異世界食堂 5

異世界食堂 5 (ヒーロー文庫)

異世界食堂 5 (ヒーロー文庫)


 久しぶりの新刊。
 今回は「おでん」で鬼の夫妻にもうすぐ子供が生まれようとしていたり、「テリヤキバーガー」で以前に異世界食堂に来ていた三人の少年達が駆け出し冒険者となっていたり、「コーヒーフロート再び」では砂の国と帝国の王室同士の婚姻の進展が書かれるなど時間経過を感じさせる話が多かった印象。
 プロローグ、祖母からその気になれば異世界とのつながりを断てるマスターキーを渡された店主は、それをきっかけに土曜日のみ異世界の言語で「異世界料理のねこや」と書いてある看板を出すことにしたことが書かれる。
 「おでん」鬼の夫妻タツジとオトラは鍋ごと買い上げて持ち帰る客がいたという話を思い出して、始めて鍋を持ち帰る。そして寒い冬で昼に帰途につき、午睡した後に持って帰った鍋(おでん)を再加熱して二人で食べる。家のくつろいだ雰囲気で異世界食堂の料理を楽しみ、食べ終えた後に二人でごろりと横になっているのいいね。
 「テリヤキバーガー」有名な剣士であるタツゴロウが三人の駆け出し冒険者たちを助けると、その三人が以前に異世界食堂で見たことのある子供とわかり、ちょうどドヨウだったこともあり一緒に異世界食堂に行く。異世界食堂で顔を知っていた人たちが、元の世界で思いがけず出会って食事しながら歓談しているのいいね。そのように思いがけない縁があることがわかって、距離が少し縮まるのいいね。そして1巻の「ハンバーガー」で一緒に冒険者になろうといっていた三人の少年が駆けだし冒険者となっていることで時の流れを感じる。
 「宇治金時」空に浮かぶ島に生まれてからずっと暮らしている一人のエルフであるエルゼガント。彼の両親が疫病から逃れて空に島を浮かべた。研究者である両親から研究を受け継いだものの、両親ほど研究に情熱にないエルゼガントはその小さな島で暇を持て余していた。そんな時に異世界食堂の扉がその島に現われたので好奇心でその扉をくぐる。空飛ぶ島で両親と自分以外知らずに過ごしてきたので興味深げに異世界食堂を観察し、宇治金時のかき氷を頼み、頭がキーンとなりながらも初めての感覚を楽しんでいる様子なのがいいね。
 「さつま揚げ」いままで一緒に暮らしたことがなかったが、最近一緒に二人で暮らし始めた兵士の父子。父が息子を異世界食堂に連れていく。父は海のある街で育ったが、息子が生まれた現在暮らす土地は海から遠く、ろくに魚が食べられないので魚が苦手な息子に異世界食堂で魚っぽくない魚料理を食べさせて魚に親しんでもらおうとする父。そして父は兵士を辞めて故郷に戻ろうかなどと考える。
 「ミルクレープ」花の国に住むフェアリーたちの女王。女王の妹を助けた異なる大陸から来た同じくらいの体格くらいの客人をもたなすのに異世界食堂を使う。異世界食堂がその社会に根付いているのがわかる用いられ方でいいね。
  巻末の番外編はアニメの特典付録の再録のようだ。「番外編一 ミックスサンド」アレッタが異世界食堂で働き始めてから間もない頃の話。「番外編三 ポークソテー」先代の時代の異世界からくる客も少なかった頃に後に常連となるタツゴロウが初めて来店した時の話。