天智伝

天智伝 (中公文庫)

天智伝 (中公文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
大化改新、白村江の戦など、内政・外交ともに多難であった律令国家樹立期日本の指導者天智。その生涯は血なまぐさい殺戮にいろどられ、天智を誹謗する民衆の言も残されている。はたして、天智は非情な人物だったのか。『日本書紀』『三国史記』『新唐書』を手がかりに描いた、日本古代史最大の政治家波瀾の生涯。

天智について、まとまった本が読みたかったので読了。
「謎の豪族 蘇我氏」を読んだばっかりだから、渡来系という説はいまいち根拠が乏しいらしいので少し気になった。まあそうした些事を気にしてもしょうがないとは分かっていても、直近で読んだ本との異同はやっぱり気になっちゃうよね。それに文庫化で20年前(新刊の棚にあったから読んでいるときは気がつかなかったが、改版だった)、単行本が35年前の作品だから蘇我氏についてのイメージも再評価はまだされていない頃(だよね?)だから仕方ないか。
始まりは推古朝から、蘇我氏については今までヒールという印象無かったが見事な悪役ぶり、これが通説的な蘇我氏のイメージか、飛鳥時代の歴史の本はそれに対する反論としての蘇我氏像を読むことが多かったがこういうのがそうか。
中臣鎌足(鎌子)については、「謎解き 古代飛鳥の真実」で中臣は後の創作じゃないかという説を見たから、やたらとすごそうに描かれてはいても、どうも誇張されているように見えてしまうねえ。永井さんの小説の北条義時を見た時と同じような感覚。
斉明崩御後の中天皇、間人皇后。どこかでこの人の存在を知ったけど(ぼんやりとした印象しか残ってないや)、すっかり忘れていた。しかし、中大兄皇子が孝徳(軽皇子)は改新の首謀者説があるから言いとしても、斉明の「重そ」と間人皇后を中天皇とするというので少なくとも二度天皇につくのをパスしている(ようにみえる)のが解せないなあ。
『すでに大錦上(正四以上に相当)と目下最高の官位にあるのは赤兄であり』(P246)最高の官位で正四以上相当って、その当時の官位は相当低く抑えられていたのか、それとも後にどんどん上に階位が付け足されていったのかどっちだ。