FLESH&BLOOD 4

FLESH & BLOOD4 (キャラ文庫)

FLESH & BLOOD4 (キャラ文庫)

 kindleで読了。ネタバレあり。
 今回は宮廷の話がメイン。
 ビセンテは主人公を確保できずに任務は失敗で終わる。彼は敵ではあるけど悪い人ではないし能力もあるのに、このままだと今後の出世とかにも響いてしまいそうな現状は可哀想だ。主人公を追う限り今後も失敗続きとなるだろうから、彼には別の場所で功を挙げてほしいと思ってしまう。
 今回は序盤のスペイン側のビセンテのパートでセルバンテスが登場したり、クリストファー・マーロウ、まだ世に出ていない頃のシェイクスピアが登場したりと有名な文学者が色々と登場する。
 スペイン海軍の総司令官だった病身のサンタ・クルズ侯爵はビセンテに対して、異教徒の占い師は宮廷に連れ帰るのではなく、その予言が人を惑わすから、消し去るように頼む。しかし海斗に好意を抱いているビセンテは、その提案を受け入れられない。しかし侯爵の言葉も一理あり連れ帰ることが単純に国の益となるとはわからないと思い迷いが生じる。
 ビセンテがスペインに帰ったように、ジェフリーや海斗も英国に帰還する。
 ウォルシンガムに目をつけられて、ロンドンに呼び出されるジェフリーや海斗たち。
 マーロウを見て、鏡も使わずに予言じみた言葉を洩らした海斗に対してジェフリーは少し怪訝に思いつつも、人を見る目があるからそんな言葉がでてきたのだろうと思う。そう一人合点して、また一つ彼の美点を見つけたと喜んでいることに思わずにんまりとする。
 ウォルシンガムは異国の怪しげな占い師が海軍の実力者ドレイクの側にいることを危険視する。そして拷問にかけようとするが女王に制止され、女王が宮廷道化として海斗を保護することになる。
 その時に女王が海斗のことを頼る人物のいないなかで、世話してくれる大人の興味を引きたかったから、そのようなことを述べたのだろうとして、ウォルシンガムの危惧を一蹴している。その女王の推測は、結果として他の誰もが気づいていなかった側面をずばりとついているね。
 中世のウエハースはどんな形状のものだろうと以前から気になっていたから、薄い生地をシガレット状にしたクッキーのようだと描写されているのを見て、そんなものだと知ることができてよかった。
 そして宮廷道化とされたのでウォルシンガムの手からは逃れることができたが、そのままではジェフリーたちから離されて宮廷で過ごすことを余儀なくされるので海斗は困る。そしてジェフリーはロンドンに残って、対処を考えることになる。
 女主人公役のシリルが風邪で御前公演に出ることができなくなったために、海斗が代打で舞台にでることになる。そこでまだ世に出ていないシェイクスピアと出会う。
 この時代にはまだ握手の習慣がなかったというのは、へえ。
 ジェフリーに恋するシリルと親しい人物が、舞台上でアドリブで詩を言って聞かせてくれと述べて、海斗を困らせる。それで危うく事故になりかけたが、咄嗟に18世紀の詩人ロバート・バーンズの詩を詠って難を逃れる。
 海斗がそうした詩とか未来の歌とかを披露して、宮廷人たちが驚いたり感心している姿を見るのは楽しい。
 女王の勧めと身の安全のために海斗は改宗することになる。しかし洗礼式前日に、洗礼式を執り行うはずの司教が毒殺されてしまう。そして海斗が殺人犯と疑われて逮捕されてしまうというところでこの巻は終わる。なにかの陰謀劇に巻き込まれてしまったようだが、彼が酷い目に遭わずに潔白が証明されますように。