不肖・宮嶋 空爆されたらサヨウナラ

内容(「BOOK」データベースより)

このふざけた本を不謹慎と感じる読者の皆様。あなた方は、すでに平和ボケしている。歌や踊りやシュプレヒコールで戦争がなくなれば世話はない。悔しかったら、地球上から戦争を無くしてみぃ。

 どうもこの著者は戦地での話が書いた本を多く執筆しているようで、この他にも中東の戦地を書いたルポ本があるから、それがちょっと気になったのだが、見過ごしていた鉱脈(面白い著者)なんじゃないかと思って、順番に読もうと思ってとりあえずamazonで新刊で買えた著者のそうした類の一番古い文庫であるこの本を読むことにした。しかし、なんか妙に期待値が高く設定してしまったせいで微妙に感じてしまった。
 本書ではコソボ戦での取材の様子を書いている。
 しかしタイトルの元となった本を最近読み終えたばかりだから、続けてこのパロディめいた題をつけた本を読むのは、なんか変な気分になる。
 体験談を知り合いに面白おかしく語っているような調子で書かれていて、もしかしたらハードボイルドに気取るのが嫌なのかしらないけど、逆のベクトルに気取っているように感じて微妙だった。会話文が全て関西弁に翻訳されていたりなど、過度に軽薄に見えるような軽いノリで書かれていて、戦場での話で、その軽いノリの文章が全編にわたるとどうもね、そういうトーンに作り直したという感じがして、いまいち好きになれないの。
 それに想像と違い、現地を綿密に取材したというより、カメラマンである著者が取材している光景を描いた、単純に自分の体験記という感じの内容で、それほどその地を綿密に取材して、戦地の人々に寄り添って書いたというわけでも、現地での人々との交流が多く描かれるわけでもなかったな。ただ、戦争時のジャーナリストへの現地政府の応対や、著者らジャーナリストがどうやってそうした戦争時に取材活動をしているのかという現実の姿が書かれているので、普段見ることのないそうした姿を見ることができたという意味では面白かった。
 それにページもそんなに多くないのに、文字も大きめで、写真がついているからボリューム不足だから、文章の軽いノリとあいまって、なんか物足りなさを感じる。改めて感想を書きながらいいところを拾ってみれば、全体としてみれば面白く感じたところは決して少なくないし文章のノリがどうにもあわない。
 検問に引っかかって警察に連行されたとき、空襲が来て、警察が逃げているのに、これくらいでおびえるかと思ってあわてて逃げている警察を見て余裕をかまして、タバコに火をつけ、吸っていた。しかし、よく考えたらここは警察署だし、狙われる可能性があると気づいて、あわてて走って民家の戸を片っ端からたたいて、そこの家の防空壕に入れてもらったというのはギャグの域で、全編通して軽い調子の文章だから、心理描写どこまで本当なのか、怪しんでしまう。外形的行動までは嘘ついていないにしても、そこらへん誇張されているんじゃという疑いをちょっと思ってしまうな。
 ごねて一瞬相手の気が緩んだ隙に、ダミーフィルムを渡す。そうしたことを怒っている戦地の警察相手にやっている、そうした抜け目なさがあるのは面白い。
 怪しいNATO軍の誤爆という説明など、そういう空爆している軍のいかがわしさなんかが書いているのもわるくない。
 NATOコソボアルバニア人が弾圧されているから救援に来たのだが、コソボから出るためのアルバニア難民の集団を空爆してしまい、その場所にジャーナリストを読んだのだが、護衛の都合もあって人数制限があって、危うく行けないところだったが間一髪なんとか行くことができたというエピソードは、その絶対残されたくないみたいな気持ちを内心でわめきたて、口でも必死で頼み込んでいる様が描かれていて面白かった。
 戦地に行っているというのに、人が新たに入ってこれないからあまり取材人多くないし、いい写真取って有名になれるかもという功名心や、死体を見て凄い凄いと衝撃を受けながらも興奮しているというような、普通はあまり書かれない、お行儀良くない率直な感想が記されているのは悪くない。