生物から見た世界

生物から見た世界 (岩波文庫)

生物から見た世界 (岩波文庫)

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内容(「BOOK」データベースより)
甲虫の羽音とチョウの舞う、花咲く野原へ出かけよう。生物たちが独自の知覚と行動でつくりだす“環世界”の多様さ。この本は動物の感覚から知覚へ、行動への作用を探り、生き物の世界像を知る旅にいざなう。行動は刺激に対する物理反応ではなく、環世界あってのものだと唱えた最初の人ユクスキュルの、今なお新鮮な科学の古典。

生物学の本を読んだのはこれがはじめてだったが、この本は、とてもわかりやすく、スラスラと読むことができた。面白かった。

環世界を観察する際、われわれは目的という幻想を捨てることがなにより大切である。それは、設計という観点から動物の生命現象を整理することによってのみ可能である。高等哺乳類のある種の行動は目的にかなった行動であることがいずれ実証されるかもしれないが、目的にかなった行動自体がやはり全体として自然設計に組みこまれているのである。(79p)

コクマルカラスの環世界では、あらゆる生物すなわち動く物体がコクマルガラスコクマルガラスでないものとに分かれており、しかも各個体の経験しだいでその環境が異なっている(原始人でも似たことがないではない)と想像すれば、今述べたような、ひじょうに奇妙な誤りが起こることも理解できよう。そのとき相手がコクマルガラスであるかそうでないかということについて、決定的役割を果たすのは知覚像だけではなく、自分の立場での作用像もまた重要なのである。どの知覚像がそのときの仲間のトーンを持っているのかを決めるのは、この作用像だけなのである。(123p)