厭魅の如き憑くもの

厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)

厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)

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内容(「BOOK」データベースより)
神々櫛村。谺呀治家と神櫛家、二つの旧家が微妙な関係で並び立ち、神隠しを始めとする無数の怪異に彩られた場所である。戦争からそう遠くない昭和の年、ある怪奇幻想作家がこの地を訪れてまもなく、最初の怪死事件が起こる。本格ミステリーとホラーの魅力が圧倒的世界観で迫る「刀城言耶」シリーズ第1長編。

ミステリーとホラーが混じってかなり好きな雰囲気。百鬼夜行シリーズっぽい感じで面白かった。中盤までは少しずつ読んでいたが、世界観というか作品で扱われる枠のようなものがわかった後半に入ると一気に読んでしまった。



「飛騨地方には牛蒡種と呼ばれる霊の伝承がある。」(中略)

「これがほかの生霊と違うのは、管狐や犬神など四足のつき物持ちと同じように、家筋を引くところにある(中略)この家筋のものがたとえば豊かに実った稲穂を見て『今年も豊作ですね』とくちにすれば稲は枯れ、赤ん坊の誕生祝に訪れて『なんて可愛い子なの』とほめれば子供はやがてしに、養蚕場で『よく育ったな』といえば蚕は絶滅するという――」(中略)

「そういったほめ言葉の裏には、本人さえ自覚していない妬みや嫉みが往々にして隠されていることが多い。すると自分では全くそんな気がないつもりなのに、牛蒡種が主の心の奥底に秘められた声を敏感に察して、その対象物を滅ぼしてしまうわけだ」