彩雲国物語―はじまりの風は紅く

彩雲国物語―はじまりの風は紅く

内容(「BOOK」データベースより)
秀麗は彩雲国でもピカいちの名家・紅家のお嬢様。なのに家計は火の車。明日のごはん代を稼ぐため、舞い込んだオイシイ話に飛びついたのはいいけれど、その依頼ときたら即位間もない「ダメ王様」教育係で、しかもお仕事期間中は貴妃として後宮に入れというものだった。ほかに妃嬪のいない空室アリの後宮で、まったく女に興味ナシの困った王様と秀麗師の、奇妙な関係が始まる!第1回ビーンズ小説賞奨励賞・読者賞受賞。

僕は、少女小説の作品についてはかなり疎いのだけど、それでも知っているくらい有名な作品。
第五章の終わりのほうがミステリーとかサスペンスのようで面白い。
短いのに、一巻だけでしっかりまとまっていたのがよかった。
なかなか読む機会があまりなかったけど。面白かった

「その人の人生は、その人だけのものよ。いくつもある選択肢を自分で選んで、生きていく。
 世の中は平等じゃないわ。理不尽なことだってたくさんある。でも、どんなときだって、選べる道は必ず二つ以上あって、そこから自分で道を選んで歩いていくのよ。だからその人の人生も、幸も不幸もその人自身の責任。どんなに不幸に見えても――理不尽に思えても」
「…………」
「でもね、そういう、『選ぶ』ことすらできなくなる時があるの。津波みたいに突然襲いかかってきたものに、それまで積み重ねてきたものすべてを壊されて、さらわれて――何もかもめちゃくちゃにされてしまう。その津波は誰のせいでもないのに――人は大切なものが失われていくのをただ見ていることしかできない。何もかものみこむ津波に抗う術もなくて、ただ『生きる』ことだけがすべてになる。何かを『選ぶ』余地すらなくなる。だってまず『生きのび』なくちゃ、人生も――幸も不幸もないから」

彼は深く傷つきすぎて、自分が傷ついていることさえ知らなかった。