オーバーロード 12

オーバーロード12 聖王国の聖騎士 上

オーバーロード12 聖王国の聖騎士 上

 ネタバレあり。
 今回は新しく紹介されたローブル聖王国という国家の話。冒頭で登場した聖王国屈指の戦士オルランドやパベルがあっさりと退場となるのは、このシリーズらしいな。
 亜人たちを支配するヤルダバオトデミウルゴス)が、亜人たちと共に聖王国に侵攻し、圧倒する。聖王国北部は蹂躙され、国家元首である聖王女も亡くなる。その時に炎の巨人の姿をヤルダバオトの正体と思わせた。しかしデミウルゴスはカエルっぽい姿だったと思うので、後の面倒を避けるためにここで別の悪魔をヤルダバオトと思わせたのだろう。
 聖王女の側近で聖騎士団団長のレメディオスがかろうじて生き残り、彼女は外国に聖王国救援を求める。しかし国外脱出の時に頼ったネイアを邪険にして無茶なことばかり要求する。そのパワハラ糞上司っぷりや好感のもてる要素が一つもない人格とで悪い意味で強い印象。
 聖王国蹂躙以後の話は、基本的にはネイア・バラハの視点で進む。聖王国救援を求める使節団一行は、王国で援助を得られなかった後にヤルダバオトに対抗できるモモンの力を借りることができればと思って魔導王国に行く。
 魔導王国の入国管理官であるナーガのリュラリースが、友人の言葉として『あの御方と敵対するのは究極の愚者であり、即座に足元にその身を投げ出し慈悲を乞う者こそ賢者じゃよ』(P179)とアインズ魔導王について述べたが、神への態度についての台詞といわれてもおかしくないような言葉。
 アインズ魔導王自らが聖王国救援に赴くことになる。デミウルゴスの計画があっての行動だろうが、国家としての正式な使節団でなく占領地を取り戻しても重く用いられることはないだろう立場の人間なので、何の約束もできない。そんな相手に、というかレメディオスに、表向きに形だけでもアインズが助力することになるのはちょっと嫌。
 アインズにはネイアが付けられる。ネイアはそれまでに糞上司レメディオスにさんざん苦労していたので、アインズの優しさや寛大さに感動し、王としての偉大さに惹かれて敬慕するようになる。そのため彼女は助けに来てくれたアインズ王を見下す他の解放軍に苛立つし、アインズ王に敬意を払ってアインズ王に非礼なことをさせまいとする彼女の姿は、他の解放軍の面々からはアインズ王よりのものと見られて邪険にされる。
 第三章の扉のアインズに魔法の弓を貸し与えられて、てんぱっているネイアのイラストはいいね。
 そしてアインズは解放軍に力添えして、捕虜収容所を解放していく。その過程で囚われていた王兄カスポンドを救出する。しかし最後のアインズとデミウルゴス配下のドッペルゲンガーとの会話を見ると、ドッペルゲンガーがカスポンドを演じているのかも。
 そして再び移動を開始しようとしたころに亜人の大軍が姿を見せて、捕虜収容所だった都市にこもって防衛戦をやることになりそうというところで引き。
 最後にアインズが、デミウルゴスたちは細かなところはアインズさまが即興でやった方が良い展開になるだろうと指示してくれなかったので心労が大きかったことが明かされる。そして次巻へと続く。