すべては消えゆく

すべては消えゆく (白水uブックス―海外小説の誘惑)

すべては消えゆく (白水uブックス―海外小説の誘惑)

出版社/著者からの内容紹介
晩春の柔らかな日ざしが降り注ぐパリの午後のひと時、娼婦でもあり女優でもある分身のような二人の宿命の女が性と血の儀式をくりひろげる。極めて高い小説的完成を見た巨匠の遺作。
【編集者よりひとこと】
晩秋のやわらかい日ざしがふりそそぐ美しいパリ。初老の男が右岸のシャバネ通りから出発してパレ・ロワイヤルに至り、そこから地下鉄に乗るが車内で蠱惑的な女と出会う。2人はサンジェルマン・デ・プレ駅で降りて、サンジェルマン大通りや付近の古い町並みを散策する。渋いがロマンチックな映画にしたいようなこのスケッチが、マンディアルグの手にかかると魔術的なエロスと死の物語へと変容する。あっさりしたスープの底に沈んでいた濃厚なジビエの血とでも言いたいような巨匠の遺作。

マンディアルグの小説を読むのははじめて。2ヶ月以上前に買ったまま、ずっと積んでいたけどようやく読み終えることができてよかった。
最近文庫の本ばかり読んでいて他の版型の本をあまり読んでいないので、読みはじめた時は本の手のおさまりになんとなく違和感があるような気がしていたけど、2、30ページぐらい読んだあたりでようやく慣れた。エロいなあ。いくら書き込まれてもパリの地理が想像できない、地図を読んだほうが良いのだろうけど、いちいち地図出すのが億劫で結局その細部はほとんど字面を目で追うだけで理解できなかった、こういうのは細部が楽しんだろうから十全に楽しめていないなあ。主人公とヒロインの台詞がどこか不思議な感じだったけど、なんだろうと思っていたら、訳者あとがきで演劇というワードをみて、戯曲のような台詞だったのかと得心した。
訳者あとがきに『「最後のシュルレアリスム小説」と読んでもよいかもしれない』(P185)と書いてあって、この本を読んでいるときは特にジャンルは気にしていなかったけど、『類推の山』を読んだあとに他のシュルレアリスム小説を読んでみようかと思っていたところだったので、思ったよりも早く読むことができてよかった。