ある首斬り役人の日記

ある首斬り役人の日記 (白水Uブックス)

ある首斬り役人の日記 (白水Uブックス)

内容(「BOOK」データベースより)
中世末期のニュルンベルクの町で生涯に361人を刑場の露と消えさせた首斬り人フランツ親方が克明に記した日記。当時のあらゆる犯罪と刑罰が赤裸々に描かれた貴重な史料であると同時に、中世に生きる人々の興味深い人間ドラマでもある。

小説を最近あまり読めていないので、いままであまり読んだことのなかったタイプの本を読んでみた。一つ一つの記録が簡潔で読みやすいので良かった。
一つずつの処刑した記録については、数行単位、長くて数ページ程度の短いものだが、その短く簡潔に書かれている文の中には、興味深いエピソードが多々散見される。
第一部は死刑執行の記録、第二部は体罰の記録。個人的には、第一部の死刑の記録の方が魅力的なエピソードが多いように感じる。第二部の体罰のほうは、名前と出身地、刑罰だけしか書かれていないエピソードが続くということも少し飽きを感じてしまう要因だと思う。
特に印象に残ったエピソードは、一一二の人殺しで追い剥ぎが、娼婦と六週間前に関係を持ち、その娼婦が子供を産むと、洗礼をしてやったが、生きながら片手を切り落とし、その後、仲間が赤子を中に投げ机の上に落ちてきた時、彼は『おれの名づけ子は大きくなるに違いない。』さらに『悪魔の泣きっぷりを聞くがいいや』といった後で、赤子ののど笛を切り裂き、その家の小庭園に隠し埋めたエピソードや、二〇五の泥棒で人殺しが妊婦を殺して、嬰児を取り出し、嬰児の手を切り取り、侵入用の蝋燭を作った、エピソードが特に印象に残った、両方のエピソードとも第一部。
第一部の終わりと、第二部の終わりに挿入されている、二つの解説はどちらも面白い。第二部あとの方の解説で、この本からモチーフをとって作られた作品がブレンターノという人の短編があることを知り、そのエピソードは個人的にも印象に残っているエピソードなので、その短編を機会があれば読んでみたいと思った。