異世界食堂 2

内容(「BOOK」データベースより)

最寄駅から徒歩5分。オフィス街に程近い商店街の一角に立つ、雑居ビルの地下1階。猫の絵が描かれた樫の木の扉を開くとそこは、「洋食のねこや」。創業50年、近所のオフィス街のサラリーマンが主な客であり、ちょっと料理の種類が多いのと、洋食じゃないメニューを出すことが特徴。この店に特別営業の土曜日だけの新たな従業員が加わった。名前はアレッタ。生まれも育ちも向こうの世界の、魔族の娘。変わった従業員を新たに加え、店はまたいつものように続いていく。毎週土曜の特別営業。迎える客は異世界の人々。それが―「異世界食堂」。そして今週もまた、チリンチリンと鈴の音が響く。

 表紙のアレッタは、帽子を脱いで角を見せているということと服の色合いが全く違うということで前巻とはまた印象が大分異なるな。
 ビーフシチュー好きの赤の女王がねこやに加護を与えていて、彼女が店に危害を加えようとする相手に報復を与えている。店に強力な存在が多いというのもあるが、店が平穏なのはそれも大きいのだろうな。
 今巻からアレッタが給仕として登場することになる。
 「シーフドフライ」のドワーフの二人組がアレッタのことを『人間ならどうかは知らないが、ドワーフの基準ではでかすぎて細すぎる給仕の娘』(P39)とあるけど、スタイルのことかと勘違いしていたけど、でかすぎるって(たぶん)身長のことだということに今回気づいた。
 「カルビ丼」宮廷陰陽師ってお好み焼きの海国の人か。
 「ハムカツ」木こりの一家が月に一度の家族4人の楽しみ、ちょっとした贅沢として利用しているというのは、皆本当に嬉しそうにしていて、ほほえましいので好きだな。月に一度の日替わり定食が安くて、スープとパン(orライス)がお変わり自由なのでそれを毎回頼む。他のお客さんたちは前回の「ハンバーガー」の子供たちはちょっと違うけど、美味しいのにとても安いから驚くことはあっても基本的に値段は気にしない人たちが多いけど、描かれている中では珍しくお金を気にして贅沢しにきている(安いとはわかっていてもそれでも好きなように食べたりはできない)人たちで、ちょっと毛色が違うけどだからこそねこやでの食事に特別な贅沢で幸せな感じが出ていいな。まあ、ハーフリングもふとごろ具合を気にして食べているようだけど、それは種族的な特徴で計画性がない生活を送っているからだしね。
 しかし日替わりランチ4人分+ビール一瓶+コーラ二杯で会計が銀貨二枚と銅貨十二枚というのを見ると、銀貨=1000円となんとなく思っていたけど、それではさすがに安すぎるから、そんな切りよい数字じゃなくて銀貨一枚千数百円とかだったりするのかな?
 ねこやビルにテナントとして入っているバー「レオンハート」と協力して、ねこやはバーに軽食を出前して、逆にねこやからバーへは酒を注文できるシステムになっているようだ。バーからねこやへは(開店する)午後六時から九時まで注文できるようになっているようだが、(異世界食堂をやっている)土曜日も注文できるというのは両方の店を知っているお客さんからは食堂は開いていないはずなのにとちょっと怪訝に思われそうだ。まあ、その時間新しい料理の練習・研究とかしているといってごまかしているのかしら。バーの主人には最近新しくビルに入ってきた人のようだけど、その人には先代が異世界食堂のことをちゃんと伝えているみたいだけど。
 そのバー「レオンハート」も本職の料理店(ねこや)で作ったものを出前できるから、本格的なつまみもあって人気だというのはなんだか嬉しくなる。
 小さな姿のフェアリーたちの国に新しく大きな扉ができて、女王は扉が何かを調べるため、騎士たちとともに扉をくぐる。その際に女王はもしものための国の防備として、その扉をくぐり前に貴重なアイテムを使って、つる草で作った強力な巨人の守護者を創り、そしてそれを国の守りとして残していった。しかし異世界食堂で扉に害がないとわかったあとには、七日ごとに国民とともにその食堂に行くことになって、花の国最強の守護者である草花のゴーレムは『最近すっかり扉を開く係りと化した』(P212)というのは笑った。
 「オードブル」オードブル作るのに時間がかかるため、前の週に予約が必要。そのため一箇所に留まることの少ないハーフリングたちにとって、幻のメニューだった。ハーフリングたちは、ちょうど1週間で移動することができるオードブル街道を見つけ、冒険者のハーフリングであるテッドはそこを利用して幻のオードブルを食べようとする。仲間の冒険者たちと異世界食堂のオードブルを食べる。
 せっかく見つけたオードブル街道が使えなくなると他のハーフリングから総スカンを食らうため、どこから持ってきたかは内緒にして、人気のない場所でご馳走を持ってきて、仲間を驚かせる。多彩な料理の種類があるので、ばらばらな好みである冒険者たちでもその皿のなかにそれぞれの好物を見出し、テッドがご馳走を用意するといったが確かにご馳走だと思う。テッドはオードブルの代金は借りたけど、冒険者仲間に渡した酒はおごりか。
 酒はおごったということで仲間たち用に一皿で、自分用に一皿確保しようとしていたのだと思うが、空腹の5人で一皿はさすがに足りず、結局一皿独占できずに終わったようだ。
 「キノコスパ」互いに遠い国に住み、この食堂で出会い、友達になった2人の友人同士は、7日に1度異世界食堂にご飯を食べにくる。ご飯も目的だが、それよりもその友人と会うのが楽しみできているというのはいいな。そのように単に食事する場所ではなく、気の合う友人と合うという意識となっているということが描かれると、逆にねこやがそうした特別な場所だと思われていることがわかるから、なんか好きだ。
 「かつ丼」先代時代の話し。獅子頭の魔族ライオネルは奴隷の身に落ち剣闘士をさせられることになって自信喪失して憂鬱になっていたが、無一文の奴隷の身で異世界食堂に来て、ツケで5杯のカツどんを食べさせてもらう。そうしてうまい飯を食って憂鬱な気分も晴れたというのはいい話。その後、彼は圧倒的な強さを見せて自分を買い戻し、その後も長くスター剣闘士として君臨することになる。
 今回の特別編は「じゃがバター」で店主とアレッタしかでてこない話。内容的には、アレッタはそうしたシンプルなジャガイモは自身が過ごした貧しい生活の象徴的な食事だったので苦手だったが、蒸して食べることで違った味わいがあっておいしいと感じて、それまでの丸のままのジャガイモへの苦手意識を払拭するお話。