ファミリーレストラン 「外食」の近現代史

 kindleで読了。
 ファミリーレストランは1970年代に勃興し、隆盛し始める。『本書は、そんな「家族での利用」に軸を置き、外食の歴史の変遷していったのかをまとめたものだ。』(N4)
 各章末などにある色んなファミリーレストランのチェーン店に行って食事した時のことが書かれたコラムもいいね。
 大正13年に最初の店がオープンした須田町食堂。『家族での利用は、チェーン系食堂の祖であり、大衆食堂の祖でもある須田町食堂だろう。(中略)ここの当初のメニューの中心は洋食であり、洋食を安い値段で提供し普及させたそうだ。』(N254)
 『須田町食堂での食事は、いわば東京観光の一環であった。当然、家族で旅行に来た人々もここで食事をしたに違いない。非日常としてのときめきが「須田町食堂」にはあったのだ。ここに、後に「ファミリーレストラン」の要素の一つである「非日常的な食空間による高揚感」がある。
 かくして、人々は「外食も観光」であることに気づきはじめた。そして、地方から観光にやってきた人々だけでなく、都会の人々も気軽に「観光」して「非日常的な食事」ができる場所ができ始めていた。それがまさにデパートであり、デパートの食堂こそがファミリーレストランの前駆的存在であった。』(N274)
 1970年ごろに乗用車保有が大きく増える。『このような交通事情の変化が、ファミリーレストランの誕生と発達の大きな要因となる。』(N918)  すかいらーくの創業者兄弟は『デニーズやビッグボーイ、ハワードジョンソン、サンボズのようなアメリカで隆盛を極めていたロードサイドのコーヒーショップという業態に着目した。』(N1124)
 『当初はコーヒーショップを銘打ったスカイラークであったが、郊外の新興住宅地に住む家族たちがそろって食事をする空間としての存在感が増し、コーヒーショップという名前がなじまなくなっていた。そこで茅野と当時の日経流通新聞の記者が相談し、「ファミリーレストラン」との命名を行い、広めて行くことにしたのだ。』(N1137)そのようにしてファミリーレストランという言葉が誕生した。
 1970年代に続々と登場したファミリーレストランチェーン。1980年代には『ファミリーレストランは、「美味しい食事を家族で食べる」場所から、「家族や友達、そして仲の良い異性と共に『いる』」場所へと発展していった。』(N1789)そして低価格路線のガストの成功もあり、「より安くいられる場所」となっていった。
 そのように『ファミリーレストランは日常化し、休日にわざわざ家族で食べに行く場所ではなくなっていった。
 しかし、やはり休日の夜などは家族で外食をしたい。それなり当然、おいしいものがいい。このような流れのもと、家族はレストランに行って食べたいものを決めるのではなく、ある程度方針を決めて、専門料理を出す店に行くようになった。』(N2366)例えば焼肉や回転寿司など。