡したときに、ギルと同じようにフランもプレゼント貰ったことがないから『戸惑いと喜びと期待に満ちた顔で、丁寧に包みを開ける』(P145)と子供であるギルと同じように彼が嬉しそうにしている姿を見るとなんだか心が和む。そして料理のシーンはweb版で何度か読み直したけどやっぱり好きだな。



ライトノベル 4
小説 2 
ノンフィクション 1
思想・宗教 1

 11月のまとめを貼ろうと思ったら、10月の分をまとめ忘れていたことに気づき、ぺたぺたと作成。読んだ本の量が少なかったから手間がなかったけど、その手間の少なさで最近読書量が少なくなっていることを改めて実感する。

10月に読んで特に面白かった本
「城下の人―石光真清の手記 1」

城下の人―石光真清の手記 1 (中公文庫)

城下の人―石光真清の手記 1 (中公文庫)

 少年時代、西南戦争で戦地になった熊本の話などが抜群に面白いし興味深い。
マンスフィールド・パーク」
マンスフィールド・パーク (ちくま文庫)

マンスフィールド・パーク (ちくま文庫)

 オースティンの読みやすさ、そして大きな事件を起こさなくてもぐいぐいと読ませる力はすごいわ。
理想のヒモ生活 7」 こうして不測の事態でベターな対処する善治郎の姿はいいね。