日本人初 プロスマブラーの軌跡

日本人初 プロスマブラーの軌跡

日本人初 プロスマブラーの軌跡

 kindleで読了。
 著者は2014年5月に海外の配信団体VGBootCampとスポンサー契約を結んでプロ(兼業)となった。最初のヨッシー使いのプロであり、「世界最強のヨッシー使い」と評価され、『弱キャラといわれていたヨッシーのキャラランクを9つ上げた』(N300)プレイヤー。
 冒頭でスマブラ界について書かれたのちに、自身の子供時代から現在プロスマブラーになるまでの来歴が書かれる。

 スマブラのガチ勢(競技プレイヤー)が行うスマブラのガチ対戦(真剣勝負)は、1対1のアイテムなしでの勝負でステージもある程度限定して行われる。
 スマブラの大会。2014年末の「Genesis 3」以降、任天堂アメリカはespots分野に積極的に取り組むようになったが、それまではスマブラはメーカーのサポートのない中でプレイヤー手作りで開催されてきた。『e-Sports業界は基本的には企業主催である。この点において、『スマブラ』は他のジャンルと比較すると異例であると言えるであろう。』(N131)
 スマブラ界のいままでの流れ。2作目であるスマブラDX発売から1年半後の2003年中頃から2006年までが第一次黄金期と呼ばれる。そして2008-2012はスマブラX発売でユーザーがDXとXに割れたことが契機となり人気が失われた暗黒期と呼ばれる。2013年に世界一の格闘ゲーム大会EVOにスマブラが6年ぶりに採用されて、そこで非常に盛り上がったことをきっかけに第二次黄金期が始まる。
 EVO2013では、当時最新作のXでもN64版の第一作でもなく、2作目のDXが選ばれた。DXの『特徴としては、?操作の複雑化、?テクニックの大幅な増加、?ゲームスピード、ゲームテンポの高速化の3つが挙げられ、これはそのまま競技性を持たせやすい要因になっている。』(N214)そのように技術介入度が高く、ゲームスピードも速いので実力やプレイヤーの個性が反映されやすい。
 DXはフォックスとファルコが最も性能が高いと言われている。しかしこの2キャラは防御に難があるため、ポテンシャルの低いキャラでも一発当てたらそこから撃墜まで持っていくこともできる。番狂わせが起こりうる。
 他の格闘ゲームではある程度コンボのレシピ(パターン)がキャラごとに決まっているが、スマブラではそうした必勝レシピはなく高いアドリブ力が求められる。
 そうした理由もあってDXはネット対戦機能なく、ガチ対戦にはブラウン管テレビを使うのに、非常に人気が高い。大規模大会の参加人数ではAPEX2015(DX1030、Wii U837)、EVO2015(DX1869、Wii U1926)、2016年1月のGenesis 3(DX1828、Wii U1096)と、最新作を凌駕する人気を見せている。

 『現在、企業からスポンサー度を受けているプロスマブラーの数は約30人。』(N280)著者自身も兼業でやっているように、スマブラ一本で生活しているプレイヤーはもっと少ない。
 スマブラDXのトッププレイヤー。スマブラ五神(Mew2king,armada,Mango,PPMD,Hungrybox)と神殺しLeffen。
 ヨッシーを使う理由。現在でこそヨッシーのキャラランクは中堅扱いだが一時は26キャラ中、下から6番目になったこともある弱キャラだった。
 『絶空は『スマブラDXを語る上ではずすことのできない、N64版にも『X』にもない『DX』オリジナルのテクニックである。足場に向かって緊急回避中に着地するテクニックで、これにより次の動作に早く移ることができる。緊急回避中に横方法の成分が含まれていれば、地面を滑るように左右に移動することもでき、フェイント、差し込み、移動スピードの向上など用途は多岐にわたる。』(N563)スマブラDXを象徴するテクニック。
 小学校時代はそろばん、中高では卓球。大学時代にはジャズに熱中し、山野ジャズコンテストで本選出場を決めて、音楽に一区切り。その後スマブラのガチの世界を知って、それにのめりこむ。同大学のスマブラの強い人たちと出会って、そこから熱中していく。
 久しぶりにスマブラが採用されたEVO2013に、思い出づくりも兼ねて参加。そこでスマブラ五神のMew2kingに善戦する。そして25位(696人中)となる。『この規模の大会でヨッシー使いがここまで勝ち上がってきたのは初めてとのことだった。/ この大会を機に、僕は日本最強から「世界最強のヨッシー使い」と呼ばれ始めるようになった。』(N1100)大規模大会とはいえ25位で世界最強と呼ばれたことからもヨッシーというキャラの評価が決して高くないことが伺える。
 その後APEX2014で9位となった。そのことでVGBootCampからスポンサー契約の打診が来て、プロとなる。そしてAPEX2015では参加者1024人の中で5位となる。
 現在会社員とプロゲーマーの二足のわらじで活動。サブキャラクターとしてヨッシーの苦手ステージに強いファルコを使い始めている。また最近では日本でも任天堂スマブラの大会やイベントをメーカーとして認定してサポートを行うようになったという変化があった。