シュルツ全小説

シュルツ全小説 (平凡社ライブラリー)

シュルツ全小説 (平凡社ライブラリー)

出版社 / 著者からの内容紹介
20世紀の悲劇を背負ったヨーロッパ辺境が生んだ一抹の光。クエイ兄弟の映画でカルト的人気を誇る独自の作品世界への扉が開かれる。元本は読売文学賞受賞。解説=田中純

内容(「BOOK」データベースより)
シュルツの生涯は二十世紀に翻弄されつづけた。ナチスの銃弾に斃れるその最期まで、彼が遺した小説は多くない。自身「現実の神話化」と呼んだ作品群は、特異かつグロテスク、ときに荒唐無稽に近い。だが、そこに真実がないと言えるだろうか。『肉桂色の店』『砂時計サナトリウム』の両短篇集から洩れた四篇を加えた全三十二作品を収録。元本は第五十回読売文学賞受賞。


読み始めてから途中で中断を含みながら8ヶ月くらいで読了。はじめのほうの作品はおぼろげにしか覚えていない。理解できていない短編も結構ある。
「砂時計サナトリウム」は面白かった。

われわれが、いつか読んだことのあるすべて、耳にしたすべての物語、そして耳にしたことはないのに幼年時代から漠として夢見たことのあるすべて、それらはここに、ほかならぬこの場所に自分の家を、祖国を持つ。作家達はここから着想を得、ここから創造への勇気を汲み取ることができるはずだ、もしも彼らが自分の背後に、地下界の振動の根源であるあれらの在庫、資本、百回もの計算を感じないとすれば。(210p)

一番身近な身内に対して本人はどのように振まったか?彼は陽気さと豪放さを装い、上機嫌に笑いながら、道化と皇帝をかねた喜劇を演じていたのである。(239p)

われわれはひとり残らず天性の夢想家であり、牙を徴とする種族の兄弟、天性の建築家ではないかと…(427p)