痾 (講談社文庫)

痾 (講談社文庫)

出版社/著者からの内容紹介
忌まわしい和音(かずね)島の殺人事件の後遺症で記憶喪失になった如月烏有(うゆう)は、記憶をとり戻そうと寺社に連続放火。すると焼け跡からは焼死体が発見される。その彼のもとに「今度は何処に火をつけるつもりかい?」と書かれた手紙が届く。烏有は連続放火殺人犯なのか?名探偵メルカトル鮎が真相に迫る新本格ミステリ。

麻耶さんの1作目の翼ある闇の前日譚であり、2作目の夏と冬の奏鳴曲の後日譚でもある、麻耶雄嵩第3長編。
 この作品も、前作でも語り手だった烏有の語りで進行するが、その烏有が記憶喪失であるということで、前作の事件のことをすっぽりと忘れた状態での登場。しかもその記憶を失った理由が、バナナで滑って階段から滑り落ちたというので、開始2ページ目でそんなようなことが語られたのでその文章を読んだときは思わず脱力してしまった。
 読み進めるうちに、烏有ってこんな駄目なヤツだったかな。と思ってしまったが、まあこの駄目な感じのキャラクターでも、そんな嫌な感じはせずに、語りの雰囲気がとても良くて面白かった。
 木更津、桐璃、メルカトルと1作目は2作目で出てきた、魅力的なキャラクターが多く出てくるのがいい。