5月に読んだ本まとめ

2016年5月の読書メーター
読んだ本の数:13冊
読んだページ数:3530ページ
ナイス数:283ナイス

ガルシア=マルケス全短編ガルシア=マルケス全短編感想
1947年から1972年までに発表された短編のうち、1948年の「トゥバール・カインは星をつくる」を除く26の短編が収録された短編集。巻末の作品解題で、各短編の簡単な解説がなされているのはありがたい。収録作では「六時の女」が一番好き。レストランに毎日六時にこの店に来る娼婦と彼女に惚れている主人ホセの会話劇。いつも通りの時間に来た女がホセに実際に彼女が店に来た時刻より15分前に彼女は来ていたと「証言」するように頼む。その偽証をするかどうかで悩むホセと何とか決心させようとする女、その二人の駆け引きが面白い。
読了日:5月31日 著者:ガブリエル・ホセ・ガルシア=マルケス
マクニール世界史講義 (ちくま学芸文庫)マクニール世界史講義 (ちくま学芸文庫)感想
フロンティアに関するものや、文明の発展過程についてなどの講義が収録されている。 『フロンティアには自由と強制の両方が存在していたのですが、(中略)一七五〇年以前には、私たちがフロンティアから連想するような自由や平等はほとんど存在していませんでした。奴隷状態が一般的で、人口の少ないフロンティアが世界市場に積極的に参加し、必要に応じて費用のかかる武装階級を維持するには、それが唯一の方法だったからです。』(P66-7)
読了日:5月31日 著者:ウィリアム・H.マクニール
狭き門 (光文社古典新訳文庫)狭き門 (光文社古典新訳文庫)感想
主人公のジェロームと従姉のアリサは子供の頃から互いを意識していて、親からもその仲を認められていた。しかしアリサは母の浮気と出奔、それによって傷ついた父の姿を間近で見てきた。そのため彼女は愛に高潔なものを求める気持ちが強かった。そうした潔癖で、完璧なものを求める気持ちが惹かれあう二人が結びつくことの邪魔をする。
読了日:5月31日 著者:ジッド
維新の夢 渡辺京二コレクション[1] 史論 (ちくま学芸文庫)維新の夢 渡辺京二コレクション[1] 史論 (ちくま学芸文庫)感想
近代天皇制は実体として利害の体系である市民社会を志向したが、共同体的な正義が貫徹される天皇共同体主義を建前としていた。そうして村落共同体と国家を短絡させることで国民を統合した。しかしだまし得だまされ損にもなる資本制市民社会は、村落や下町的な共同体に属する『共同体的住民の自然的道徳的な法意識』(P17)的には受け入れがたかった。共同体が市民社会の浸透で切り崩されていく中で、市民社会に個として放り出された人々が『共同性の幻を追い続けるとすれば、いまや媒介を欠いて個として天皇に直通するほかなかった。』(P49)
読了日:5月31日 著者:渡辺京二
闇の奥 (光文社古典新訳文庫)闇の奥 (光文社古典新訳文庫)感想
主人公で語り部のチャーリー・マーロウは英国で海を絆に結ばれている友人たちに自身のアフリカ(コンゴ)での体験を語る。任地についてみたら船が故障していた。そのため修理しなければならなかったが、中々修理に必要なリベットが届かない。マーロウは強力な後ろ盾があると思われたので勘違いを利用して、リベットが早く手に入るように頼む。それでリベットが送られてくると思って、マーロウは機械工の老人に近々リベットがくるぞと伝え二人で喜ぶが結局中々届かないというエピソードは好き。
読了日:5月31日 著者:コンラッド
鼠(ねずみ)鈴木商店焼打ち事件 (文春文庫 し 2-1)鼠(ねずみ)鈴木商店焼打ち事件 (文春文庫 し 2-1)感想
米騒動時に鈴木商店が事実に反して悪玉とされて焼打ちにあった事件を書いたノンフィション。鈴木商店は政府から依頼を受けて米を移入して販売していた。その仕事は損はしないが儲けも少なく、船を他で運用したほうが利益はずっと大きいものだった。しかし鈴木商店のワンマン経営者金子直吉が寺内藩閥内閣の後藤内相と親交があった。そのため藩閥内閣を嫌う大阪朝日新聞鈴木商店はこの事態で暴利を得ていると虚構の報道をされる。そうして悪玉とされたが、金子直吉は疚しいことはないと何も手を打たなかったために焼打ちされることになった。
読了日:5月31日 著者:城山三郎
怪人二十面相怪人二十面相感想
青空文庫。予告をした犯行現場での攻防がメインかと思いきや、意外と探偵側が二十面相のアジトに侵入できている。怪人二十面相は稚気や遊び心のあるキャラクターでいいね。例えば二十面相はいつの間にか目当ての品を持ち去っているのでなく、手に入れてから相手に種明かししたりして相手の反応を見ようとしている。他にもアジトに盗まれたものを取り戻しにきた小林少年を捕らえられた時に、小林少年の銃や彼が取り戻していたダイヤを一つずつ食事を交換することを提案する。そうしたところから彼がゲームのように犯行を楽しんでいることが伝わる。
読了日:5月30日 著者:江戸川乱歩
ゴブリンスレイヤー2 (GA文庫)ゴブリンスレイヤー2 (GA文庫)感想
ゴブリンスレイヤーは前巻と同様のパーティメンバーで冒険を続けている。今回ゴブリンスレイヤーたちは依頼で拠点としている辺境の町から馬車で2日の都市へ行き、その地下水道に棲み付いたゴブリンを退治することになる。ゴブリンスレイヤーがいざというときに武器となるように盾の縁を磨いているというような、そうした細かい準備が書かれていると彼の歴戦感が出ていいね。それから戦闘シーンは正面からやりあわずに工夫で倒すものも面白いし、運が悪ければ敗れてしまうような緊張感があるものも面白い。
読了日:5月28日 著者:蝸牛くも
カタロニア讃歌カタロニア讃歌感想
オーウェル自身がスペイン内戦に義勇兵として参加したときの前線での体験や、当時の政府側の政治的情勢などが書かれている。スペインでは政党ごとで義勇軍を作っていて、オーウェルはたまたまPOUMの義勇軍に入る。当時、共和国政府(反フランコ側)は社会主義勢力だった。そしてソビエトは武器支援などをして影響力を強めて、共産主義者の力が増した。しかしソビエトはフランスに配慮して、革命勢力を排除して、ブルジョワ政権を樹立させようとしていた。
読了日:5月27日 著者:ジョージ・オーウェル
Fate/strange Fake (3) (電撃文庫)Fate/strange Fake (3) (電撃文庫)感想
セイバーの正体が獅子心王だとわかって、彼の奔放ぶりや「『座』にできるだけ多くの歌と英雄譚を持ち帰りたい」(P182)という発言に納得。マスターのシグマ自身がランサーとして強化されていくというのは面白そうで、彼が今後どうなっていくか楽しみ。それから彼は四次聖杯戦争で切嗣の助手だった久宇舞弥の子供なのか! あとがきによると今回で登場人物は出揃い、そして4巻から『バトル成分多めになりそうな感じ』ということで、次巻から本格的に各陣営の戦いが始まりそうで、それも楽しみ。
読了日:5月23日 著者:成田良悟
帰ってきたヒトラー 上 (河出文庫 ウ 7-1)帰ってきたヒトラー 上 (河出文庫 ウ 7-1)感想
死んだ日からタイムスリップして現代のベルリンで目を覚ましたヒトラー。現代に現れたヒトラーはキャラを作りこんだコメディアンと思われる。そして過激なブラックジョークを発するコメディアンとしてテレビに出て、それなりに反響を得たところで上巻は終わる。最初は彼に共感できないところからはじまる。しかし大戦時と現代の変化を目の当たりにした彼が見せる反応や勘違い、あるいは彼の自信に満ちた行動の滑稽さを楽しんでいるうちに、次第に彼の印象が変わり者で放言するが憎めないおじさんといったものに変わっていっていく。
読了日:5月22日 著者:ティムール・ヴェルメシュ
魔法科高校の劣等生SS (電撃文庫)魔法科高校の劣等生SS (電撃文庫)感想
達也たちが二年の時の九校戦にまつわる話が収録された短編集。ライバル校の吉祥寺は同年代で主人公についで頭が切れて技術力のあるキャラなのだけど、今回の彼は主人公が繰り出す作戦や技術に驚く、やられ役になっているからちょっと不憫。「龍神の虜」神童と呼ばれていた幹比古が上手く術を使えなくなった原因となった出来事が語られる。初期から幹比古が何かあってそのような状態になっていたことは書かれていたけど、実際に何があったかはわからないままだったので、ついにそのエピソードが読めてちょっと嬉しかった。
読了日:5月21日 著者:佐島勤
家庭用事件 (創元推理文庫)家庭用事件 (創元推理文庫)感想
短編集。伊神さんの卒業前の短編。「不正指令電磁的なんとか」こうしたパソコンなど電子機器の知識を活用したトリックはあまり見ないので面白い。「お届け先には不思議を添えて」葉山家での葉山兄妹と伊神さんの食事シーンに癒される。「優しくないし健気でもない」最後の短編。今まで語られていなかったことがわかることによる意外な結末。それを踏まえれば、それまでの短編での些細な描写などの見え方や印象が変わるので面白い。この事件が解決されたあと、ラストのちょっとしんみりとした雰囲気の中での葉山兄妹の帰り道の描写もいいね。
読了日:5月20日 著者:似鳥鶏

読書メーター

ラ///
小/////5/
ノ//
歴//

 「カタロニア讃歌」はノンフィクション換算。



ライトノベル 3
小説 6 
ノンフィクション 2
歴史 2


5月に読んで特に特に面白かった本
「維新の夢 渡辺京二コレクション[1] 史論」

 西郷隆盛についての話は面白かった。今までよくわからない人物だったけど、これを読んでようやくどういう人だったかがわかってきた。
「鼠(ねずみ)鈴木商店焼打ち事件」 米騒動で焼きうちにあった鈴木商店がいかにして悪玉にされ、そのイメージが後々まで残ってしまったかが書かれたノンフィクション。
 鈴木商店内部のあれこれが見えて面白かった。
「家庭用事件」
家庭用事件 (創元推理文庫)

家庭用事件 (創元推理文庫)

 最後に明かされた事情で、それまでのほかの短編のあのシーンはそういうことだったのかということも見えてきて面白かった。