江戸川乱歩賞と日本のミステリー

江戸川乱歩賞と日本のミステリー

江戸川乱歩賞と日本のミステリー

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江戸川乱歩賞といえば、天下に冠たる新人ミステリー作家の登竜門として認知されて久しい。本書は、歴代の受賞作を当時の世相とリンクさせながら論じたものである。取り上げられているのは、1957年度第3回受賞作、仁木悦子の『猫は知っていた』から1999年度第46回受賞作、新野剛志の『八月のマルクス』までの全47作品(2作品同時受賞の年度もある)。
「作品には時代背景が少なからず影響する」という視点から、著者は再読し批評しているのだが、こういう時代だから、こういうミステリーがうんぬんというような論調には、素直に賛成できない箇所があるかもしれない。
俄然おもしろくなってくるのは後半。時代が進むにつれて、各選考会の内幕や、作品自体への著者の手厳しい評価が前面に出てくるあたり。著者は、ダテに予備選考委員を15年以上も務めているわけではない。1989年度受賞作、長坂秀佳『浅草エノケン一座』をはじめとして、かなり辛口にやっつけている(逆にここまで言われるとやっつけられた本を読みたくなってくる)。辛口採点の理由が述べられているくだりなんぞは、乱歩賞獲りを狙っている人たちのみならず、小説家を目指す人たちにも、十分役立つはずだ。
しかし、著者の意図はもとより小説指南や楽屋話にあるのではない。ミステリーとは何か、江戸川乱歩賞とは何かについての思考の集大成が本書なのだ。(文月 達)

文学賞メッタ斬り』を読んでから気になっていた本、amazonで購入可能になっていたので早速購入し読了。もっと賞の選考の内幕とかが多く語られているのかと思っていたけど、案外そういうものの分量は少なめ。当時の社会の状況とミステリー界、江戸川乱歩賞の受賞作をあわせて語るというスタイルだけど、当時の社会状況にページをかなり多く割いているけど、その部分は個人的にはあまり楽しめなかった。この本を読んで、藤本泉さんの小説に興味を持った。あと、陳舜臣さんの本も有名だけど読んだことがないので読まなくちゃな。