12月に読んだ本のまとめ

2013年12月の読書メーター
読んだ本の数:18冊
読んだページ数:6360ページ
ナイス数:309ナイス

燃える平原 (叢書 アンデスの風)燃える平原 (叢書 アンデスの風)感想
短編集。この本で特に面白かった短編は「追われる男」「犬の声は聞こえんか」「アナクレト・モローネス」。「追われる男」追う者、追われる者の描写が緊迫感あって好きだ。「犬の声は聞こえんか」刺されて瀕死の傷を負ったアウトローの息子を背負って、医者に診せるために町へと歩を進める老父。息子は町まで持たずに息を引き取ったが死んだ息子をそのまま負って町が見えるところまで行って「おまえってやつはこんなちっぽけな希望さえわしに与えちゃくれなかったな」と息子の死体に向かって話しかけているのは泣けた。(続く)
読了日:12月31日 著者:フアンルルフォ
オーバーロード5 王国の漢たち [上]オーバーロード5 王国の漢たち [上]感想
冒頭の折れてしまったブレインとガゼフが雨の中で邂逅したシーンはいいなあ、絵になる。ラナーのイラストは良い具合に本性がにじみ出ていていいね。八本指の拠点の1つに突入するまでの流れが、セバスがクライムにちょっとした訓練をつけてやっているのをブレインが見て、クライムの心の強さに感銘を受けて立ち直り、3人で討ち入りに行くというのはよりスピーディになっていて面白い。そしてブレインがセバスを仰ぎ見るようにしているのは読んでいてなんだか楽しい。
読了日:12月31日 著者:丸山くがね
暗殺国家ロシア: 消されたジャーナリストを追う (新潮文庫)暗殺国家ロシア: 消されたジャーナリストを追う (新潮文庫)感想
ロシアの報道が、規制や新聞・テレビが経営難で政府系の会社に買収された結果、事実上政府に統制されているとは驚き!そんな中で稀な政権への批判をするメディアであり、ほぼ唯一の本格的な調査報道を行っている「ノーバヤガゼータ」という新聞社について書かれている。しかしそうしてストレートな権力批判をしているため、わずか20年の歴史で5人の記者と顧問弁護士が1人殺されている。ロシアでは2000年代だけでも48人のジャーナリストが自身のジャーナリスト活動が原因で殺されたとみられている。(続く)
読了日:12月31日 著者:福田ますみ
ボクには世界がこう見えていた―統合失調症闘病記 (新潮文庫)ボクには世界がこう見えていた―統合失調症闘病記 (新潮文庫)感想
精神病を患った人が発病時のことを克明に記した記録。発狂してからの文字通り現実が一変した体験をここまで克明に覚えていて、記しているのは興味深かった。そのあたりの描写を読むと、まるで幻想小説の世界のようだ。手や足を震わせながら、多くの人間と交信して圧倒的な至福感に包まれたという感覚を味わったり、あらゆるものが自分へのメッセージに見えてきたり、誰もが知人に見えたりあるいは好みのタイプに見えたりする幻覚を体感する。こうして自分の知覚すら信用ならなくなってしまうというのは、想像するだけで恐ろしい。(続く)
読了日:12月30日 著者:小林和彦
ノーゲーム・ノーライフ2 ゲーマー兄妹が獣耳っ子の国に目をつけたようです (MF文庫J)ノーゲーム・ノーライフ2 ゲーマー兄妹が獣耳っ子の国に目をつけたようです (MF文庫J)感想
1巻が面白かったので、間を開けずに続けて読了。ステフが色々と運動していたおかげで貴族の反発を抑えていたというのを聞いて、空白兄妹は「ステフって実は……馬鹿じゃ――ない!?」ととても驚いているけど実際ステフは異世界から来たのだから味覚が違うかもということを誰にも言われずとも気づいているから間違いなくバカじゃないよ!ただ、ゲーム万能の世界でゲームがちょっとばかし弱いだけだよ!それからジブリールとのゲームはそのしりとりにあるまじき壮大なスケール感は面白かった。
読了日:12月30日 著者:榎宮祐
叫びと祈り (創元推理文庫)叫びと祈り (創元推理文庫)感想
外国が舞台の連作短編ミステリー。その土地の習俗がしっかりと真相に結びついていることや特殊な犯行動機が荒唐無稽なものとならずリアルなものと感じられるのが面白い。著者は最初にある一つの情報を隠しておいて誤認させて、最後にパッとその情報の覆いを取って真実の姿を見せることで驚かせるという趣向が得意なようで「砂漠を走る船の道」ではそれを見事にやられた。「砂漠を走る船の道」にはそうした驚きがあり、ラストの急転かいっぷりも良かったのでこの本の中で一番好きだな。
読了日:12月29日 著者:梓崎優
連合赤軍物語 紅炎 (プロミネンス) (徳間文庫)連合赤軍物語 紅炎 (プロミネンス) (徳間文庫)感想
連合赤軍になる前の赤軍派と革命左派という2つの流れの連合を組む以前の歴史があって、そしてその2つの団体の性格の違いと連合を組む際のヘゲモニー(主導権)争いで些細な点を問題視したことからリンチ殺人という惨劇が始まった。両派は武装闘争路線ということは一致しているが赤軍派は「良くいえばおおらか、悪くいえばいい加減」な気質で大言壮語するのに対し、革命左派は「一旦口にしたことは必ず実行しなければならない」という気質だった。(続く)
読了日:12月27日 著者:山平重樹
ログ・ホライズン7 供贄の黄金 【ドラマCD付特装版】ログ・ホライズン7 供贄の黄金 【ドラマCD付特装版】感想
複数のレイドボスが移動してきて一緒に攻撃してくるというゲーム時代にはありえなかった現象によって全滅して、もうこの世界では攻略なんてできないんじゃないかと絶望感が漂う中で、シルバーソードのギルマスであるウィリアムのあふれ出る本気の言葉、血の出るような叫びでこのゲームに費やしてきた自分たちの情熱を、誇りを語ることで仲間を奮い立たせるシーンは素晴らしい。本当に格好いいし、彼の言葉には心が動かされる。他にもこの巻は見せ場が満載だし、この世界の変化も色々と出てきてとても面白かった。(続く)
読了日:12月26日 著者:橙乃ままれ
中世ヨーロッパの農村の生活 (講談社学術文庫)中世ヨーロッパの農村の生活 (講談社学術文庫)感想
13世紀後半の英国・エルトンという人口5、600人と平均的な規模の村を舞台にして、村での生活の諸事が、酒に酔って井戸や池に落ちて死んだり、飲酒により暴力沙汰を起こしたりなどの具体的な挿話も含めて、細かく書かれており、読んでいると血の通った人間や生活が見えてくる。土地を生前に譲渡するときは息子と契約して、例えば一定量穀物を死ぬまで毎年提供する義務を負わせるなどの契約を締結することがあったというのは「訳者あとがき」にも書いてあるが非常に現代的。(続く)
読了日:12月24日 著者:F.ギース,J.ギース
喧嘩両成敗の誕生 (講談社選書メチエ)喧嘩両成敗の誕生 (講談社選書メチエ)感想
興味深く印象深いエピソードが多数掲載されていて面白く、また歴史の本としては抜群に読みやすい!室町時代には侍だけでなく僧侶や一般庶民にも非常に強い名誉意識を持っていた。武家や寺社、その他諸身分集団は『ひとたび個々の構成員の身に危害が及んだとき、その危害を自らが受けたものと同等のものと考え、構成員を支援したり、ときには報復に乗り出すことも惜しまなかった』ため、現代から見れば些細な出来事が発端となって名誉を傷つけられたと感じ殺傷を起こし、両当事者の所属する集団が一触即発の状況になることも珍しくなかった。(続く)
読了日:12月19日 著者:清水克行
名将の言葉: 乱世を生き抜く101の奥義 (新潮文庫)名将の言葉: 乱世を生き抜く101の奥義 (新潮文庫)感想
副題通りというべきか、教訓的な言葉が多かったが、個人的にはそうした発言に感銘を受けることが少ないのでいまいち心に引っかからなかった。石田三成の斬刑に処せられる前の言葉が2つ載っているが、それらは場面が場面だけあってどちらも気迫を感じられるので、これらの言葉は魅力的だ。結城宗広のいつも死人の首を見ていないと気分がくさくさするという意味の言葉は強烈だが、『男衾三郎絵詞』にも同様の言葉があるので、当時の武士の一部にはそういった、現代からは想像も付かない、メンタリティーを持った人がいたようなのは驚く。
読了日:12月17日 著者:本郷和人
ノーゲーム・ノーライフ1 ゲーマー兄妹がファンタジー世界を征服するそうです (MF文庫J)ノーゲーム・ノーライフ1 ゲーマー兄妹がファンタジー世界を征服するそうです (MF文庫J)感想
私人間や国家規模まで様々な争いごとを全てゲームで解決する、ゲーム万能な世界へ最強のゲーマーである主人公兄妹は転移する。ステファニーとのゲームでの勝敗での賭けとして「俺に惚れろ」なんて欲望全開の最低な願いをここまで堂々と言う主人公は珍しい、しかも妹の面前で(笑)。ここまでド直球だとすがすがしいわ。しかしステフは空と白の兄妹は異世界から来た人だから味覚などの基準も違うのでは?ということに誰にも言われず気づくとは彼女は本質的に聡明なのだな。ゲーム(というか駆け引き?)はその……あ、あまり上手くないみたいだけど。
読了日:12月16日 著者:榎宮祐
ソードアート・オンライン プログレッシブ (2) (電撃文庫)ソードアート・オンライン プログレッシブ (2) (電撃文庫)感想
プログレッシブ」ではアスナとキリトの関係がライトノベルでよくあるツンデレ的なヒロインと気弱な主人公っぽくなっているのが残念。キズメルの風呂シーンの挿絵はとてもセクシーでいいね、無防備なお姉さんはキャラ好きだ。連続するクエストでボス攻略に必須なクエスト報酬があるという偽情報があったが結果としては、瓢箪から駒で、解毒potを持っていくようにという情報をくれた。しかし解毒potは基本として当然持っている物だから、その情報を攻略組の面々にキリトが伝えたら微妙な空気に包まれたという場面は妙に好き(笑)。(続く)
読了日:12月14日 著者:川原礫
たった独りの引き揚げ隊  10歳の少年、満州1000キロを征く (角川文庫)たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く (角川文庫)感想
序章では引き揚げ時、サンボで国際戦41連勝を達成した場面、そして現在が1シーンずつ書かれているがとても魅力的で素晴らしい。独り列車から放り出されたのに「太陽が一個、ナイフが一本。それさえあれば、生きて、歩ける」と思い、黙々と行動に移しているのは子供ながら格好いい。物取りの多い線路の周辺から離れて独りで曠野を南へと進む。そこで少年ビクトルはコサックとしての教育を生かして自然から多くの情報を読み取りたくましく行動している。ビクトルは落ち込まないようにしているので話の雰囲気が沈鬱にならないのでいいな。(続く)
読了日:12月12日 著者:石村博子
ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり〈2〉炎龍編ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり〈2〉炎龍編感想
ダークエルフの戦士たちが仲間の敵である炎龍を前に頭に血が上って、炎龍討伐のため配られたロケット発射筒の注意事項をすっかり忘れ、後ろの安全確認を怠り即座に攻撃したせいで他の仲間が死ぬというような混乱した状況にはリアリティがあり、戦闘も緊張感があって面白かった。亜神ジゼルを引かせるために伊丹の強さについて勘違いさせようと試みるが、その目論見は失敗して伊丹たちは逃げた。しかしその直後に自衛隊の援軍が来て超遠距離からジゼルたちを攻撃したので、ジゼルはこれがイタミヨージの力か!と勘違いをして驚愕しているのは笑った。
読了日:12月11日 著者:柳内たくみ
素数の音楽 (新潮文庫)素数の音楽 (新潮文庫)感想
リーマン予想をめぐる話。この予想が正しければという前提で成立している定理が何千(!)もあり、リーマン予想が証明されれば巨大な素数を直ぐに探し出すことが出来る。しかし素数が使われているイービジネスのセキュリティーの安全性は、素数に関する基本的な問題つまりリーマン予想が解けないという事実によって保障されているので、リーマン予想が解かれるとインターネットで使われる暗号の安全性そして国家の情報機関で使われている暗号の安全性が損なわれてしまうなど、現実世界への影響も大きい問題にもなっている。(続く)
読了日:12月10日 著者:マーカスデュ・ソートイ
バカとテストと召喚獣12 (ファミ通文庫)バカとテストと召喚獣12 (ファミ通文庫)感想
本編最終巻。美波は凹んでいる明久に対して慰めるわけでも発破かけるわけでもなくただ自分の思いを告げることで彼の迷いを断ったが、それは明久にとって最高の処方箋となったね。このシーンで一気に美波のことが好きになった。最後の挿絵、イラストだけ見れば次のステージへ踏み出していくという明久と雄二って感じで格好良く見えるのだが、実態はFFF団の処刑から逃げるために窓から闘争しようと窓枠に足をかけている、こうやって最後までしまらないのは彼ららしい(笑)。
読了日:12月9日 著者:井上堅二
パリ・ロンドン放浪記 (岩波文庫)パリ・ロンドン放浪記 (岩波文庫)感想
パリ編の序盤はスラムでの自らの貧乏生活が描かれ、後半では当時の高級ホテルやレストランの不衛生な内情の告発的な内容。ロンドン編では安宿や浮浪者臨時収容所を渡り歩く浮浪者生活の実体験が描かれている。解説にも後半のロンドン編は前半のパリ編よりも「明るさや活気はない」とあるように前半のパリ編の方が面白い。パリ編のパートナーであるボリスと序盤での仕事がない時期の極貧生活はろくに食べられずに切羽詰っているのだけど面白い。(続く)
読了日:12月3日 著者:ジョージ・オーウェル

読書メーター

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そ/

連合赤軍物語 紅炎」は歴史換算


ライトノベル 7
小説 2
エッセイ 1 
ノンフィクション 4
歴史 3
その他 1

12月に読んで特に面白かったもの
ログ・ホライズン 7」

 シルバーソードのギルマス格好いい。シロエ、相変わらず他の人では見えない大きな観点から物事を見ているのでゾクゾクする。クラスティはどこに行ったのか知らないが、どこでも退屈しなさそうだからちょっと喜んでいるのではないかと思えてならない(笑)。
連合赤軍物語 紅炎」
連合赤軍物語 紅炎 (プロミネンス) (徳間文庫)

連合赤軍物語 紅炎 (プロミネンス) (徳間文庫)

 当時大人でそこそこ政治に興味があったら、連合赤軍の全身の一つの革左の有言実行性と行動に惹かれていたかもしれない。
「喧嘩両成敗の誕生」
喧嘩両成敗の誕生 (講談社選書メチエ)

喧嘩両成敗の誕生 (講談社選書メチエ)

 難しいことをわかりやすく文章にしてくれる稀有な歴史家さん。この人の著作は今後、絶対に読んでいこう。
「たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く」 子供ながらその逞しさに感嘆した。そしてコサックという存在に興味が引かれる。