3月に読んだ本まとめ

2016年3月の読書メーター
読んだ本の数:16冊
読んだページ数:3670ページ
ナイス数:372ナイス

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)感想
主人公であるキャシー・Hが自分たちが育ったヘールシャムでの出来事や、同じくヘールシャムで育った二人の親友ルースとトミーとの思い出などを穏やかに書き綴っている。ヘールシャムは特別に環境がいいとされる施設で、そこの出身者には何か特別な措置があるのではないかという噂が同じ境遇の人々の間でしばしばささやかれていた。その噂となった特別な措置も恋人となった者への数年間の猶予などというささやかなもので、そうして希望的観測として噂となるくらい切願されているもののささやかさが切ない。
読了日:3月31日 著者:カズオ・イシグロ,土屋政雄
ストリート・キッズ (創元推理文庫)ストリート・キッズ (創元推理文庫)感想
上院議員の家出した娘を探すことになった主人公ニールは、何者かがその仕事を成功させないように妨害していることに気づく。そのため少年時代からニールに探偵技能を教えてくれた、父同然のグレアムも疑わしくなる。そうして裏切りの可能性をちらつかせてから、グレアムから探偵技能を教えられ、可愛がられていたエピソードが描かれるから、いい話だと感じるとともに現状を思って少し切なくもなる。そうしてこの事件で主人公にとって大事なものが失われると思わせておいて、その不吉な予想を覆して大団円で終わってくれたのは嬉しい。
読了日:3月31日 著者:ドンウィンズロウ
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第二部「神殿の巫女見習いIII」本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第二部「神殿の巫女見習いIII」感想
プロローグで、普段他人に弱みを見せようとしないフェルディナンドがマインのために頼みごとをしていることにちょっと微笑ましく思う。今回登場したジルヴェスターのイラストは、彼の悪戯っぽさがでていていいね。そしてジルヴェスターはweb版で最近は振り回されることが多いこともあって、この初登場時の子供っぽく自由奔放な振る舞いになんか懐かしさを感じる。
読了日:3月31日 著者:香月美夜
ドン・カズムッホ (光文社古典新訳文庫)ドン・カズムッホ (光文社古典新訳文庫)感想
ドン・カズムッホ(偏屈卿)と呼ばれる主人公による回想録形式の小説。初恋の相手で妻となったカピトゥとの物語。解説によると、出版後60年もカピトゥの姦通は自明なものとされていた。その後カピトゥの不義は冤罪という説がでて、現在ではそのどちらとも取れる両義性がこの小説の最大の特徴とされている。そうした読み方一つで登場人物の印象が大きく変わるのが面白い。事実がどちらでても若くして死んだエゼキエルは父(ドン・カズムッホ)を慕っていたのに、ドン・カズムッホはエゼキエルに愛情を持っていないことが切ない。
読了日:3月31日 著者:マシャード・ジ・アシス
不当逮捕 本田靖春全作品集不当逮捕 本田靖春全作品集感想
公娼制度廃止を阻止しようと赤線業者の組合が贈賄をしていた。読売新聞社会面のエース記者だった立松和博は、その贈賄事件で国会議員が近く贈賄容疑で召喚されると記事を書く。そのことで名誉毀損を理由に逮捕されることになる。この不当逮捕の背景には検察内部の派閥抗争があり、立松に情報源を明かさせることで彼に機密情報を渡した敵対派閥を潰そうという目論見があった。そのような逮捕の背景にある検察内の派閥対立のことや、著者の先輩記者で戦後の一時期に目覚しい活躍をした立松和博という人物について書かれたノンフィクション。
読了日:3月30日 著者:本田靖春
刑事マルティン・ベック 笑う警官 (角川文庫)刑事マルティン・ベック 笑う警官 (角川文庫)感想
冒頭で主人公マルティン・ベックは大量殺人事件が起こって、彼と同じ刑事殺人課の人間に被害者がいることを伝えられる。ベックは先ほどまで一緒にいたコルベリが事件に巻き込まれたのではないか、そういえばいつもと違う行動をしていたと思い、彼の自宅に連絡するもまだ家に帰っていないと知って、より彼が巻き込まれたのではないかと言う思いを強くする。そうしてコルベリが被害者のように見せておいて、事件現場にいってみると彼がそこにいた。この予定調和を外す一連の流れは結構好き。
読了日:3月29日 著者:ペール・ヴァールー,マイ・シューヴァル,柳沢由実子
フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)感想
錬金術と科学を修め生命の秘密を理解したフランケンシュタインによって創造された怪物は、醜い外貌で身体能力は高いが、感受性や心は人間そのまま。しかしその外見の恐ろしさのため人間から拒絶され、そして憎い創造主にすがってまで望んだ伴侶となる自分と同じ存在がほしいという願いも拒まれた。全ての希望を失った怪物は創造主の大切な人々を死に追いやり、彼に絶望と憎しみを与えることのみを喜びとする復讐の道へ進む。全てが終わったとき、もっと善いものになりえたのに多くの罪を重ねた虚しさの中で、名もなき怪物は死に場所へと向かう。
読了日:3月27日 著者:シェリー
完訳 ギリシア・ローマ神話 上 (角川文庫)完訳 ギリシア・ローマ神話 上 (角川文庫)感想
ギリシアローマ神話の中でも文学に関係の深いエピソードをまとめた本。ミダース王はディオニューソスに触れるものを全て黄金に変える能力を願い、その力を得たが食べ物や飲み物も黄金に変わってしまうため、再び神に頼んでその力を消してもらった。その後、田舎に遁世したミダース王はパーン信者となる。そしてパーンとアポローンの音楽対決のときに、一人アポローンの勝利に異議を唱えたために、アポローンに耳をロバの耳に変えられてしまう。黄金についての神話と王様の耳はロバの耳の王が一緒だというのは知らなかった。
読了日:3月26日 著者:トマス・ブルフィンチ,大久保博
愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える 光文社古典新訳文庫愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える 光文社古典新訳文庫感想
精神病院に入っていたジュリーは、企業家アルトグに施設から連れ出されて、彼の甥ペテールの世話係として働くことになった。そしてジュリーはペテールと共に外出したときに誘拐されて、殺されそうになる。しかし危ういところで彼女はペテールを連れて脱出に成功する。そうして脱出したジュリーだったが、彼女は警察に対するトラウマから警察に行かずに、アルトグがいるであろう場所に向かって逃走を開始する。そうして逃げる二人を狙う殺し屋フエンテスらと繰り広げるアクションシーンが面白い。
読了日:3月21日 著者:マンシェット
図解 日本の城 歴史がおもしろいシリーズ図解 日本の城 歴史がおもしろいシリーズ感想
第一部では城に関する色々な話が書かれていて、第二部では多くの城を取り上げて、それぞれの城の説明とその城の縄張図の見開き2ページにまとめられている。江戸時代、天守は『普段は倉庫などでしか使われない』(P28)。『城の防衛戦略については、墨子がもっともすぐれた学者としてあげられ、日本の築城術の基本となっています。』(P116)
読了日:3月20日 著者:中山良昭
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン (4) ―サード・スクワッド・ジャム ビトレイヤーズ・チョイス (上)― (電撃文庫)ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン (4) ―サード・スクワッド・ジャム ビトレイヤーズ・チョイス (上)― (電撃文庫)感想
今回レンは前回コンビを組んだフカ次郎の他に、前回ラスボスのピトフーイやエムを加えた4人チームで第3回スクワッド・ジャムに出場する。優勝候補の主人公チームは多くのチームが共同して攻撃を仕掛けられるが、それを撃退する。その共同チームはクラレンスとシャーリーの二人がそれぞれに不意打ちで引っ掻き回したことで壊滅する。そこで予期せずに起こったクラレンス対シャーリーの1対1の近接戦がいいね。順当に勝ち進んだ主人公チームだったが、今大会からの新ルールが作動して最強格の敵ができたことで今後の展開がわからなくなってきた。
読了日:3月18日 著者:時雨沢恵一
庶民たちの平安京 (角川選書)庶民たちの平安京 (角川選書)感想
当時の平安京は『朝廷を運営する貴族たちが集まり住むためだけに造られた、産業とは全く無縁の都市』だった。そのため京に暮らす庶民の多くが貴族の従者や、朝廷が職人や兵士や下働きの下部として雇っている者たちとその家族だった。左京四条以北は高級住宅地になっていて、上流貴族たちの大邸宅が立ち並んでいた。そうしたところに庶民たちの暮らす小屋があったのは、主家の貴族が自邸の周辺に宿舎群としてそうした小屋を用意して、自家の従者たちを住まわせていたから。
読了日:3月17日 著者:繁田信一
魔法科高校の劣等生 (19) 師族会議編 (下) (電撃文庫)魔法科高校の劣等生 (19) 師族会議編 (下) (電撃文庫)感想
今回で師族会議、対顧傑編も終わり。USNAがやられ役ではなく活躍を見せたのはよかった。しかし競合する彼らの活躍のせいで、魔法師に対して世間が持つ不信感を払拭するという当初の目的を達成できずに終わる。本編の後の「一条将輝転校日記」で、この事件の最中の一条について書かれる。そこで書かれている彼の年相応な面をみて少し和む。次回はついに二年次の九校戦での出来事を書いた短編集がでるということで楽しみ。
読了日:3月14日 著者:佐島勤
図解 戦国史図解 戦国史感想
室町幕府の実力者細川政元(1466~1507)は修験道にのめりこんで妻帯せず、子供を作らなかった。そのため養子をとったが九条家からは澄之を、一族の阿波守護家から澄元をとり、備中守護細川家から高国をとった。そうしたことで家中が澄之派と澄元派で分裂し、澄之派の家臣に政元は謀殺される。この話を見て細川政元にちょっと興味がわいてきた。
読了日:3月13日 著者:菊地正憲
崩れゆく絆 (光文社古典新訳文庫)崩れゆく絆 (光文社古典新訳文庫)感想
19世紀後半、イギリスの植民地支配が始まる直前のナイジェリア東部のイボ人の社会の姿や、イギリスの植民地支配の開始や布教活動によってそれまでの伝統・社会が突き崩されていく様子が描かれた小説。イギリスが来る以前の伝統的な村の様子が活写される。そうした自分の知らないある文化の社会や伝統、日常のさまざまなことが書かれているのを読むのはそれだけでも興味深く面白い。
読了日:3月11日 著者:アチェベ
ここまでわかった 戦国時代の天皇と公家衆たち―天皇制度は存亡の危機だったのか? (歴史新書y)ここまでわかった 戦国時代の天皇と公家衆たち―天皇制度は存亡の危機だったのか? (歴史新書y)感想
13人の執筆者が戦国時代の天皇や公家衆、あるいは戦国大名化した貴族についてそれぞれ書いている。足利将軍家には、武家昵近公家衆(昵近衆)という公家衆の家礼がいた。そして『高倉・日野・広橋などの昵近衆は皆軍兵を率いて、鎧直垂の姿で騎乗し、将軍の親征に従軍していた。このような従軍は、最後の将軍である足利義昭期(在職一五六八〜八八)まで継続していた(そのため討死する昵近衆もいた)。』(P150)そのように昵近衆は武家同様の装束での軍事奉仕もした。
読了日:3月10日 著者:

読書メーター

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小/////5//
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「完訳 ギリシアローマ神話 上」はその他換算。



ライトノベル 3
小説 7
ノンフィクション 1
歴史 3
その他 2

 久しぶりの月15冊以上の読了。今更感があるが、最近kndleで読むことが多くなってきている。



3月に読んで特に特に面白かった本
「崩れゆく絆」

崩れゆく絆 (光文社古典新訳文庫)

崩れゆく絆 (光文社古典新訳文庫)

 植民地支配以前のアフリカ、ナイジェリア東部のイボ人社会の姿が活写される。
 そうした伝統的な社会の中での人々の生活、日常が描かれている作品は大好き。
「庶民たちの平安京
庶民たちの平安京 (角川選書)

庶民たちの平安京 (角川選書)

 貴族以外の人々による平安京の生活をかいま見ることができる。
 それは今まであまり想像がつかなかったものなので、非常に興味深かった。
 こうして一つの社会の色んな層の生活を知ることは想像が広がって面白い。
「ストリート・キッズ」
ストリート・キッズ (創元推理文庫)

ストリート・キッズ (創元推理文庫)

 父のような存在であるグレアムと主人公との過去のエピソードも、ラストのどうなるのかわからない感もいいね。