工学部・水柿助教授の逡巡

工学部・水柿助教授の逡巡 (幻冬舎文庫)

工学部・水柿助教授の逡巡 (幻冬舎文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
最初にお断りをしておくが、この作品は小説である。さて水柿君、この巻で予想どおりN大学工学部助教授のままミステリィ作家になる。きっかけはとくになく、なんとなく書き始めたら、すぐに書き上がった。それをミステリィ好きの妻・須摩子さんに見せたが、評価はあまり芳しくない。それで出版社に送ってみたら、なんと、本になることになり、その上、売れた!時間があれば小説を書き続ける毎日、そして幾星霜、水柿君は、すっかり小説家らしくなったが…。若手研究者は、こうして小説家になった。

このシリーズに興味があったのだが、1作目の水柿助教授の日常がAmazonや書店5〜6件みたがなかったので、この作品が2作目なんだけどこの作品から読んだ。
小説家を題材にして書いた本が好きなので面白かった。
エッセイや私小説のような小説。
11ページに書いてあるけれど、最初のほうを読んでいると、“だんだん、御茶ノ水女子大学の哲学者に近い雰囲気をかもし出している間も無きにしもあらずなので、”と書いてるように土屋賢二っぽい、最初のほうほどではないけど、前編にわたって若干そんな感じがするような文章。
 読みやすくて良かった。

そもそも、スピーディな展開というものが、何を持って評価されているのかが不明である。文字数割に物語の時間が早く進んでいる、という「虚構時間/文字数」というパラメータで代表される性状かといえば、そうでもない。その場合なら、時刻表とか歴史の教科書のほうがスピーディである(そのとおりだという、声もあるだろう)。もう少し、一般的にいうと、「読者を飽きさせない」「目の離せない展開」みたいな定性的な傾向だろう(27p)