アイデア大全

アイデア大全

アイデア大全

 kindleで読了。
 さまざまな発想法とそのやり方が簡潔に紹介されている。そうやって一度に多くの発想法についてみる機会というのはないし、これ一冊で色々な発想法を知ることができるのはありがたい。各発想法紹介後のレビューでそれらの発想法に関するまつわる話がされているがそれも面白い。紹介される多くの発想法には意外と簡単に出来そうなものもあるし、試しにやってみたいと思うものもある。今後何かアイデアを出さなければならなくなって困ったときには、この本で考える方法を探してみようと思う。

 「05 ノンストップ・ライティング」15分間手を止めず、何でもいいからとにかく書き続ける。文法や、単語の羅列や繰り返しでも気にしない。普通に書いていると、自分の中の仮想の読み手を気にして自己検閲してしまう。手を止めずに書き続けることで、自分の中にいる最強の批判者からわずかな時間逃れることができる。そのような書き方をしていたレヴィ=ストロースは『書きなぐることから始めるのは、自分が何を言いたかったのかを見つけるためである』(N549)と述べた。この書き方は面白いし、一回試してみたくなる方法だ。
 「06 ランダム刺激」問題とは無関係な刺激を選んで、それを問題と結び付けて自由に連想するというのを繰り返す方法。古代中国の亀卜や古代ギリシャのドドナで行われていた神託(オークの木々のそよぎを神の声として聞き分ける)、あるいは世界各地で行われた開典占い(本が自然に開くのを任せて目を閉じて、節を選んで指針にする)など古くからおこなわれていた技法。
 ネイティブアメリカンのナスカビ族が行っていたトナカイの肩甲骨のヒビを読んで、狩りの場所を決める。このことの利点として、失敗してもだれにも累がそれほど及ばない、情報不十分でも決定が下される、代替案の間で大きな違いがない時でも迷わず決定される。次の手が読めないため競争者が混乱する、贔屓がなく解決にいたる論争が不要。人間や集団の無意識における思考パターンに影響を受けないため、しばしば野生動物は人より早くそのパターンを見抜き感じ取るがその裏をかけるなどがある。そのような利点を見ると、神託が使われていた理由もわかる。
 「08 セレンディピティ・カード」おやっと思った現象にあった時に、その気付きをカードに記入する。そしてそのカードを見直したり並べ直したりする。そういう習慣をつけることで偶然を迎えに行く能力を増す。
 『偶然を活かすには、その偶然が取り上げるに足る意義をもつものであると察知できるほどの準備・蓄積が必要であり、加えて偶然という種が花開くまでその可能性を追求する努力が不可欠である。
 セレンディピティという言葉の意義は、そう名付け、<言挙げ>することによって、いつ偶然に見舞われるかもしれない人々に、それに気づくための注意を促し、偶然への感受性を高めることにある。』(N815)
 「15 キプリング・メソッド」5W1Hのこと。
 抽象的なテーマを扱うのに適した問いのセット、ラミのトポス『類(何の一種か?)、種差(同類の中で他とどこが違うのか?)、定義(○○とは何か?)、部分(○○を構成する部分を列挙すると?)、語源(○○の語源は?)、相反(○○の反対は?)、結果(○○から生じる者は?)、原因(○○を生じさせるものは?)等。
 5W1Hが具体的なテーマを扱うのに有用であるのに対してラミのトポスは抽象的なテーマを論じる際に、たとえば与えられた(しかしよく知らない)テーマで小論文をでっちあげなければならないときになど役立つ。』(N1260)5W1Hは有名だけど、ラミのトポスは知らなかったがでっちあげなければならないときに役立つというのだから、頭の片隅に留めておこう。
 「22 ヴァーチャル賢人会議」賢人たちを脳内に招いて、賢人たちにその問題について論争させることで自分の想像を超える新しいアイデアが生まれる。ただしその賢人たちについてよく知っていることが必要とされる。プラトンの対話編がこの手法の好例。
 簡易的なやり方では、引用句辞典・名言辞典の人名索引から一人の賢者を選び、好きな名言を選び出す。そして問題に役立つかは考えず、名言を読んで思いついたことを書き留める。その思いつきを読み返してアレンジしたり、組み合わせる。良いアイデアが思いつかなければ、別の賢人を選び直す。
 「38 シソーラスパラフレーズ」問題を2、3語のキーワードを含むシンプルな文で表す。類語辞典等を使って、キーワードをそれぞれ類義語に置き換えることを繰り返して置き換えた文を次々につくる。出来た文を読み返して問題に隠れていた意味や仮定を考える。これも使いやすそうな方法でいいね。