三銃士 中

三銃士 中 (角川文庫)

三銃士 中 (角川文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
枢機卿の陰謀にあわや身の破滅かと思われた王妃の危機を、見事救ったダルタニャン。ほっとしたのも束の間、謎の妖女ミラディーが登場、あらたな冒険の幕が切って落とされる。ダルタニャン、そして三銃士の運命やいかに?義侠心に満ちた男たちが、フランス中を駆け巡る!恋と活劇に彩られた物語の佳境。

 読みはじめたら読みやすくてさくさく読むことができたのは、さすがに長く読み継がれている作品だなあ、と感心した。電車の待ち時間(乗っている最中に読むと、のっているのが10分に満たなくともてきめんに酔うのでw)とか短い時間でちまちまと読んでいたのだが、そんな短い時間でもすぐに入り込める(というと強すぎるか?なら、「楽しめる」かな)ような作品なのはよかった。そうした短い時間でぶつ切りに読むとどうも普通に読むよりも楽しめない感じなのことがほとんどなのだが(だから本当に時間潰すだけになってしまう)、この本に関しては、そんな短い時間の読みはじめで、ある程度世界観に改めて馴染むまでに時間がかかって、ようやく気分が乗ってきたなと思ったら、もう電車が来たりして読むのを止めなくてはならない。という風になることは、この本の場合そういうことはまったく感じさせない稀有な読み物だ、この物語世界への入り込みやすさはすごいよ、本当に。こういう風な本がもっとあれば良いのにな、というか7冊もあるからずっとかうのをしり込みしていたがついに「モンテ・クリスト伯爵」を買うべき時が来たということかな(笑)

 冒頭、バッキンガムに会ってからは、さしたる苦難もなく実にテンポよくことが進むなあ(笑)
『彼は手拍子を三つ打った。恋人達がよくやる合図である。』(P50)こういう今まで知らなかった、過去のジェスチャーとかを知るのは、きっとすぐに忘れてしまうんだろうけど、そうしたのを見るのは本当に理由なく好きだわ。世界のジェスチャーを図解つきでまとめたいい本なんかないかなあ、あったらぜひ読みたいのだが(前も言ったから繰言になってしまうが)。

 ダルタニャン、帰ってきて三銃士たちを探しに、彼らが足止めして(されて)いたさいのエピソードがそこで語られる。こうやって所定の目的を終えてから、個々のエピソードが語られるという形式案外好きかも。というか、出発してから目的を達成して帰国するまでのスピード感(テンポのよさ)はすごいな。

 アトス、酔ってしてしまった『知り合いの領主』の話をダルタニャンから誤魔化すために、わざと賭けで馬を手放したのか?ダイヤはそれでも誤魔化しきれないようだから、と追加で言った嘘ってことでいいんだよね?(本当だったら、アトスおかしいぜ。というか、人事ながら笑い飛ばせず、顔が引きつるような話になっちゃうぞ)

 ミラディー、男の名かと勘違いしていたw、あのときの女が再登場してくるとは思わなかったからなあ。ダルタニャンがミラディーを騙した話酷い、変に共感させないタイプの主人公なのも、この読みやすさに繋がっているのかなあ、個人的には正直主人公がこういう因縁でちょっと窮地に陥っても、それを読んでいても、自業自得感があるからしんどくならないので(笑)。ミラディーも、復讐するときの、試行の早さといくつもの手を打つ万全を期す念入りさは大概おかしいけどなあ。

 バッキンガムとか、リシュリューが王妃に恋しているという設定、橋本治さんの「双調平家物語」を読んで、どうも僕は恋愛やら肉欲で国事が動いたという説明のつけかたは、嫌いだという自覚をしたんだが、「三銃士」ではそうした拒否感がでないのは何故だろうかなあ?とくに意識せずともファンタジー(現実ではないことを作者もそう捉えられることを意図して、それを読者に伝えようとしていることだ)と捉えられる、いい意味で人間臭くないキャラだったり、ダルタニャンの筋とは絡んできても、所詮背景(舞台装置)でのことでメインに据えられていないからか。単に「双調平家」では、歴史小説(だよね?)でそんなことを書かれているのを読むのが耐え難く感じた、というそれだけの理由かもしれないけどね。