ドウルマスターズ 3

内容(「BOOK」データベースより)

早乙女蒼生は地球に降下した。そして、死んだはずの親友、龍一が乗る最新型ドウル『マクリール』と交戦する…。海上に浮くメガフロート上で、『ヤクシャ』を駆り実機での地上訓練に励む蒼生たち。玲音との交流も増え、自身の恋心を再確認する蒼生だった。数日後、敵が襲来する。現れたのは、水中戦に特化した蒼穹色のドウル『マクリール』。宇宙でも『ソフィア』を手玉にとった恐るべき機体である。蒼生と玲音も訓練機で応戦するが…蒼生の大切な仲間が、マクリールの毒牙で命を落とす…!

 表紙の玲音のイラストの表情はいいな。
 今回主要キャラだった人が死亡して、そうしたところのシビアさがある世界観だと再認識。主要登場人物だからといって死を免れるわけではないし、主人公らがきわめて重要な能力を持っていてもあくまでも組織の一ピース(大きなものだが)で、能力を発揮するには組織にあらねばいけないということもあって、状況にかなり押し流されていく立場でもある。
 そして今更になってガンダム的な戦争下の組織の下での人間模様や政治模様を書く群像劇みたいなお話なのかと気づく。
 蒼生は、龍一が死亡したと思っている(実際には死亡を偽装して敵対組織ゲノムスに正式に入った)ので、その出来事によって自信の力のなさを痛感して強くなりたいと焦燥感を持つようになった。その焦りで見えていたものが見えなくなったりしている。それを危うげに見守る姉朱理と玲音。
 しかし龍一の「遭難」でそ彼がそうした気持ちになっているのは『朱理も共感できるものだったし、玲音にも理解できるものだった』(P35)という表現は、真相を知らない姉弟と察している玲音との温度差が感じられれていいね。
 そういえば本作の主人公は潜在能力は高いが、まだ開花していない、発展途上で力をつけたいと懸命に訓練するという王道の主人公。しかし精神的には常に前向きというより、遮二無二前進していて周りが見えなくなっている。そうしたところは今回主要キャラが一人いなくなったということや、今巻の戦闘で敵キャラに突出してしまい最終的に死亡したキャラもいることもあって、朱理と玲音でなくとも彼のことがちょっと不安になるな。
 『ポリス政府にとって、連盟は自主裁量権をもちすぎた傭兵集団のようなものだ。天然資源を戦争の資金源とさせないために、自らの資金源としている武装集団』(P62)そうした見方もあり、事実の一面でもあるから、ゲノムスをひそかに支援している都市(ポリス)も少なくないようだ。
 地上での演習中にゲノムスの空宙母艦が潜んでいることが判明したので、上からの命令があって彼らもそれを探すことになった。無茶に思った人もいたから比較的安全な場所に配置されたが最終的に戦闘に巻き込まれることとなってしまう。演習中で3人とも自分の専用機ではなかったこともあり、ゲノムスの龍一が操作するマクリールに翻弄される。そして主要キャラの一人が死亡する事態となる。
 そのこともあって玲音は訓練校を辞めて、原隊へと復帰することになる。そして姉弟も訓練校から離れて、パテル技術少佐の下で別のカリキュラムを行うことになる。そうして訓練校での話は終わりか。
 そうしたものを見ると、それぞれ別の立場となる訓練校同期のドウルマスター4人の物語であり、その運命の結びつきと悲劇みたいな話になるのかなあ。
 個人同士では親近感を抱きつつも立場が異なることで敵対するというのは龍一とその他3人で既にそうだが、今後は直接戦わないにせよ何らかの対立が別のところでもおこりそうだな。
 あと、245ページを見ると、ゲノムス側は最近上からの命令される作戦には納得できない点が多いとかかれているので、何かしら裏というか、話が進んでから明かされる秘密の厄い事情でもあるのかね。