オーバーロード 10

内容(「BOOK」データベースより)

不滅の国に君臨する王となるべく行動を開始した、アインズの一手が及ぼす影響とは―いよいよ新章開幕。王となったアインズは統治する魔導国を理想郷とすることを決意。永遠に繁栄し、多数の種族がアインズに跪く世界。その第一歩として、冒険者組合の強大化と冒険者の育成を目論んだアインズは帝国へ向かう。その一方、突如できた魔導国に戸惑う諸国の支配者たちも各々に対抗策を講じていた。

 前巻の予告と内容が違うのはどうしたのかと思ったが、あとがきによれば当初短く済まそうとした部分が想像以上に長くなって1巻分になったということのようだ。したがって次巻で前巻の予告にあったドワーフの話に入る。
 ネタバレあり。
 前半は前回魔道国を建国したアインズの日常や普段の政務などが書かれる。そして中盤はアルベドの王都での策動。後半ではジルクニフのあがきと諦め、思いつきで動くアインズ様が思わぬ好結果を生み出すことになった偶然の連鎖が書かれる。
 アインズ、睡眠を必要としないが休むためにベッドに横になる。そんなときでもメイドが側に控えていて、身じろぎすると反応する。ずっと起きていなければならないのに、自室にいる時間、ベッドで休む時間すらそれは辛いな。
 そして交代の時間で一時お付のものがいなくなるときを見計らって、夜に読んだ本(娯楽のための本やハウツー本)を威厳のために難しそうな本に入れ替えておいているようだ。色々と気にしなければならないことが多くて大変だね。
 そして彼は帝国の支配者ジルクニフを覗き見して、支配者としての振る舞いを身につける教材としているようだ。しかしジルクニフはその勘の良さで見られていると感じることはあるけど、それが監視の目だと思って、まさか教材にされているとは当然思わず、アインズへの警戒を強めているという予期せぬ効果を生んでいるのにはくすりとくる。
 一日に4回使える上位アンデッド創造を2回分使えば、最大90レベル弱のモンスターを呼び出すことができるのか。コストを使わずに毎日そのクラスのモンスターを増やせるというのはとても強い能力が実はあったということを知って、主人公陣営の磐石さを改めて感じることができてちょっと嬉しい。
 アインズの冒険者組合を吸収して、いままでの魔物の退治屋から人跡未踏の地や情報のない地などに冒険する名前の示すとおりの冒険者へ変えるという思いつき。思いつきで動いているが、その計画は戦果で得た都市エ・ランテルの冒険者組合長の心を動かし、シンパにする。
 その冒険者組合の組織改変の考えに想像以上にいい反応を貰ったアインズが、再び思いつきでその宣伝と人材募集のために帝都に赴いたが、そこで偶然に偶然が重なって聡明なジルクニフは企てのすべてを読まれていると思う。そして彼の心を折って帝国は属国の申し出をすることになる。今回はアインズの思い付きによる行動の結果(偶然が重なった予期せぬ結果)で、コキュートスらを驚かせて「流石はアインズ様」状態になる。
 生まれながらの異能(タレント)を持っているかどうかは第三位階魔法で見抜けるが、ただしどんなタレントかはわからないし、わかっても役に立つものではないことも多いとのこと。
 web版と異なり生存したレエブン侯は、決意どおり政界を引退して国云々よりも家族と共に安穏に暮らすことにしたようだ。頭の切れる人物だったから、彼が敵方から退場したのは嬉しいことでもあるが、そうなってしまったから今後登場する機会はなさそうなのはちょっと寂しくもある。
 王国は王国側の頭脳であるラナーが魔道国に協力姿勢を示しているから、もう王国はなにごともなくその歴史を終えそうだ。
 魔道国で作る新冒険者組合の宣伝と人員募集の宣伝で、秘密裏に闘技場にでるアインズ。その日は闘技場でジルクニフが法国の使者と密談しようとしていた。彼の姿を見てジルクニフに挨拶をするアインズ。それで見透かされていると思うジルクニフ、そして二人の共謀ではめようとしていると思った法国の使者。アインズとしては単なる偶然だけど、ジルクニフ視点からみたら完璧なタイミングで釘を差しているように見えるから心が折れるのもわかる。
 フールーダのアインズに対する熱狂、アインズが彼に書を与えるシーンは書籍版では展開上カットされて見れないのかと思っていた。今回タイミングをずらして、そうしたやりとり(きわめて強い敬意を払い熱狂するフールーダとそれにドン引きするアインズ)などを見ることができて嬉しい。
 闘技場でアインズは自ら色々と制約を課した上での戦いで、戦士として戦ってその闘技場の王者に勝利する。戦士として本気で闘って勝利しているのがいいね。
 そしてその戦いも終わってジルクニフは属国になることを申し出る。流石にその展開は予想していなかったので驚いた。
 今までの流石はアインズ様は彼の言動に対して、深読みした人々がそう思っていただけだが、今回は偶然とはいえ彼がもたらした大きな成果。だから、今まで見たいな勘違いでのちょっとした気まずさみたいなのがなくていいね。
 そうしたこともあって、最後のたった三日ほどで死者も出さずに帝国の属国化に成功したアインズ様に驚嘆し、尊敬の思いを新たにするコキュートスとアルベドのシーンも好き。