ゲート 3

内容(「BOOK」データベースより)

帝国で起こった大政変を憂慮した日本政府は、帝都に空挺団を派遣し、大規模な特殊軍事作戦を決行する。上空を無数の落下傘が舞い、瞬く間に帝都を制圧する自衛隊。一方、冴えないオタク自衛官伊丹耀司と異世界美少女達も、皇城で孤立する皇女ピニャの救出に乗り出す!かつてないスケールの超エンタメファンタジー!驚天動地の第三章、開幕。


 単行本版で読了。菅原は内心で『入省以来、外務省の頂点を真っ直ぐに目指して来た。なのにそのお相手が、日本と比べて千年は遅れているように見える未開の国の、しかも十二歳の少女と来てはは体裁が悪いばかりか足を引っ張られてしまう。』(P19)と思っているのだが、中世的な世界観で魔法もあるのだから、多く見てもせいぜい数百年程度の違いしかないように思う。仮にも外務省のエリートなのに歴史の知識が弱く見えるのはちょっとゾッとする。もしくは千年という大げさな物言いは、それほどこの世界の人(シェリー)と、価値観が違うというのをその年月を多く見積もることで、自分との距離を内心でも一層離そうとしていることの表れなのかね。
 前回の炎龍退治で伊丹はダイヤを報酬としてもらったが、大きなものだからなかなか買い手が付かず、そして所有者の都合で細かくするのを宝石商に諌められたため換金することが出来ず、しかも彼は前回職務を放棄して炎龍退治に行くことを決めたため、いくら成果が大きくても勝手な行動の罪があるので給与が下げられたため金欠であるというのはちょっと笑える。しかしこのまま売れなかったら、今年の税金どうなるんだろうか、とそんなことが心配になる。まあ、払えずにその原石が競売に掛けられても、滞納分を除いて帰ってくるだろうから、いくらか安く買われても伊丹本人にとっては大金が手に入るしそれでもいいのかな。
 ロンデルという街は『当時はまだ亜神だった学問の神、エルランとラーによってつくられた私塾が礎となった』(P68)というが、神の私塾という単語は可笑しくて思わず笑ってしまう。
 レレイが日本では、本の出版が身近ということを「ドウジンシソクバイカイ」を挙げて説明していることには思わず笑う、伊丹、なにを教えているのですか。
 レレイが義姉のアルフェが伊丹のことを好物件だと認識したのを察して、彼女が立ち上がって考えを巡らせているうちに、伊丹の隣の席を奪取して、伊丹と自分は恋仲だとアピールして牽制しているのはかわいい。
 しかし古田はゾルザルの料理人として収まって伊るが、彼が日本人だということを誰も知らないとも思えないし、彼のことを日本人だとゾルザルに誣告するものが居らぬとは思えないが、なんで料理人としていまだに身近に置いておかれている不思議だ。
 ヤオはロゥリィに言われて、幸運に『ご縁』があるからと五円玉を持っているようだが、違う世界の迷信を進めていいのかい、ロゥリィ(笑)。
 ゾルザルが政権を握ってから、テューレは多数の要人たちを粛清する仕事を主導するようになっている。そんなことをして散々手を汚しているのに、ほんの一瞬だが伊丹(緑の人)が助けに来てくれたと思ってしまうというのは、どうしようもないな、まだ救われたいと思っていながら、粛清を喜んで実行しているのは救いようがない。
 森田総理、国のトップなのにこうまで責任を取る決意もないとはな。というか、現場が突出したんだから、最後の締めまで現場に何とかさせようなんて考えているのは冗談としても呆れる。そんな自衛隊の独断行動をさせてまったら、現在の情勢では首都の一部占拠くらいはすることになると思うし、かつての軍部の独走という歴史がありながら、自分たちがしっかりと手綱を握ろう(現場の意見や情勢をどこまで参考にするのかはともかく)と思うのではなく、もう勝手にしやがれ、自分らが起こした事態なのだから最後まで全部勝手に責任とって行動しろという態度は愕然とする。
 しかしマスコミは多少戯画化されて悪く描かれているとは思うけど、基本的にそんなイメージなので、特に気にならない。基本的にマスコミに対していい印象がほとんどないからなあ、もっと個別の事例では良いこともあるのだが、マスコミという大きなくくりのイメージではこの本で描かれているようなイメージが真っ先に浮かんでしまう。
 今回は穏健派の面々が粛清されていくさまを見るのに耐えかねて、首都を襲撃して彼らを救出したが、そこで活躍した自衛隊員がみんな覚悟完了している人ばかりなのはうーむ。
まあ、基本このシリーズは自衛隊の活躍を見る活劇物だからいたしかたないか。情けない、弱さを持った自衛隊員はありがちすぎるから、そんなものを書かないと決めている(だろう)ことは、いいことかもね。
 しかし今回の最後になって日本に身を委ねる決断をするとは急に変わったな、皇帝。もはやゾルザルじゃどうしようも出来ないと見切ったか。自分が身を委ねることで何か逆転の秘策でもあるのかな。まあ、自分の責任はうやむやになることは確かだけど。しかし、普通に考えたら外国のトップの拉致と見られても仕方ないので、日本への非難が高まり、国際情勢がのっぴきならない事態になることは必定と思えるので、皇帝まで連れ帰ってきたのは悪手じゃないかなあ。