本好きの下剋上 第四部 貴族院の自称図書委員 2

 ネタバレあり。
 プロローグでの貴族院の図書館の司書であるソランジュ視点でローゼマインがもたらした変化、シュバルツとヴァイスを起動させたことでそれを見るためにくる学生が増えたり、エーレンフェストの学生たちが大勢写本をするために図書館に出入りするようになったことが書かれる。その他にも授業を受け持っていない一教師である彼女にもいろいろとローゼマインの行動が耳に入っていることからもローゼマインの目立ちぶりがわかる。
 全ての講義に合格したので早速図書館へと向かうローゼマイン。彼女は貴族院で最初のお茶会をソランジュ先生と行い、その後で音楽の先生方とのお茶会を行う。
 その音楽の先生たちとのお茶会にはクラッセンブルクの領主候補生エグランティーヌがくると知って、アナスタージウス王子も急遽参加する。そのお茶会での出来事で、エグランティーヌは祖父と養子縁組して領主候補生となった元王女で、彼女を射止めれば王座に近づくということでアナスタージウスとその兄は彼女を振り向かせようとしているという話を知る。そして王子はそうした理由抜きにエグランティーヌに懸想していると先生方はいう。
 王族の遺物であるシュヴァルツとヴァイスの魔法陣を描きとる任務を最初はフィリーネに任せたが、彼女はまだ1年ということもあって上手くいかない。それで見守る文官見習いがもどかしげに苛立っているのを察知して、フィリーネを他の文官見習いたちに見えるように広げるよう指示を変えて、自信のある人に代わらせる。そしてすぐフィリーネにもフォローを入れる。ローゼマインはそうやって目ざとくフォローを入れるのが上手いね。
 王族の魔術具(シュヴァルツとヴァイス)の主としての地位が欲しいダルケンフェルガーの領主候補生レスティラウトに喧嘩をふっかけられて揉め事になる。アナスタージウス王子が間に入って話し合いが行われ、ディッター大好きなダルケンフェルガーの寮監の先生ルーフェンの提案によって主を決めるためにディッターが行われることになる。
 そのエーレンフェストとダルケンフェルガーの宝盗りディッターの対決では、近年戦術や役割分担の実践が疎かにされがちだったディッターで奇襲や変わった作戦を取って勝利する。ローゼマインは奇襲で簡単に勝つこともできるだろうけど、先のことを考えて相手と実力差があることを自覚してほしいとも思っている。彼女は図書館や本に対する思いの強さや常識わかっていないがゆえのやらかしもあるが、こうした領主候補生としての先のことを考えた視点も持っている。
 そしてアナスタージウス王子から図書館の魔術具は在学中はローゼマインを主として認めることになったと伝えられる。ローゼマインとソランジュ先生、アナスタージウス王子の会話で、アナスタージウスの口から他にも政変を機に動きを止めた魔術具がたくさんあることが語られるなど、今回の騒動を通じて以前の政変の規模の大きさと未だその打撃から回復していないことが書かれる。そしてその際に、アナスタージウス王子からエグランティーヌに卒業式のエスコートをどうするかを質問してほしいと頼まれる。
 エグランティーヌのお茶会で王子から預かった質問をすると、権力争いの種になりたくないという答えが返ってくる。その結果について王子に報告する際に、それを伝えると驚かれる。ローゼマインは互いの考えがきちんと伝わっていないのは、貴族らしく回りくどく意見を伺おうとするからだと思って、ローゼマインは王子に直接的に現状を話してアドバイスをする。
 その後にローゼマインはエーレンフェストに一時帰還する。そして保護者たちから貴族院で彼女が起こした想定外の行動や交友についての説明が求められ、そして叱られる。
 その後神殿に帰って、ベンノたち下町の商人と領主会議後の他領との商売上の取引が増えることに関する話し合いを持つ。P347でのイラストのルッツを見て成長したなと感じる。それと同時に眠りについていた間ローゼマインの成長が止まっていたことを改めて感じさせられる。
 「直接の求愛」ローゼマインの助言を受けた後のアナスタージウス王子視点での、エグランティーヌとのお茶会を描いた短編。
 アナスタージウス王子が、エーレンフェストは研究のヒルシュール、フェシュピールの天才クリスティーネなど特化型の天才が時折生まれる土地柄だと認識しているのが面白い。
 アナスタージウスがローゼマインから受けた忠告について聞いて、その率直さにエグランティーヌは驚く。
 「主が不在の間に」ローゼマインが不在の間の貴族院でのローゼマインの護衛騎士見習いであるレオノーレ視点の話。ローゼマインの側近たちは、ローゼマインからヴィルフリートに協力するようにいわれていても、ヴィルフリートがローゼマインの側近に何かを頼むにはローゼマインに伺いを立ててローゼマインから命令されるのが筋なのに、直接命令されたことに腹立たしく思う。そういう反応を見て、ヴィルフリートもローゼマインに隠れてはいるが、彼も軽率な言動や行動でトラブルを起こしてしまう人物だということを思い出す。