秘密の花園

秘密の花園 (光文社古典新訳文庫)

秘密の花園 (光文社古典新訳文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

インドで両親を亡くしたメアリは、英国ヨークシャーの大きな屋敷に住む叔父に引きとられ、そこで病弱な従兄弟のコリン、動物と話ができるディコンに出会う。3人は長いあいだ誰も足を踏み入れたことのなかった「秘密の庭」を見つけ、その再生に熱中していくのだった。


 赤ん坊の頃から親に全くかまってもらえなかった少女メアリ。そうした不幸のためいつも不機嫌でつむじまがりな子供になっていた。彼女が子供時代をすごしたインドでは、乳母や召使にもわがままばかりいって困らせていた。
 支配階級であったイギリス人の家に勤める現地の人ではその家の子供である彼女のその性質を矯正することはできず、親や他の人とのかかわりも全くといっていいほどないので、そうした性質のママ育っていた。しかし9歳の時に流行り病で乳母や親など多くの人が死亡した。そして親を亡くした彼女は存在すら忘れられて、家僕も誰もいなくなった家に一人残されて、それを怪訝に思っていたが、その家で起こった悲劇を偲ぶために来た英軍将校に見つけられその事実を知らされる。
 そうして孤児となった彼女は故国のイギリスにはじめて戻ることになる。そして背骨が湾曲する病を持つおじのクレイヴン氏が住む田舎の屋敷に引き取られる。彼は最愛の妻を亡くして以降悲しみにとらわれたまま。
 その屋敷についたメアリにひとまずつけられた女中のマーサに、インドで召使にしていたときのような横柄な態度で暴言を言って怒られる。はじめての反応に戸惑い、そしてそれまでとの変化や無力さを感じて悲しくなる。そうして泣いているメアリをマーサが慰める。
 訓練された女中ではない人の善い村娘マーサだからこそ、メアリのわがままなところを遠慮なく指摘する。そして人の善くおしゃべりな性質な彼女が普通に子供に対するような接してくることで、メアリは色々と常識を知ることになる。
 そして庭師のベン・ウェザースタッフと知り合い、彼の友人であるコマドリと彼女も親しくなる。
 クレイヴンの妻が底での事故で死亡にまでいたったために閉鎖されている庭の鍵をひょんなことから手に入れたメアリは、その秘密の花園を見つける。
 そしてクレイヴン氏に欲しいものを聞かれて、植物を育てる場所が欲しいと答える。そして誰も使っていない場所なら好きな場所を使っていいという言質をとって喜ぶメアリ。そして彼女は秘密の花園で花を育てようと決める。
 そしてマーサの弟で自然を愛し、多くの動物から愛されるディコンと知り合い、彼と共に秘密の花園で造園作業をする。
 クレイヴン氏は想像していた以上にメアリに親身に優しく接してくれた。
 彼は旅行に出かけたあとに、屋敷で聞こえていた誰かの泣き声の主を見つける。存在を知らされていなかった従兄弟のコリンで、父親のクレイヴンは妻が死んだ悲しみと、息子も自分のように背骨が湾曲してしまうという強迫観念から彼をほとんど見ようとしていなかった。
 メアリはこの屋敷にきてから思ったことを指摘する人々と出会い自然と触れ合ったことで随分と変わった。コリンはかつてのメアリと同じような立場で、今度は彼女が彼を自然の世界に導くことになる。そして父親の強迫観念と悲観の虜になった長く生きられないと思っているコリンを、彼女がマーサにされたように思ったことを直接指摘することで意識を変える。
 そしてコリンと親しくなった彼女は、彼も秘密を共有する仲間として、その秘密の花園で一緒に過ごすようになる。
 その庭の美しさ、秘密の庭での経験が生命力を養う糧になる。そしてコリンはここで養ったエネルギー、魔法の力があるといって自分を勇気付けながら、虚弱な肉体を動かしはじめる。そこで秘密にトレーニングすることで、元気になった姿を父に見せて驚かせようと思う。
 そして日に日に健康になっていくことを使用人たちにも秘密にすることで、三人とベン・ウェザースタッフはその秘密の共有にも楽しみを感じる。そうした秘密の楽しみが彼らを結束させただろうし、その試みを継続するための原動力でもあっただろう。
 そして今までとらわれていた強迫観念から抜け出し、『ぼくはずっと生きる。ずっとずっと生きるんだ。』(N4370あたり)と発するまでになる。
 そして旅行中のクレイヴン氏も久しく感じていなかった生きている感じを味わい、そうした気分のときがしばしば来ることがあった。そうして不意に彼の悲しみにくれる時代は終わろうとしていた。そして屋敷に帰ってきたクレイヴン氏は元気になった息子と再会することになり、父子ともども大きな喜びを得る。この秘密の花園で父も決定的に生き返り、また歪んでいた父子関係も再生することになる。
 そして最後に共に屋敷に帰ってきた父子の姿に驚く使用人たちの姿が描かれて終幕。ハッピーエンドでよかった。