フラナリー・オコナー全短篇〈上〉

フラナリー・オコナー全短篇〈上〉 (ちくま文庫)

フラナリー・オコナー全短篇〈上〉 (ちくま文庫)

出版社からこの本の内容

フラナリー・オコナーは難病に苦しみながらも39歳で亡くなるまで精力的に書き続けた。その残酷なまでの筆力と冷徹な観察眼は、人間の奥底にある醜さと希望を描き出す。キリスト教精神を下敷きに簡潔な文体で書かれたその作品は、鮮烈なイメージとユーモアのまじった独特の世界を作る。個人全訳による全短篇。上巻は短篇集『善人はなかなかいない』と初期作品を収録。

途中まで、短編ひとつずつのあらすじと感想を書こうとしたけど、それが面倒になって、読むのが遅くなってきたから、あきらめて、最後のほうの作品は一文で。
フラナリー・オコナーは、短編のうまい作家と知識としては知っていたけど、読むのは初めてだった。
読み始めてから2ヶ月くらいかかった。下巻も発売日には買ってあるんだけど、まだページもあけていない。
終わりがさわやかなほうが好きなんで、作風が少しわかってくると、悪い予想を多く考えてしまいあまり読む手が進まなかったけど、読み終えれば、面白かったといえるような作品が多くてよかった。

善人はなかなかいない
家族で、車を使いフロリダ旅行へ行く途中に、おばあちゃんは若いころ一度訪ねた大農園屋敷が近くにあるのを思い出す。そしてその屋敷へ向かう途中に事故を起こし、おばあちゃんは、事故を起こす直前に大農園屋敷が違う州にあるのを思い出す。事故を起こして、家族でどうしようかと思っていたら連邦監獄を脱獄した〈はみ出しもの〉とその仲間がやってきて、家族は森の中に連れて行かれて、その後に銃声が聞こえてくる。おばあちゃんははみ出しものを改心させようとするが結局殺されてしまう。

気がつくと、「イエス様、イエス様」といっていた、自分では、イエス様があんたを救ってくれますよといっているつもりだったが、これだけだと、畜生!畜生!と呪っているようにも聞こえる。


ハリー〈ベヴェル〉は子守りをしているミセス・ニコンに一日預けられて、まず、ミセス・ニコンの家へ行き古い聖書を見せてもらったがそれを盗んでしまう。その後、説教師ベヴェルの説教を聴きに連れて行かれる。そして洗礼をされる。翌朝にベヴェルが起きると、昨日、説教師が説教をし、自身が洗礼された河にいき河の中のキリスト王国に行こうとするがおぼれてしまい、前日に、説教師の説教を聞きに来ていたじいさんのミスタ・パラダイスに助けられる。

そのうち、時間をかけてゆっくりと、ベヴェルの顔つきが変わった。自分がそれと知らずにいままでさがし求めていたものが現れ、次第に見えてくるようだった。自分が何をしたいのか、それが突然わかった。

感想
嘘をついていったベヴェルという名前だが、地の文でもベヴェルといっているのが面白かった。
生きのこるために
老婆と娘がポーチにすわっていると片腕のミスタ・シフレットというがやってきて、そのあと、その家で働き雑用などをこなして、老婆は娘婿がほしかったので、娘とミスタ・シフレットを結婚させようとする。しかし、ミスタ・シフレットはこの家にある車〈フォード〉が目的で雑用などをしている。ミスタ・シフレットは娘と結婚するが、新婚旅行に行くときに娘を途中の食堂で降ろして、車を盗ってしまう。それで、一人で運転していると途中で少年を乗せるが、少年に母親の話をするが、少年は起こって車から飛び降りた。そのあと雨が降ってきて、ミスタ・シフレットは、モービルへといそいだ。
「奥さん、人間は二つのものでできている。肉体と精神だ。」(中略)
「肉体と精神だ。肉体は家のようなもんだ。どこにも行きはしない。だがね、精神のほうは車みたいに、いつでも動いている。いつでも・・・」
不意打ちの幸運
ヨーロッパ戦線から帰還したばかりのルーファスと言う弟がコラード〈ケールの一種〉を食べたいというのでルビーはその買い物から返ってきて自分の家〈アパート〉に帰ろうと階段を登り始める。手相見のマダム・ゾリータに長くかかる病気だがそのおかげで、思いがけない幸運が来るだろうといわれた、ルビーは、マダム・ゾリータに言われる前から調子が悪いのを感じていた。三十四歳だから老けたとはいえないと思うが、三十四歳の母親がとてもふけていたことを思い出す。そして、母親がふけていた理由は、子供を八人も産んだせいだと考える、ようやく三階に着くと三階に住んでいるラヴァーンのところで少し休んでいると、それは、子供ができたせいだというが、ルビーは、母親が早くにふけていたので、自分がそうなりたくないと思っている。母親がふけた原因である、子供を産むことを考えていなかったので、その考えを否定するが、マダム・ゾリータが言っていた最後には不意打ちの幸運がありますよというのは、幸運が赤ん坊のことをいっていたのだと感じた。

ビットマンの道を歩くニワトリが一羽でも残っていたら、ルーファスはそのニワトリと一緒にいてやるためにあの村で暮らすだろう。

聖霊のやどる宮
遠い親戚の二人の少女が女の子の家へ来て、同年代の男子のウェデルとコリーが招待され、そのあと少女たちとウェデルとコリー祭りへ出かけて、女の子は家へ残って、眠っていると夜に二人かえってきて目を覚まし、女の子は、祭りの様子を聞く。

何でも、二人とも『神の協会』の説教師になるつもりだそうよ。何にも知らなくてもなれるんだって

人造黒人
ミスタ・ヘッドは孫のネルソンと田舎からアトランタへ列車で行く、ネルソンは都会〈アトランタ〉生まれであることを誇りに思っていて、ミスタ・ヘッドはネルソンとアトランタへ行き、実際の都会を見ることでネルソンの都会に対する幻想と都会生まれだという妙なプライドをなくさせようと試みる。

年をとるというのは特別の恩寵だ。人間は年齢を重ねることによってはじめて、人生をおだやかに理解できるようになり、若者のよい導き手になるものだと。すくなくとも自分の経験ではそうだった。

火の中の輪
鉄の肺と言う言葉をはじめて知った。
この作品はかなり苦手、楽しめなかった。
個人的に、この作品に出てくる、3人の子供のキャラクターが苦手
旧敵との出会い
104歳のおじいさんが、62歳の孫娘の大学の卒業式に出るという設定だけでかなり変わっている。
田舎の善人
聖書売りの青年を誘惑する、義足の女性ハルガ
解説を書いている人も、好きだといっていたが、面白く読むことができた。
強制追放者
ポーランドから逃げてきたユダヤ人をミセス・マッキンタイアが自分の農場で雇う。上巻で一番長い短編
ゼラニウム
田舎からニューヨークの娘の家へ、でてきた老人の話。
床屋
大学教授が床屋で、選挙のことで演説をする。
オオヤマネコ
盲目の男と山猫の恐怖
収穫
マチュアの小説書きの話
七面鳥
少年が七面鳥を捕まえようとする話
列車
男が、ポーターを自分の知り合いの親戚だと思い込む話