ソードアート・オンライン プログレッシブ 3

内容(「BOOK」データベースより)

「行くぞ、アスナ!しっかり掴まってろよ!―ティルネル号、発進!」謎めいたダークエルフ騎士のキズメルといっときの別れを交わし、次層を目指すキリトとアスナアインクラッド第四層、そこには“水路”が広がっていた。なんとか街に到着した二人を出迎えたのは、湖水に浮かぶ白亜の街並みと、大小無数のゴンドラだった。第四層を自由に移動するためには、専用のゴンドラを入手しなければならない。キリトとアスナは、船材をゲットするために、大型火炎獣“マグナテリウム”に挑む!そして、ここ第四層には、意外な人物との再会が待っていて…!

 今回は1階層分。その階層についての描写がじっくりと、そして前回から引き続き森エルフ・黒エルフの抗争のキャンペーン・クエストの続きが書かれる。年1回の発刊ペースなのに、相変わらずの進行ペースの遅さだ。
 しかも著者コメントで、来年ちょっと今までの隔月刊行ペースをちょっと落とすかも的な話があるので、そうしたらもっと間が空くようになるだろうから、このシリーズ読んでいて毎回思うけど本当に終わるのかしら。本編1巻では75階でSAOクリアと相成ったが、どこまで描くのかなあ。
 このままクリアまで描かれるとすると、本編・短編のエピソード近くなったらどういう具合にそのエピソードを回収していくのだろうか。その頃にはそうとうに筋変わっているだろうから、相当アクロバットな方法を用いるか、そこでの出会いなどを変えなきゃいけなくなりそうなので、ちょっと心配になる。
 まあ、そもそも本編ではアスナとそれなりに親しくなったのは高い階層になってからだから、今更1巻や短編との整合性をどうとるのかを気にするのも変な話かもしれないけど。
 どこまで描くかは、本編で『ゲーム初期は、すぐそばを黒衣のソロプレイヤーが歩いていたのだ。』(「ソードアート・オンライン11」P171)と本来の1巻(正史)とは異なっているのにプログレッシブ設定を反映させてきたから、その言葉を見るに下の方の階層で別れたようだから、その辺りまで書いて終わるということかな。そしてその区切りはエルフ抗争のイベントの完結あたりになりそうな予感がする。だから、このスローペースも全部はやらないよという意思表示なのかもねえ。キリトソロで長々と話を続けるというのも動かしずらそうだから、あっても短編・イベント的なものを見るみたいな話のみ描くだろうからそういうのは続かないか、ペース超早くなりそうだし。そうじゃなくて、かなり後の方まで二人でペア組んでやるとしたら、プログレッシブ設定の序盤は入れるけど、その後は又分岐していて本編には繁栄されないよというこんがらがった話になってしまうからな。
 そういやキリト君、プログレッシブ段階ではリアル中二であったか。
 今回は(も)、ゆっくり進行でキリト・アスナペアの日常、普段のやり取りが中心に書かれる。冒頭からその階層の自然(?)や街といった環境の描写についてかなりページが費やされている。
 今回は、そうした新しい街を探索したり、今まで(β版になかった)新要素である船を使った移動、クエストでのスニーキングミッションなど今回は真剣にゲームをやっている仲での、ゲームの楽しさやワクワクドキドキみたいなものが特に感じられるような巻だったので良かった。
 今回4層目は、ヴェネツィア的な世界観の階層、街で、アスナはそうした街やゴンドラに非常に喜ぶ。彼女、そうしたのが好みだったんだ。こうした不意にキャラの好きなものがわかり、それに熱中している様が描かれるのってなんだかほほえましいし、読んでいて楽しくなるね。だけど、それがあまりに戯画化されるとそうした感情はわかないけどね。これはそうじゃないからいい。というか、今回の描写を見て、そうしたことが好きだという自らの嗜好に気づけた(笑)。
 キバオウさん、わずかな台詞で登場するだけだが「なんでや!」という台詞が出てくるだけでも強烈なインパクトがあるから、思わず笑ってしまう。出ずっぱりだと、キリトに絡んでうっとうしいから、個人的にはこのくらいの出番がちょうど良いな(笑)。
 2大ギルドの競争心で攻略ハイペースで進む。ただ、そのまま反目続くと破局しかねないため、リミッターとなる規模は少数でも、強い発言力・リーダーシップを持った攻略組みの要石となるような人物が率いる第三勢力が望まれるとキリトが内心(モノローグ)で語っているが、ちょうどその求められているところにはまったのだ、後に攻略組のリーダー的存在となり、その実ボスとなる予定だった茅場(プレイヤーネーム忘れた)だったというわけか。
 毎度毎度、他の攻略組みと組んだ戦闘で、大きな利益が得られるラストアタックを取っている(今回もこの階層のあるエリアを解放させるための中ボス的なモンスターとフロアボスのラストアタック取った)のだから、本当にわざとでなかったとしても白い目で見られるのは避けられないよね。特に序盤で、そうやって得られるアイテムは貴重だろうから。
 しかし成功したからいいようなものの、今回の黒エルフ対森エルフのイベントはなかなか厳しくないか。時間制限といい、城主を戦闘に引っ張り出さなきゃいけないことといい。
 森エルフ・黒エルフ、湖に落ちたらその場で立ち泳ぎだったり帰るというルーチンが組み込まれているようだが、そのゲーム性、シュールさがなんか和ませる。
 しかし高レベルの城主、キズメルがフロアボス戦にも助成してくれるって、そうとうなメリットだと思うから、それを見たら、二大攻略組もそのクエストをいったん停止することを合意したというが、続けたくなってしまうのではないかと思ってしまう。キリト・アスナ組がかなり特殊な行動をしているってのは明らかにしていなかったから、たぶん同じにならないとはわからないだろうから。
 あとがきに攻略ペースあげて行きたいと書いてあるけど、同時にボス戦またもやあっさりだったから、次はプチ区切りの5階だから、強めのボスだそうとしているようなので、そうしたことを考えるとまた1階進んだだけで終わりそうな予感が(笑)。