牛を飼う球団

牛を飼う球団

牛を飼う球団

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 四国独立リーグ高知ファイティングドッグスという野球チームは存亡が危ぶまれる状態だったが、北古味鈴太郎氏がオーナーになってから行ったさまざまな工夫や試みのかいあって経営再建できた。
 北古味鈴太郎氏がオーナーとなって以後の色んな取り組みについて書かれる。
 基本的には章ごとに高知球団に携わる1人か2人の人物が取り上げられて、彼らがどのように球団と関わりを持って、どういう仕事をしているかといったことが書かれている。
 「第1章 運命に導かれ」オーナーの北古味鈴太郎氏の経歴、そして彼が高知球団を持つようになった経緯などが書かれる。2007年に33歳の若き経営者だった北古味鈴太郎氏は、高知球団消滅の危機に名乗りを挙げてオーナーとなった。彼は出身地である高知への愛もあって立ち上がった。
 独立リーグのチームの規模は小さい。NPBのチームは選手年棒で数十億、春季キャンプの費用でも2、3億円を費やしている。『それに対し、独立リーグ球団の年間予算は、すべてを含めても1億円前後に過ぎない。』(N62)
 そして高知県は全国平均より10年先行して高齢化が進んでいて、経済的な状況も芳しくない。そんな中で『高知球団は四国ILの他3球団に先駆け、リーグ創設7年目の2011年、初の単年度黒字化という快挙を達成する。』(N84)
 「第2章 理想の街を創る」『野球を中心に、野球以外の事業を絡め地域の活性化をする。その1つが、農業事業なんですね。』(N679)
 練習グラウンドの横に「ドッグス畑」と呼ばれる畑があり、サツマイモや玉ねぎ、エンドウなどが栽培されている。『練習後の選手たちがその足で畑に向かい、作業を手伝うのはもはや当たり前の光景だ。』(N691)
 「第3章 牛を飼う」ドッグスが一時期、牛を飼っていた。その牛の世話係をした元ドッグス選手で現NPB日本ハムの通訳青木走野氏。この章で書かれる彼が周囲のサポートを受けながら素人の状態から牛の世話をした話が興味深かった。流石に高知球団が牛を恒常的に飼っているということでなく、一度農業高校が売った牛を買って、その牛が肉となるまで育てたということのようだ。
 『野球選手が、自分たちで米を作り、野菜を作り、牛を育てる。
 高知の特色をアピールするのはもちろんだが、地域密着の球団経営というプロスポーツの理想形を、新たな取り組みを通して実践していく。牛はそのシンボル的存在として、インパクトは十分だった。』(N887)
 「第4章 農業事業部」農業生産法人で働いていた佐野氏が農業事業部長として、高知球団で農業を専門にして仕事をしている。球団が農業専門の人を雇っているというのは他にはない特色で面白い。
 「第6章 最貧国からの挑戦者」青年海外協力隊で野球隊員としてブルキナファソに行き、後に高知球団職員となった安河内氏と、ブルキナファソ出身で高知球団に入団したラシィナ選手の話。