IT 2

IT〈2〉 (文春文庫)

IT〈2〉 (文春文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

デリーに近づくにつれ、消されていた記憶の細部が甦る。洪水のあと、紙の小舟を浮かべに行ったジョージィの黄色いレインコート。血染めのレインコート。〈荒れ地〉の小川につくったダム。記念公園の給水塔。廃工場の大煙突。そこから現れた怪鳥。狼男。そして風船を持ったピエロ…あの、1958年の夏、子供たちがずいぶん消えた。


 最近は、シリーズ物(分冊物)は連続で読むと疲れてしまうのと、連続で読むと読んでいるときに抱いた感想がごっちゃになるから、前巻の感想を書き終えてから読むようにしているので必然的に間が空き、その間に別の本を読み始めているので、次の巻に手を出すのが遅くなる(まあ、元々何冊かの本を平行して読むタイプだけど、それなりの冊数にセーブしているので)から1冊読むごとにそれなりに間をおくことが多いのだけど、この本は子供時代のシーンがとても魅力的だったから早く次を読みたいという気持ちが強かったので、絵個人的には結構速いペースで2冊目を読み終えた。
 前巻の途中からそうなんだが、デリーに向かう途上の描写が章頭にあってそれから過去パートに入る流れが続いていて、過去パートが結構連続して続く感じだったので、過去パート大好きだから嬉しかった。しかし10章で、かつての仲間たち、はみだしクラブの面々がデリーに集結して再開してからの2章は、過去パートがいまのところないのはちょっと寂しいな。3巻以後に、また過去パート来るのだろうか?もっと過去パート読みたいという想いがあるので、もし来たらとっても嬉しいのだが。過去パートがマイケルがはみだしクラブに入っていない段階で途切れているので、たぶんまだくるだろうと期待して次巻以降読もう。いや、現在パートがつまらないわけでは全然ないのだけど、過去パートが好みすぎるからね、やっぱりそちらをもっと読みたい、今後もあって欲しいという想いが強くある。
 しかしまだ折り返し地点だから確かなことはいえないけど、ホラーが苦手だけど読めるし楽しめる本なので良い意味で驚きだ。登場人物が脅威相手に恐れず立ち回り、団結して対峙しようとしているし、相手がほどよく逃げ切れる感じの敵だというのもあって、それほど怖くはならない、むしろファンタジーっぽい印象を受ける作品だ。
 ホラーが苦手なのは、ひたすら辛い・絶望的な展開が続いたり、脅威にあたって仲間割られなど人間のエゴなど暗い部分をむき出しにさせるように描かれたり、あるいはそういう選択はダメそうと読者視点では思っているのに、そちらに向かい死んでしまうということが起きると、目を背けてしまうので、そういうのがなく、むしろ逆にメインメンバーが団結して脅威と対決しようとしているので、読んでいて気分が重くなったり、辛くなったりというところが全くないのが非常にいいね。まだ半分だけど、こんな所感のまま読み終えられたら、キングの作品をホラーだと避けていたことが後悔させられるだろうな。
 まだ、封印されていた過去の記憶が戻ってきたといっても、細かい記憶やItをどうやって劇退したかみたいな肝心な記憶は蘇っていないようだ。
 遊びでダムが作るのに成功するという確信がわいて、興奮しているさまはなんだか読んでいるだけでも喜ばしい気分になってくる。こうやって自分たちで小さなダム作って、水量や流れが変わるさまを見れたら、それは嬉しいだろうな。
 化物、その存在に出会ったら100%とか99%死ぬとかではなくて、突発的に出会って何かしら準備していなくても捕まえられないように必死にその存在から逃げていれば、それなりの確率で逃げることができているようなので(たまたま逃げられて現在も生きている彼らにスポットが当たっているから、そう感じるだけかもしれないけど)、絶望感というか、絶対逃げ切れないみたいな読んでいて、やつが登場すると語り手が死ぬだろうと思って、息苦しさを感じて読んでいられなくなるみたいなことがないのがいいね。恐ろしい存在だけど、そうやって逃げられたり、あるいは物理攻撃もそれなりに効き目があるようなので、ほどよい難度(一方的にやられるのではない)って感じ。不死性、継続性という意味ではきわめて恐ろしいけど、目をつけられたら絶対逃げられないという感じもあまりないからね。
 ヘンリ・バワーズらの不良連中は嫌な奴らだから痛い目を見せようと絡んできた奴らを、ベンたちが立ちはだかる彼らに逆に痛い目にあわせて逃げ切ったシーンは爽快。
 過去パートで、リッチィは、はみだしクラブの面々は、なにかに引きずり込まれようとしている、偶然じゃなく一人ひとり選ばれて、と直感して、それが傍点つけられているので何かしらの選びがあったのは確かっぽいが、どういう基準で選ばれたのか、何で彼らなのかちょいと気になる。
 そしてどうやら、怪物との相対が終了した数年後には仲間たちとの記憶がほとんど消えているようなので、その怪物を撃退したときに怪物に何かのろいみたいなものをかけられたのか、それとも怪物と関わった人間に必然的にそうしたものが起きるのか同なんだろうね。しっかし記憶が戻ったという結果を知っているからあまりそうは感じないけど、親しい人間の、特別な紐帯を結んでいた仲間の、記憶がそうやって消されるというのはゾッとするようなことだよな。また、自分たちの一部がデリーに取り残されているという思いをビルが抱いていたりするが、それもなにか故あることっぽい気がするなあ。あと子供がいないこととか、デリーの外に出た彼らが成功しているなどの共通点とか、たまたまじゃないかという感じもするけど、でも、化物というわけの分からん存在が関わっているのだからそんな共通項が化物とかかわったせいという説明にも真実味を感じてしまうね。実際それらの共通項が、どうしてなのかということがこれから明かされると想うのでそれはちと楽しみ。
 しかし、描写を見ると、子供時代のビル・デンブロウは美形みたいね。そして現在もそうなんだろうな、髪の毛の量は薄くなっているみたいだけど。
 「デリー 第二の間奏」を見て、マイケル・ハンロンが黒人と言うことを知る。そしてその章(?)の中で、父の回想の中でItを見出し、それで過去の記憶の扉が開かれ、だから彼だけが覚えていた。しかし本筋と直接には関わらない父の回想も面白いのが憎いねえ。
 しかし活動を開始した化物が、マイケルが思い出したということを知っているのに、彼を殺さなかったり、10章・11章でも自らの脅威、様々な恐怖現象を見せ付けるものの、殺していないところを見ると奴には何かしらの制約みたいなものがあるのかなと感じる。
 再会の章、自然に昔どおりの関係に落ち着き、昔のキャラが出てきて、四半世紀ぶりの再会とは思えないほど、現在で一同にかいして和気藹々とした雰囲気で皆再会を喜び、楽しんでいるようで読んでいて思わず笑みが浮かぶ。そしてマイケルから現在の一連の事件についての説明がなされる。
 スタンリー・ユリス、結局自殺だったのか。遠隔地からItが殺したのだと最初は思い、その後の過去パートでの現実を云々と言う彼の台詞を聞いて、彼の死は自殺かもと思いながらも、でも……とどちらだろうと考えていたけど。
 ピエロ、ペニーワイズと呼び、だが基本It(あいつ)と呼んでいるけど、ペニーワイズはピエロ形態だけということかな。
 再会したら、かつての登場人物は本人でも少し驚くほど、かつての関係性のままに戻っている。
 マイケル・ハンロンから現在での連続事件の詳細や人数を知り、怒りや闘争心がわいているようで何より。
 しかし再会し、集結した早々にItは嗅ぎつけてくるか。あいつをどうやってやっつけたかという記憶が戻る前にこうなるのはちょっとまずいね。
 だけど、次の章で彼らは散歩してこの街を巡り歩きながら記憶を戻したりしようとするけど危なくないか。何か大丈夫という確信が深層心理にでもあるのかな。子供の頃の体験の記憶として。
 その後も彼ら、彼女の前にやってきて、恐ろしい現象を味わわせるけど、実際に危害は今のところ加えていない。んー、どうもやつの言葉に誘惑されなければ、あるいは彼らから脅威がいる(ある)と確信している場所の近くまで近づいてこなければ、危害加えられない仕組みになっているのかなあ。でも、リッチィ・トージアのは違うっぽいし、間違った当て推量か。
 ビルが少年時代に使っていた自転車シルヴァーをガラクタ屋(リサイクルショップ?)で見つける、マイケル・ハンロンはちょうどそれをちょっと直すのにおあつらえ向きの道具をちょっと前に衝動買いしたようで、こうした描写が多く運命に、あるいは過去に導かれている感がある。それがなんにせよそれを導き、誘導しているのが怪物でなければいいのだが。