4月に読んだ本まとめ

2016年4月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:2713ページ
ナイス数:290ナイス

真夜中の天使1: 1真夜中の天使1: 1感想
新人発掘に長け、芸能界では辣腕と冷酷さで知られていた滝俊介と、彼が発見した美少年今西良の物語。滝が神秘的で魔性を感じさせる美少年今西良に強烈に惹きつけられる。しかしそうした強烈な感情の虜になる経験がなかった滝は、感情を制御できずに暴君的にふるまって良を傷つけてしまう。そして良はそうした目に遭うたびに、他者への期待や自分の弱さをそぎ落とし一層神秘的な美しさを身につける。この巻の最後で、滝はかつてデビューさせたスターの花村ミミに、滝が良に惚れ抜いていることを指摘されて、初めて自分のその気持ちを自覚する。
読了日:4月30日 著者:栗本薫
戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方 (PHP文庫)戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方 (PHP文庫)感想
1章の「戦いに勝つための9つの原則」では戦いにまつわるさまざまな用語や戦闘における常識、戦術についての基本的な原則が紹介される。2章の「基本演習」は比較的単純なケースで、数個の選択肢による問題が出されて、その直ぐ後にその状況でどうすべきかということが説明されている。そして3章の「集団における命令の下し方」で適切な命令の下し方や命令の責任についての話がされる。4章以降はより複雑な状況でどう動くべきかということが、これもある状況でどうすべきかという問題とそれに対する解説が書かれているが難しい。
読了日:4月30日 著者:松村劭
イブン=ハルドゥーンイブン=ハルドゥーン感想
四部構成。一部では14世紀の歴史哲学者イブン=ハルドゥーンの国家の生成・興亡の理論や、彼が発見した社会学や経済学の諸法則について説明される。二部は優れた政治家・策謀家でもあった彼の伝記。三部は彼の主著「歴史序説」の主要部の抄録。そして四部は彼の著作の後世への影響が書かれる。19世紀に欧州の学者たちは『ヨーロッパ人が最初に発見したものと信じていた歴史哲学や社会学や経済学の諸法則が、すでに十四世紀のイブン=ハルドゥーンによって論じられ、その多くが解明されていたことを知って、彼らは驚異と感嘆の声をあげた』。
読了日:4月30日 著者:森本公誠
千の顔をもつ英雄〔新訳版〕上 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)千の顔をもつ英雄〔新訳版〕上 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)感想
『英雄の神話的冒険がたどる標準的な道は、通過儀礼が示す定型――分離、イニシエーション、帰還――を拡大したもの』で、『英雄はごく日常の世界から、自然を超越した不思議の領域(X)へ冒険にでる。そこでは途方もない力に出会い、決定的な勝利を手にする(Y)。そして仲間(Z)に恵みをもたらす力を手に、この不可思議な冒険から戻ってくる。』(P54)そうした神話や儀礼にある普遍的な物語のパターンが伝える重要な教えや意味の話。その物語に含まれる各要素ごとに、多くの神話や儀礼の例を紹介しながら、その意味を説明している。
読了日:4月30日 著者:ジョーゼフ・キャンベル
ドキュメント脱出 4600キロ・イランからの決死行 本田靖春全作品集ドキュメント脱出 4600キロ・イランからの決死行 本田靖春全作品集感想
ノンフィクション。イラン・イラク戦争の勃発で、イランで複数の土木工事を請け負って仕事をしていた東亜建設工業が作業員らを国外に脱出させようとする。しかしイラン側としては不可抗力での工事中断を認めると金を余計に払う必要があり、このままイランに帰ってこなくなることを危惧もあって、中々イランから出国できずにもめた話。『このドラマに、個人としての主役は不在であった』ため、同著者の事件・犯罪系のノンフィクションであるような主役となる人物についての深い掘り下げはない。
読了日:4月29日 著者:本田靖春
サイゴンのいちばん長い日 (文春文庫 (269‐3))サイゴンのいちばん長い日 (文春文庫 (269‐3))感想
新聞記者の著者が現地で見聞した南ベトナムの崩壊前後のサイゴンの様子、たとえば南ベトナムの崩壊直前まで混迷を深めていた政局や、崩壊前後の激動の日々の中でのサイゴンの人々の姿などが書かれている。米軍撤退に伴って南ベトナム軍は領土縮小して守る範囲を狭めようとしたが、その大撤退で士気が崩壊し、撤退は潰走へと変わった。そして翌月1975年4月末に首都サイゴンを包囲される中で、南ベトナムのミン大統領の一方的停戦宣言をする。それで戦争は終わり、南ベトナムという国は消滅し、4月30日に北ベトナムサイゴンを接収する。
読了日:4月24日 著者:近藤紘一
罪悪 (創元推理文庫)罪悪 (創元推理文庫)感想
一つの短編が20ページ以下のものがほとんどだが、それぞれの短編で描かれるどの事件もどの人物も興味深く短さを感じさせない。そして「ふるさと祭り」や「イルミナティ」のようなビターな結末の短編も、「解剖学」や「秘密」のような思いがけぬ終わり方にくすりと笑える掌編も、または「鍵」や「精算」といったラストであっといわされるような作品も、そのどれもが高品質で印象的なものばかり。その中でも「鍵」が特に好き。
読了日:4月23日 著者:フェルディナント・フォン・シーラッハ
ソードアート・オンライン (17) アリシゼーション・アウェイクニング (電撃文庫)ソードアート・オンライン (17) アリシゼーション・アウェイクニング (電撃文庫)感想
今巻は全編戦闘回。最初に敵が呼んだ援軍は、事情を聞いて助けに来てくれた仲間たちの協力もあって倒すことができた。しかしラフィンコフィンのPoHが連れて来た敵方の第二陣によってアスナたちは敗れてしまう。そしてアリスを捕まえようとするガブリエルを阻もうとしていたシノンも敗れて、アリスを追うガブリエルを止められる人物がいなくなるという危機的状態となる。そんな中でキリトは意識が戻らない状態が続いていたが、皆の祈りと外からの比嘉らの決死の働きかけで、いよいよ主人公が復活するか、というところで次巻に続く。
読了日:4月20日 著者:川原礫
完訳 ギリシア・ローマ神話 下 (角川文庫)完訳 ギリシア・ローマ神話 下 (角川文庫)感想
前半はトロイア戦争と、その後のオデュッセウスアイネイアースの物語が簡潔に書かれる。そして後半ではギリシア・ローマ以外の世界の神話などの紹介や説明がされている。北欧神話、まず巨人ユミルとその子孫、そして牝牛のアウスラムが生まれて、その後に神様が登場するという始まりだというのは面白い。牝牛アウスラムが『ある日、塩がこびりついている岩をなめていると、初めに人間の髪の毛が表れてきました。二日目には頭が表れ、三日目には美しく、きびきびとして、たくましい体がすっかり現れたのです。この新しい生き物は、神様でした。』
読了日:4月17日 著者:トマス・ブルフィンチ,大久保博
開高 健 電子全集14 オーパ!/オーパ、オーパ!!開高 健 電子全集14 オーパ!/オーパ、オーパ!!感想
釣り紀行文。アマゾンでの釣りを描いた「オーパ!」と、「オーパオーパ!!」のアラスカ篇、カリフォルニア・カナダ篇を収録。そうした世界各地の魚についての色々な話も知らないことばかりなので面白い。食事描写が美味しそうなのもいいな。ピラニヤは『アマゾン水域だけでなく、はるか遠い大湿原のパラグァイ河水域にもうじゃうじゃいて、およそ釣りをした日でピラニヤを釣らないというのは一日もなかったし、そんなことは想像することもできない。この猛魚は神のごとく、空気のごとく、水のごとく偏在する。』
読了日:4月12日 著者:開高健

読書メーター

ラ/
小//
エ/
ノ//
そ////


ライトノベル 1
小説 2
エッセイ 1
ノンフィクション 2
その他 4



4月に読んで特に特に面白かった本
「イブン=ハルドゥーン」

イブン=ハルドゥーン (講談社学術文庫)

イブン=ハルドゥーン (講談社学術文庫)

 14世紀の偉大な歴史哲学者イブン=ハルドゥーン。一部で彼の見て取った文明と社会、経済の理論・法則を簡潔にまとめてあるので、彼の主張していることが理解しやすくてありがたい。そして二部の彼の伝記も面白い。
「罪悪」
罪悪 (創元推理文庫)

罪悪 (創元推理文庫)

 基本的に短編よりも断然長編派だけど、シーラッハの短編は他にない味わいがあって好き。