街の灯

街の灯 (文春文庫)

街の灯 (文春文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
昭和七年、士族出身の上流家庭・花村家にやってきた女性運転手別宮みつ子。令嬢の英子はサッカレーの『虚栄の市』のヒロインにちなみ、彼女をベッキーさんと呼ぶ。新聞に載った変死事件の謎を解く「虚栄の市」、英子の兄を悩ませる暗号の謎「銀座八丁」、映写会上映中の同席者の死を推理する「街の灯」の三篇を収録。

 3作目の完結編の鷺と雪が今回の直木賞を受賞した北村薫さんのベッキーさんシリーズの1作目。
 主人公の運転手のベッキーさんは、探偵役だと思うんだけど、直接的に真相を言わずに謎や疑問を聞いた主人公に気づかせるように誘導するだけで、真相の提示はしないという初めてみるタイプの探偵役。でも、最終的に真相を披露するのは主人公の花村英子だから、二人で探偵役ということなのかな。
 戦後の上流階級はなんか資本主義的なルールがあるので、まあイメージですけど、成金のようなキャラクタが多そうだし、戦争を経ているから暗さがあってこういう上流階級がメインの小説の舞台としてはあまり好きではないけど、まあこの小説の中にも花村の家に刀を持った男達がきたり首相の暗殺とかがあるので嵐の前の静けさではあるのだから、語り手しだいなのかもしれないけど。まだ、明るいような感じの時代(少なくとも上流階級にとっては)なので、上流階級を描いても本物のって言う感じがして。それほど嫌味にはならないよね。
 来月の初めにはシリーズ2作目の玻璃の天が文庫化するので、それも楽しみ。