絶対ナル孤独者 5

絶対ナル孤独者5 ―液化者 The Liquidizer― (電撃文庫)

絶対ナル孤独者5 ―液化者 The Liquidizer― (電撃文庫)


 ネタバレあり。久しぶりの新刊、あとがきを見ると2年ぶりらしい。
 ミノルは学校の帰り道にルビーアイである液化者(リキダイザー)に待ち伏せされて思わず身構える。リキダイザーはどうやらバイターを倒したときの情報から生活圏にあたりをつけてはっていたようだ。彼女はミノルに取引を持ちかけてくる。その取引の内容はスティンガー(前回交戦した非常に強力なルビーアイ)と特課の一員であるスターゲイザー(≪組織≫に捕らえられているオリヴィエの妹クレア)の居場所の情報と引き換えに、特課が確保したトランサーの奪還に協力してくれというもの。
 リキダイザーはミノルにリキダイザーはアクセラレータとディヴァイダ(ユミコ、オリヴィエ)に取引したがっていると伝えるように言う。そして3E会議に監視されている危険性があるから電話やメールを使うなと言って、ミノルはリキダイザーから連絡用のスマートフォンを渡される。ユミコも『政府内の≪3E会議≫も、どこまで信頼できるのか解らないけどね』(P29)といっていおり、リキダイザーの口からも『特課の仲間を信じるのはいい……でも3E会議を信用するのはやめなさい。坊やほどの能力者を、連中が単なる現場要員のままでいさせるはずがない。いずれもっと都合良く利用しようとするはず……もしかしたら、もうルビーアイと関係ない仕事を何かやらされているんじゃないの?』(P89)と語られる。複数人からそのような話がされて、上層部(3E会議)のことは信頼できるかは不明であることが印象付けられる。
 取引の件を知らされたユミコやオリヴィエはクレアの居場所が交換条件と聞いて、その取引を受けることを決める。そしてリキダイザーと会合を持つが、その時にルビーアイの≪組織≫の人間である潤滑者(ルブリケーター)からの襲撃を受ける。何とか撃退するもオリヴィエは腹に銃を受けて今回の作戦からリタイアすることになる。復帰して協力してくれることになっていたスウも頭の手術後に頭に攻撃を受けたということで、ここでリタイア。スウの出番は今回は顔見せ程度だったけど、復帰したようで何より。
 ルブリケーターの襲撃でリキダイザーも怪我を負ったことやルブリケーターが用いた銃が一般的でないライフリングがないものだったことから、リキダイザーを狙った襲撃だったことがわかる。『ライフリングによって高速回転する銃弾が液体になると、遠心力で試算してしまうのだ。』(P196)現時点では何故リキダイザーが狙われたのかの理由は不明。
 リキダイザーは怪我を抱えながらもトランサー奪還に成功して、能力で車のラッピングフィルムを溶かすことで外見を変えて上手く捜索網から逃れていたが、そんな時に再びのルブリケーターの襲撃がある。ルブリケーターを振り切れず、このままカーチェイスを続けると、捜索している者たちにも捕捉されてしまいかねないので、ミノルが一人車から降りルブリケーターと対峙し、一瞬の交錯でのド派手な決着となる。
 あとで事情を知ったイサリリ教授に『最初から事情を説明してくれれば、私もそのつもりであれこれ根回しできたんだぞ』(P262)といわれるミノルとユミコ。DDにも後で事情を話したようなので、大体の特課の仲間たちには今回の取引のことを話したみたいだ。リキダイザーは作戦が成功に終わって約束通りに、クレアが現在船に囚われていることをミノルたちに伝えた。
 今回ミノルがルブリケーターと交戦、確保できた理由をリキダイザーと行動していたとも書けないため、バイクで移動中に接触したということにしたのでミノルは購入するか迷っていたバイクを買うことになったようだ。
 翌日再びリキダイザーがミノルに接触してくる。ジェットアイとルビーアイは相手陣営の能力の匂いがわかるのを利用して、ルブリケーターの協力者の能力によるマーキングで追跡されていたので、どこにマーキングされているか調べてくれという。それで調べた結果リキダイザーについたマーキングはスティンガーによるものだとわかり、それを知ったリキダイザーは『単純に考えれば、ルブリケーターはスティンガーと繋がってるってことでしょうね。もしそうなら、あたしの抹殺指令を出したのは≪組織≫じゃなくて別の勢力なのかも……』(P288)と別勢力の存在が示唆される。
 そして最後にミノルの学校で最近起こっていた成績優秀者やスポーツで有望な生徒たちの体調が崩れていたのは、サードアイ持ちと接触せずに暮らしてきた野良のジェットアイによるものだとわかり、その能力者とミノルが接触したところで終わる。