タッソ エルサレム解放

タッソ エルサレム解放 (岩波文庫)

タッソ エルサレム解放 (岩波文庫)

内容紹介
イタリア・バロック文学最大の詩人トルクァート・タッソ(1544-1595)による長篇叙事詩(抄)。第一次十字軍遠征におけるキリスト教徒と異教徒の英雄たちの激烈な戦いと悲劇的な死、十字軍の勇士と異教徒の女戦士の報われぬ愛、美貌の若武者を虜にする魔女の色香……。『神曲』『デカメロン』などと並び称されるイタリア文学の古典。

原文の前や間に挿入される語りは前情報としてどういう状況かを説明してくれるのでそのおかげで状況が把握しやすく、頭に入ってきやすくていい。詩の部分も語りと、翻訳のおかげでわかりやすくて読んでて意味が分からず、筋を見失うことがないのがいい。こういう形式は、普通の小説を読むのとさほど変わりないようなペースで読むことができ、かなり読みやすくて良かった、これと同じシリーズに、カルヴィーノの語りの『オルランド狂乱』があると知って、それも読んでみたい。
解説の最後に、訳し終えたのが2002年の10月と書いてあり、そんなに前に訳されていたのに、4月に刊行されたのかと驚いた。
ペルシアの女戦士クロリンダ、ダマスカス領主の姪の呪術師アルミーダと、当時は美人と描くのには金髪であるという描写は欠かせなかったのかな。第12のエピソードで、クロリンダについてはその意味、由来はわかったけど。
侵略している十字軍側は天使の加護、助力を受けているのに、イスラム教徒たちは悪魔の側が協力しているというのは、当時はそれが受け入れやすい形だったにせよ今では読んでて違和感覚えるなあ。個々人の描写については性格としては、両方の勢力の人物が極端に美化されたり醜悪に描かれてはいないけど。
503-12の訳注、ガブリエルがマホメットを天上へ案内したという故事と、その天使ガブリエルをキリスト教徒に味方させ、イスラムの軍勢に敵対させるように描いているのは無関係ではないと読んで、そのことを知ってみると、ちょっと意地悪な感じだ。