10月に読んだ本のまとめ

2013年10月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:5798ページ
ナイス数:375ナイス

アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書)アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書)感想
現在のアフリカの抱える問題、例えば国民という意識が希薄で政府高官が国民の利益ではなく出身部族の利益で動いていることや、多くの中国人がアフリカ進出しているが彼らはそこで稼いだお金を母国に送金してしまうため現地が潤わないといった問題など聞き覚えのあるものを、そこそこの分量まとめて読めるので現代アフリカ入門にはちょうどよい塩梅の本だ。しかし中国人のアフリカ進出は個人でビジネスチャンスと見てアフリカ進出する人も多く、それを見ると彼らは本当にたくましいなと改めて思う。(続く)
読了日:10月31日 著者:松本仁一
イスラームの「英雄」 サラディン――十字軍と戦った男 (講談社学術文庫)イスラームの「英雄」 サラディン――十字軍と戦った男 (講談社学術文庫)感想
いくつもの国で過激イスマイール派での暗殺者(アサシン)によるスンナ派の要人の暗殺が横行した。サラディンも暗殺者に頭部をナイフで切りつけられたが、斬撃を鎖帷子が運良く防いだため死ななかったという危機一髪な経験があった。『降伏した敵に条件つきで安全保障をあたえることは、イスラーム社会ではムハンマド以来の古い慣行であった。サラディンが身代金の支払いを条件に捕虜を釈放したのは、実はこの慣行に従ったまでであって』(P193)サラディンの個人的な美質ではなく、イスラーム社会の習慣であり美質だったのか。(続く)
読了日:10月31日 著者:佐藤次高
大聖堂・製鉄・水車―中世ヨーロッパのテクノロジー (講談社学術文庫)大聖堂・製鉄・水車―中世ヨーロッパのテクノロジー (講談社学術文庫)感想
輸入されたインディゴは青色染料となるが不溶性のため欧州の職人は使い方がわからず、絵具に使われるだけだった。しかしヴェネツィアの染物屋が、インドで実際に見た染料処理の工程を記したマルコ・ポーロの書を参考に染料として使えるようにしたというのは面白い。まさかマルコ・ポーロの本がそんな風に役立っていたとは予想外だ。それと13世紀の都市ではローマ式の公共浴場も珍しくなかったが、混浴が原因のスキャンダルが続いたため14世紀になると多くの浴場は閉鎖されたということで、13世紀には公共浴場が珍しくなかったというのは意外。
読了日:10月28日 著者:ジョゼフ・ギース,フランシス・ギース
貴族探偵 (集英社文庫)貴族探偵 (集英社文庫)感想
貴族制の残る現代日本という設定。貴族探偵は状況を使用人に調べさせるだけでなく、推理もその使用人に任せるなんて安楽椅子探偵どころかの騒ぎじゃない!自分で推理すらしないで探偵なんて斬新過ぎる。それでも探偵なのかという当然浮かぶ疑問に対して、貴族探偵は使用人たちは「私の頭脳」で所有物だから、自分がやっているのと変わらないと説明している(笑)。貴族探偵の代わりに名探偵の役割を務める使用人は3人居るが、彼らが代替可能な存在として描かれている一方で、貴族探偵には名探偵らしい華や個性的なキャラクターがあるのが面白い。
読了日:10月27日 著者:麻耶雄嵩
終物語 (上) (講談社BOX)終物語 (上) (講談社BOX)感想
老倉が阿良々木へ悪感情を露骨に出した喧嘩腰の態度なので彼女への第一印象が非常に悪くなる。阿良々木が昔の記憶を思い出すと、老倉の彼への態度の理由もわからなくないと思うようになる。だが阿良々木くんが(個人的な後悔はともかく)責任を負うべきことではないので、そんな彼にあたる老倉へのイライラはまだ収まりきらなかった。しかし最後に老倉が『だけどさあ、お前のせいにでもしなきゃ、やってられないんだ、阿良々木、申し訳ないけど、私の悪者になってよ』と心情を吐露し、弱音を言っているのを見ると彼女のことを嫌いになれなくなった。
読了日:10月27日 著者:西尾維新,VOFAN
死の家の記録 (新潮文庫)死の家の記録 (新潮文庫)感想
再読。読メ初登録。社会のどん底で暮らす人がわざと罪を犯して監獄に入るが、彼らにとって厳しい自由社会よりも監獄は心地のいい場所、という現在問題になっていることが150年前にも起こっていたことに驚く。それからサディストのジェレビャトニコフ中尉は、笞刑前に同情してもらい手加減してもらおうとする囚人に対し、情け深く理解を示しているふりをするが笞刑を行う段になると、兵士たちにやつを打ちのめせ!思い切り打て!と叫びたて、悲鳴を上げている囚人を見ながら腹を抱えて爆笑しているという情景はゾッとするが非常に印象的。(続く)
読了日:10月25日 著者:ドストエフスキー
文庫 徳川慶喜家の子ども部屋文庫 徳川慶喜家の子ども部屋感想
徳川慶喜家といっても最も若い世代の孫で、慶喜の死後に生まれているため慶喜が描かれる挿話は少ない。父が幼少時に亡くなり、母は有栖川宮家出身であるため当時の徳川慶喜家の雰囲気は武家風というより宮廷風だったようだ。著者の子供の頃の日記が引用されているが、それがあまりにもイメージ通りのお嬢様といった文体なのでなんだか感動する(笑)。『日本舞踊は下方のもので、お上方はあそばさぬものだったからだ』そういわれて江戸時代とかを考えたら納得できないこともないが、日本舞踊は良い家の人が習うものという印象があるから意外だった。
読了日:10月19日 著者:榊原喜佐子
戦力外捜査官 姫デカ・海月千波 (河出文庫)戦力外捜査官 姫デカ・海月千波 (河出文庫)感想
本作の名探偵役の海月が連続放火事件を捜査していて不自然に感じた犯行現場を調べていたら、昔の農薬でサイロームという青酸ガスをだす毒ガス兵器として使えるものが出てきたによって犯罪のスケールや物語の緊迫感が一気に増してワクワク。そして犯人が毒ガステロを行う場所が突き止められても時間的に切迫して、上手く犯人を瀬戸際で食い止められるかという緊張感が最後まであって面白かった。最後に腹を撃たれて重症な越前刑事部長が犯人に自分で血塗れの手錠を掛けるシーンは、その行為の狙いを知ってもやっぱり格好いいな。
読了日:10月18日 著者:似鳥鶏
洟をたらした神 (中公文庫)洟をたらした神 (中公文庫)感想
「春」開墾する作業を書いた後に『骨の折れる仕事でした。しかし少しでも広い畑を持ちたいのです。』と感傷的にならず直裁にものを言っているからその切実さが伝わり、読んでいて胸に突き刺さる。「洟をたらした神」貧しさから、甘えたりねだったりしない子供がはじめてヨーヨーをねだっても、それを買う2銭でもキャベツ1個、大きな飴玉10個、小鰯15匹が、なんてすぐに考えてしまい、来年小学校に上がるときにはクレヨン、筆、かばん、帽子……一杯買ってやるよ、なんていって誤魔化さなければならないのは悲しい。
読了日:10月17日 著者:吉野せい
中世ヨーロッパの都市の生活 (講談社学術文庫)中世ヨーロッパの都市の生活 (講談社学術文庫)感想
遠隔地商業で栄えていた1250年トロワという人口1万人の都市を具体例として当時の都市での諸事が書いてある。ちなみに当時の人口が1万人以上の都市はイタリアなどには多くあったが、北ヨーロッパには10個あっただけ。13世紀当時のヨーロッパでは裕福な市民の家でもカーペットを敷くことは稀で、床には藁などを敷いていたとは全く知らなかったので驚いた。『中世では誓いはすべて聖遺物に対しておこなわれた』(P133)聖遺物に対して何かを誓うことがあることや神でなく聖遺物に誓うのが中世では一般的だったということには吃驚した!
読了日:10月16日 著者:J.ギース,F.ギース
アクセル・ワールド (15) ―終わりと始まり― (電撃文庫)アクセル・ワールド (15) ―終わりと始まり― (電撃文庫)感想
今回は全編ニコ奪還のためのバトルで終わり。そしてまた(つづく)……そろそろこのISSキットの話を一段落させて欲しいところだ。メタトロンは偉そうな感じで喋っているけど、聞かずともかなり色々なことを詳しく教えてくれているのをみるとかなり優しいよね(笑)。先代赤の王の幽霊、残留思念のようなものが利用されていたようだが、意思が保っていられる状態である間の彼の言動を見ると伊達男っぽい感じでなかなか素敵だね。そして能美さんもそういった形で再登場したと思ったらあっという間に再退場したなあ(笑)。
読了日:10月13日 著者:川原礫
魔法科高校の劣等生 (12) ダブルセブン編 (電撃文庫)魔法科高校の劣等生 (12) ダブルセブン編 (電撃文庫)感想
今回は雫の弟、隅守賢人、黒羽文弥とショタ、美少年、男の娘が登場して、彼らは達也に尊敬などの好意を抱いているなど、なんだか達也は年下の男の子にモテモテだ(笑)。黒羽文弥は姉の趣味がふんだんに含まれた仕事着である女装時のイラストはとっても可愛い!そして達也と十三束の試合は熱い格闘戦となっていて面白い。十三束がかなりガチな達也と互角な戦いを繰り広げているのは驚き。そして琢磨の目から見る、2人(特に達也)の超絶技巧の魔法を用いた攻防はすごく面白い!また琢磨が達也の技術の凄さに驚いていることには思わず笑みが浮かぶ。
読了日:10月12日 著者:佐島勤
ヒア・カムズ・ザ・サン (新潮文庫)ヒア・カムズ・ザ・サン (新潮文庫)感想
「ヒア・カムズ・ザ・サン parallel」岩沼の言った、親を許すのには、その前に親を諦める段階が必要だという指摘は目から鱗!真也はカオルの父の思いを知ったためカオルともう一度会わせようとしてカオルを何度も説得したが、それに対しカオルが私だって自分が折れたほうが手っ取り早いことはわかるけど、何も悪くないのに折れたくない、みんな私に大人になれと言うばかりで誰も味方してくれない、といったのは、自分もやられたら嫌なのにその気持ちを汲取れなかったので、真也と一緒に自分もカオルに謝りたいような気持ちで一杯になった。
読了日:10月6日 著者:有川浩
ココロコネクト プレシャスタイム (ファミ通文庫)ココロコネクト プレシャスタイム (ファミ通文庫)感想
「わたしだけのお兄ちゃん」は太一の妹視点での話。冒頭のカラーで妹のイラストが描かれているが太一の妹莉奈が思ったよりもずっと可愛くてびっくりした。太一がシスコンなのも理解できてしまえるほどだ(笑)。「カップルバトルロイヤル」藤島が企画を開催するのに尽力したが、自分がそれに出るパートナーを決めていなかったことにイベント当日に気づいて吃驚しているのは、藤島は案外抜けているのねと思わず微笑みが浮かぶ。そして渡瀬の思いが実り藤島と無事にカップルになれたのはとても嬉しい。
読了日:10月4日 著者:庵田定夏
ファンタジスタドール イヴ (ハヤカワ文庫JA)ファンタジスタドール イヴ (ハヤカワ文庫JA)感想
巻末の解説を読むまで「ファンタジスタドール」というアニメの前日譚だとは想定外だった。しかし解説にアニメ「ファンタジスタドール」は『女の子がたくさん登場する明るく楽しいアニメを作りたいという思いから始まった』とあり、この本のトーンと全然違うから思わず吹いてしまった。この小説では語り手の大兄が回想して書いた手記という体裁であることや原作があるということもあり今回は真面目でちょっと暗めなトーンに終始していて、いつもの笑わせるような地の文や言葉遊びなんかはなかった。
読了日:10月3日 著者:野崎まど
ある出稼石工の回想 (岩波文庫)ある出稼石工の回想 (岩波文庫)感想
1830年の革命の際、共同の事業をしていた叔父と父が破産して父は1万1000フランの負債を負い、長きに渡る借金返済の日々が始まった。初めは毎年父子二人が出稼ぎで働いても年に500フランずつしか返済できなかったが、1842年に3年ぶりに帰郷したナドがいい仕事に恵まれ4000フランも持ち帰ったので翌年に完済する目処が立ち、苦しんだ日々も終わりが見えた。それを見た時に家族はあまりの喜びに涙で声が出せなくなるほど感激し、それからそのお金をテーブルの上に並べて深夜2時過ぎまで見蕩れていたというシーンはとっても好き。
読了日:10月3日 著者:マルタン・ナド
冬の鷹 (新潮文庫)冬の鷹 (新潮文庫)感想
前野良沢青木昆陽の門下だったとは驚き。腑分けを見学してターヘル・アナトミアの正確さに感嘆、興奮して玄白が翻訳への熱意を見せ、良沢や淳庵が同じ熱意で賛同した。当時もう壮年や老境といった年齢の彼らが強い熱意を表に出しているのを見ると感動や熱意が伝わってきて高揚してくる。昆陽の著作や長崎で知ったわずかな単語と仏蘭辞書の説明(それを読み解くのも大仕事)、そして意味を類推する尋常でない執念と集中力を頼りに、一語も訳せずに一日が終わる状態から抄録とはいえ訳し始めてわずか3年5ヵ月で解体新書を本に仕上げたとは衝撃的!
読了日:10月2日 著者:吉村昭

読書メーター


ラ/////5
小/////5
エ//
ノ//
歴///


ファンタジスタドール イヴ」ライトノベル換算。



ライトノベル 5
小説 5
エッセイ 2
ノンフィクション 2
歴史 3


10月は本がろくに読み進められなかった。月に20冊は最低限読めるようにしたいな。

10月に読んだ本の中で特に面白かったもの。

死の家の記録

死の家の記録 (新潮文庫)

死の家の記録 (新潮文庫)

 色々と印象に残るようなエピソードが多数あって良かったな。
「戦力外捜査官 姫デカ・海月千波」 似鳥さんのシリーズの中では、「理由あって冬に出る」などの伊神さんシリーズの次に好きだ。
魔法科高校の劣等生 (12) ダブルセブン編」 ついに新章。完全に新しいエピソードはかなり久しぶりということもあってワクワクとした気分で読み進めることが出来た。