1月に読んだ本まとめ

2016年1月の読書メーター
読んだ本の数:13冊
読んだページ数:4530ページ
ナイス数:371ナイス

黄金の王 白銀の王 (角川文庫)黄金の王 白銀の王 (角川文庫)感想
鳳穐と旺廈という二つに分かれた王統とその配下が互いに憎しみあっている島国の翠。翠では一方が政権とると他方を弾圧し、クーデターで政権が変わると弾圧の構図が逆転するということが百年続いていた。そんな時に鳳穐の若き王穭は、翠のためにもその長く不毛な争いを止めるため、旺廈の頭領薫衣を説得する。翠のために協力しあうことになった二人は互いを唯一の理解者として、既成事実を積み重ねて徐々に方向転換をして融和をなしとげようとする。二人が目的のために多くの感情と身を犠牲にして歩んだ、融和への数十年の長く困難な道程の物語。
読了日:1月31日 著者:沢村凜
神道とは何か - 神と仏の日本史 (中公新書)神道とは何か - 神と仏の日本史 (中公新書)感想
密教の浸透で東大寺大仏が大日如来大日如来=天照とされたことで僧侶の伊勢神宮への参宮が盛んになり、中世には伊勢神宮は日本仏教の聖地のひとつとなる。鎌倉期には神仏習合密教的な両部・伊勢神道が生まれ、そこから吉田神道が生まれた。吉田神道神道における密教であり、『天上と地上と人体の内部に神(霊・心)がそれぞれ存在して宇宙全体に遍満しているとする一種の汎神論』(P238)。仏教から自立した神道は近世以降に固有宗教として形成されたが、『<固有>なるものの多くは、実は中世神道説の世界から起こったもの』(P283)
読了日:1月31日 著者:伊藤聡
ゲルマニア (集英社文庫)ゲルマニア (集英社文庫)感想
1944年5月のベルリンで、主人公のユダヤ人の元警官オッペンハイマーは過去の異常連続殺人事件の捜査経験をかわれて、フォーグラーSS大尉から命じられて現在の異常連続殺人の捜査をすることになる。大戦末期のドイツの社会風俗が色々と垣間見えるサスペンス小説。フォーグラーはオッペンハイマーのことを何くれとなくフォローしたり、気を使っているそのぶっきらぼうな親切さがいいね。それから空襲によって二人が地下室に閉じ込められたシーンもいい。
読了日:1月31日 著者:ハラルトギルバース
中世騎士物語 (岩波文庫)中世騎士物語 (岩波文庫)感想
初めに物語の舞台となる時代の説明とアーサー王登場までの「英国の神話的歴史」が簡潔に書かれ、その後にアーサー王と円卓の騎士のエピソードと中世ウェールズの物語集マビノジョンのエピソードが紹介される。最後の「英国民族の英雄伝説」でロビンフッドなど有名な英国の英雄数名が短いページでの紹介される。僧職者(クラーク)という言葉は後に『文字を読むことができさえすれば誰でもクラークの仲間に数えられ、「僧侶の恩典」を蒙った。それは何か罪を犯した場合に都から追放されたりその他の形で受けるべき罰を免除されたりする』(P18)。
読了日:1月31日 著者:ブルフィンチ
ドウルマスターズ (3) (電撃文庫)ドウルマスターズ (3) (電撃文庫)感想
主人公たちが地上での演習中にゲノムスの空宙母艦が潜んでいることが判明して、捜索を命じられる。その際にゲノムスとの戦闘が起こって、そこで主人公らと親しい主要キャラが死亡することになる。そのことで玲音は訓練校を辞め、原隊へと復帰する。主人公姉弟も訓練校から離れてパテル技術少佐の下で別のカリキュラムを行うことになる。これで前巻で死亡を装いゲノムスの下に行った龍一を合わせて全員が訓練校を去る。さて、今後それぞれ別の立場となる訓練校同期のドウルマスター4人の関係性はどのように変化していくことになるのかな。
読了日:1月30日 著者:佐島勤
講義ライブ だから仏教は面白い! (講談社+α文庫)講義ライブ だから仏教は面白い! (講談社+α文庫)感想
人生は一度きりという考えだと、一度の人生で快・不快のバランスシートがプラスで終われば良いと思う。しかし仏教・インド思想の輪廻転生の世界観だとそうした生は億・京・垓と数え切れないほどの数を終りなく繰り返すことになる。いわばRPGのレベル上げをやっていると途中で電源を落とされて、次の世界でまた最初からというの延々と繰り返さなければいけない状態。だからこそ解脱して輪廻転生から抜け出すことを求める。
読了日:1月29日 著者:魚川祐司
予告された殺人の記録 (新潮文庫)予告された殺人の記録 (新潮文庫)感想
再々読。街をあげての祝祭となったバヤルド・サン・ロマンとアンヘラ・ビカリオの盛大な結婚式の翌朝サンティアゴ・ナサールは殺された。結婚式当夜アンヘラ・ビカリオは実家へと送り返される。彼女が密通していた相手はサンティアゴ・ナサールと述べたことで、ビカリオ兄弟は名誉回復のための殺人を決意する。しかし兄弟は殺人が実現するよりも、本気で阻まれることで義務を果たしたことになることを望んでいた。しかし幾重にも偶然が重なって、その殺人はなされてしまう。その悲劇の事件の前夜から当日にかけての出来事が詳細に書かれた物語。
読了日:1月23日 著者:G.ガルシア=マルケス
剃髪式 (フラバル・コレクション)剃髪式 (フラバル・コレクション)感想
著者が生まれる前の若い頃の両親と叔父を主役とした小説。1920年代初めのチェコスロヴァキアの小さな町ヌィンブルクでの両親の生活や、ラジオや車などの新しい文物や流行が続々と到来する時代が母マリシュカの視点でいきいきと明るく書かれている。7章のマリシュカの父は激情家だったので、彼女の母はそれを発散させるために古い棚を買っておいて、父が激怒するとすかさず斧を渡してその棚を壊させて発散させていた(そして壊れたものは薪として使っていた)という話は面白い。
読了日:1月22日 著者:ボフミル・フラバル
シャーマニズム 下 (ちくま学芸文庫)シャーマニズム 下 (ちくま学芸文庫)感想
下巻では主に世界各地のシャーマニズムシャーマニズム的なものについて書かれる。『多くの「未開」の部族は呪術的宗教的力を「燃えている」と想像し、もしくはそれを「熱」、「燃焼」、「ひじょうな熱さ」といった意味の語であらわす。』(P291)ヒンドゥー教でも力ある神々に同様の表現をする。鍛冶屋の『「火を統御する力」と、とくに金属の呪術とのゆえに、いたるところで、鍛冶屋は恐るべき妖術師としての評価をあたえられてきた。だから彼らに対しては矛盾する態度が取られる。彼らは軽蔑されると同時に畏敬される。』(P288-9)
読了日:1月21日 著者:M=エリアーデ
双生児(上) (ハヤカワ文庫FT)双生児(上) (ハヤカワ文庫FT)感想
1941年5月10日にヘスによる英独講和が実現した世界で、歴史ノンフィクション作家グラットンはその戦争中の謎めいた人物ソウヤーを調べていた。そんな時に本人が晩年に書いた回想録を渡されて、そこには現実通りの戦争の展開が記されていた。その後、ソウヤーが操縦する爆撃機の搭乗員だった人からの手紙で1941年5月10日の爆撃機の墜落でソウヤーは死んだことが伝えられる。どうやらその事故が分岐になっているようだ。ソウヤーの双子という設定やチャーチルやヘスの替え玉の話などがどう物語に関わってくるのかわからないので楽しみ。
読了日:1月20日 著者:クリストファー・プリースト
江戸考証読本 (1) 将軍様と町人編 (新人物文庫)江戸考証読本 (1) 将軍様と町人編 (新人物文庫)感想
1867年京都で水戸藩士が殺された事件。1870年(明治3年)に殺された男の二人の息子が仇討ちを果たして、禅正台に自首するが、『明らかに仇討ちと認められ、釈放されると同時に、七之允の孝心賞すべしとして、後に司法省出仕を命じられている。』(P72)年号が変わってたちどころに全てが変わるわけではないとはいえ、それでも仇討ちによって司法省に入ったというのは面白い話。それから豪商鴻池が山中鹿之介の子供からはじまったというのも面白い。
読了日:1月17日 著者:
ドリアン・グレイの肖像 (光文社古典新訳文庫)ドリアン・グレイの肖像 (光文社古典新訳文庫)感想
画家のバジルは、友人である穢れ無き美少年ドリアン・グレイをモデルに絵画を描き、二人は穏やかに日々を過ごしていた。しかしドリアンがバジルの友人であるヘンリー卿と会うと二人は互いに惹かれ合い、不道徳的だが軽妙洒脱な唯美主義者ヘンリーの影響を受けてドリアンは堕落していく。そしてバジルが描いて本人にプレゼントしたドリアンの肖像画は『いつまでも若さを失わないのが僕のほうで、この絵が老いていけばいいのに!』という言葉通りに自身は歳月で変わらずに、絵が代わりに年月と自身の堕落によって醜悪に変化していくことになる。
読了日:1月16日 著者:ワイルド
ビヨンド・エジソン (ポプラ文庫)ビヨンド・エジソン (ポプラ文庫)感想
国内のさまざまな分野の科学者12人に対するインタビュー集。『科学者としての自分に影響を与えたと思う伝記や評伝を一冊挙げ、それを切り口に現在に至るまでの研究生活を』(P4)語ってもらったもの。一人あたり20ページほどの短い分量で簡潔に書かれている。「第六章 言葉の不思議を探求する」音楽の絶対音感相対音感のようなものが音声言語にもある。例えば自閉症の人の中には、父親の「おはよう」と母親の「おはよう」を同じ「おはよう」と認識できない音声の究極の絶対音感者がいる。
読了日:1月9日 著者:最相葉月

読書メーター

ラ/
小/////5/
歴/
思///
そ//


ライトノベル 1
小説 6 
歴史 1
思想・宗教 3
その他 2




1月に読んで特に特に面白かった本
予告された殺人の記録

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

 何度読み返しても面白い。それに完成度の高さを感じる。
「黄金の王 白銀の王」
黄金の王 白銀の王 (角川文庫)

黄金の王 白銀の王 (角川文庫)

 感情を越える難しさ、そしてその困難な共闘の軌跡。相対立していた二人の非凡な指導者が協力して、彼らに率いられたとしても一足飛びに全てが達成されるわけではないという現実的なところや、理想を勝ち取るためには冷徹なほどの現実主義で粘り強くことにあたることが必要なことが書かれているもいいね。