美濃牛


美濃牛 (講談社文庫)

美濃牛 (講談社文庫)

出版社/著者からの内容紹介
探偵小説のDNAが息づく傑作長編!

病を癒す力を持つ「奇跡の泉」があるという亀恩洞(きおんどう)は、別名を〈鬼隠れの穴〉といい、高賀童子(こうがどうじ)という牛鬼が棲むと伝えられていた。運命の夜、その鍾乳洞前で発見された無惨な遺体は、やがて起こる惨劇の始まりに過ぎなかった。
古今東西の物語の意匠と作家へのオマージュが散りばめられた、精密で豊潤な傑作推理小説

そうか、おまえたちは無残な死体を恐れているのだな?碧玉のように光る清流を左手に見て、白いガードレール沿いに大きく曲がりながら進んでいくこの車の後部には、お前達の推察通り、首を切り取られた死体が乗っている。だが、死体は首がないことなど気にしないだろう。死者に憂いは無い。
 血が怖いのか。肉が怖いのか。骨や臓物が恐ろしいのか。だが、それらはすべて、お前たちの皮膚の下にあるものではないか。自ら皮袋に詰め込んだ血と肉と骨と臓物をなぜ恐れる?(P316)

あるものは自分は死なないと思い込み、あるものは死後の世界を思い描く。結局、どちらも同じことだ。死そのものを遠ざけるための思考。死を隠喩や象徴に還元する試み。(P321)


厚いから、読んでも後何百ページもあるのかと思って、なんか一回ある程度読んだら、次に再びこの本を手に取るまでが億劫だったけど、読み始めると、文章は読みやすいし面白いので、最後の300ページくらいは一気に読んだ。
句会のシーンは、俳句に興味ないけど、こういう風な感じで、一句ごとに評論しているのが面白くて、こういう風に俳句を紹介してある本があったら読んでみたい。
最終的には、語り手の天瀬が望んだ展開になっているのにもかかわらず、ハッピーエンドではない、不思議な終わり方。
犯人の最後の言葉で、主人公は縛られてしまったような感じ。