ベン・トー 9.5


内容紹介
味付け濃厚、胸焼け注意! の短編集
半額弁当争奪バトルに青春を賭ける佐藤洋たちHP同好会の蔵出しエピソード、てんこ盛り! 白粉&白梅の知られざる濃厚エピソード、そして佐藤洋は禁断のフェティシズムの世界へ飛翔する!?

 短編集。いつものようにあいかわらず面白い。
 『例えば……あれはいつの頃だったか。僕をはじめとしたクラスメイトの一部で何回目かになるジャンプの名作漫画『るろうに剣心』のブームが訪れていた時だから』(P29)リアルタイム世代でないのに何回もブームが、というのはいまいち実感しにくいので、佐藤ってどの世代という設定なのだっけと感じてしまった?
 佐藤、『ぬ、脱がしてくれ』(P53)というフレーズに混乱しているとはいえ、脚を気にしているのに、何故先輩の服を脱がそうとするww、
 『……いやあ、きょうは何かもう、あとちょっときっかけがあれば告白せんばかりの展開だったなぁ。すごく純愛チックな感じで……発端がすべて僕の邪な企みの結果だとは誰も思うまい。』(P71)先輩に送ってもらって分かれた後すぐに、そんなことを改めて思い出させんなw、せっかくそれまでいい雰囲気だったのに、地の文で台無しにするのは、非常に佐藤らしいといえば佐藤らしいけどさ。
 沢桔姉妹が高校になってから、『高校に入ってからはその人気はピタリと止んだ』(P92)とあり、好意を伝えてくる人がいなくなったのは何故だろう?とこの鏡の地の文を読んだときは疑問に思っていたが、そのすぐあとに警備員の話が出てきて、そっかあいつのせいかと合点がいった(笑)。
 「4章 有明の狼たち」、最初のうちは顎鬚やら坊主は他人の空似というか特徴が似ているだけと考えたが、茶髪(巨乳)がでてきてからはifなのか?と思っていたら、夢オチかい!
 小学生時代の白粉『何故そうなったのかはよく覚えていない。ただ友達と雑談していたときに『軟弱なアイドルより無名のボディビルダーの方が絶対カッコイイ』とか『中年のおじさんの汗染みのついたシャツからは蜂蜜のような甘い香りがする』などのちょっと背伸びした話をみんなに喋っていたら、いつの間にか今のような状況になっていた。/(中略)/きっと、大人びた話をひけらかしている自分がウザかったのだろう』(P202)「大人びた」とかそんな理由じゃないよw明らかに変な趣味であるからターゲットにされた、そういう理由だよ、きっと。だからといってイジメが正当化されるかといったら欠片もそんなことはないが。
 コミケでの白粉とそこへ突然会いに来た白梅との話、YURYYYY!という冗談は置いといて、まさか、こんな互いの互いに対する思いをこんな入念に書いたものになるとは思わなかった。「5章」で白粉サイド、「11章」で白梅サイドと、両サイドからお互いの出会いのこととかを語られて(白梅は白粉のこと一目惚れだったのか)、この2人がくっつくのも、すごくいいんじゃないかな。と思わせるとは、さすが百合物である「バニラ」(実はまだ読んでいないが〈苦笑〉)を書いた作者さんだな、と感じさせるエピソードだ。
 「ANの5時の読書会」で≪ナックラヴィー≫のパートナーのアンが、コミケに出品した白粉の作品について、感想を書いているが、その感想を見ていると、よくそんな内容を244ページで収めたな、と感心する。「なろう」とかでプロが書いたのでない小説を見てみると、概ね冗長であるきらいがあるので、そうした結構中身のある内容のものをたった244Pで収められたというだけで尊敬に値するわ、白粉。
 著莪と佐藤のシーン、どれもエロいし、互いの愛情(どこまで自覚的かは知らんが)も感じるし、普通に恋人同士のエピソードにしか思えん。もういい加減付き合ってしまえよ、と思う。もしそれで、別れたら、ということを考えると、臆病になる気持ちもわかるけどさ。
 「鹹味」(かんみ)、別のところで見て、なんのことだろうと思っていたが、塩味のことなのね。本編と全く関係ないけど、微妙に気になっていたのでスッキリw。