さようなら、ギャングたち

さようなら、ギャングたち (講談社文芸文庫)

さようなら、ギャングたち (講談社文芸文庫)

出版社/著者からの内容紹介
詩人の「わたし」と恋人の「S・B(ソング・ブック)」と猫の「ヘンリー4世」が営む超現実的な愛の生活を独創的な文体で描く。発表時、吉本隆明が「現在までのところポップ文学の最高の作品だと思う。村上春樹があり糸井重里があり、村上龍があり、それ以前には筒井康隆があり栗本薫がありというような優れた達成が無意識に踏まえられてはじめて出てきたものだ」と絶賛した高橋源一郎のデビュー作。

 わたしたちは自分の名前をつけてもらいたいと思う相手に「私に名前をつけてください」と言う。
 それがわたしたちの求愛の方法だ。
 私達は何度も名前をもったり、喪くしたりした。S・Bに会うまで、ずっと長い間、名前なしですごして来た。(P21)

 わたしの前にはGM社製の3ドア・冷凍庫つきの業務用冷蔵庫が座っていた。
 わたしはとても緊張して話を聞いていた。
 全ての詩人の父であるヴェルギリウスと話をするのも、冷蔵庫と話をするのもはじめてだった。(P170)


高橋源一郎さんの小説を読むのはこの本が初めて。
幻想小説っぽくて面白い。特に、第1部で、役所から娘のキャラウェイがその日に死ぬという通知がきてから、幼児用墓地までのエピソードがすごく好き、キャラウェイが死んでからも喋っているのとか、あと、「大観覧車」の自殺のエピソードとか、そういうのがすごく好き。
不思議なことも、語り手からはそのようなものだと自然に捉えられていて、世界が通常とは違うのに、通常と同じような書き方で描かれていて、その世界観に対する説明臭さが無くて、それで面白いという、個人的にかなり好きなタイプの小説です。ただ個人的な好みでいえば、第1部>第2部>第3部。